実家に戻るのをビビりました
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神のおもてなし (上)
ルカ15章20節
(序)
今日も子どもたちへのいいメッセージを頂きました。本当にそうですね。「受けるよりは、与える方が幸いだ。」目がいよいよ不自由になる中、小学校に行ってお話したりして子どもたちに何かを伝えようとしておられる姿に教えられました。
皆さん、目が不自由だという事がどんな事か、今日もパソコンを開いて画面に週報を出して司式して下さっていますが、パソコンが声に出して読んでくれるのを聞いて司式されるのです。目が見えると飛ばさずに読めます。また、飛ばして読みたい所から読むのも簡単です。でも耳でいちいち聞きますから、上から順番に言ってくれるのを待たなければなりません。
こういう不便さを抱えて日常は仕事をしておられる訳で、せっかちで待てない私などは、到底目が不自由になどなれません。気が長くなければ生きていけないでしょう。そういう事を考えながら、「受けるよりは、与える方が幸いだ」と語られた事を、今日は聞かせていただきました。
(1)
さて、イエス様は放蕩息子の譬えを語られました。そのストーリーを振り返りますと、2人兄弟の弟が、父親から「頂くことになっている」財産の分け前を欲しいと願い出たのです。厚かましいですね。「頂くことになっている」とは、まるで当然であるかのような口ぶりです。感謝など不要であるかのような態度です。ここにもう放蕩の芽が潜んでいると思います。世に行われる遺産相続がそういう感謝のないものでいいのかと思います。墓場で親は泣きますよ……。
すると父親は兄と弟を呼び、財産を2人に分けたのです。単純に2分したのか、6対4で分けたのか、7対3で分けたのか分かりません。譬えは細部まで語られていませんが、弟は、家や土地、家具類、農場や農具、何十頭かの羊、山羊、牛など、そして放牧の権利がある野山、また僕たちを受け取ったでしょう。だが何日もしないうちに一切を現金化して、それを持って遠くの外国に出かけたというのです。父は大きな農園主で、この地の有力者です。何千万円いや何億円かを持って、遠くの国とありますが、ギリシャのにぎやかな町かローマに行ってしまい、音信不通になったという設定です。
弟はそれで手広く商売でもするかと思っていたら、仕事を始める前に少しぐらい楽しく遊ぼうと考えたのか、とかく田舎から大都市に出て来ると町の灯が怪しくチラチラして心を惹きつけるものです。私などもやっぱりそうでした。彼は遊び仲間を作り、女たち、いやここでは娼婦たちです。彼らを侍らせ、放蕩の限りを尽くして父親の身上をすっかり食いつぶしたというのです。
こういう男性も昔はいたんですかね。今もいるんですかね。
慌(あわ)てて働こうとしますが、運悪くちょうど大飢饉が起こり、食べることにも窮した。
そこで、ある知人のところに身を寄せたが、その人は彼を畑にやって豚の世話をさせたのです。お金を湯水のように使う彼の所に集まっていた遊び仲間の一人かも知れません。だがこの知人は、根は堅実だったのでしょう。豚の世話をさせてくれたので雨露は凌げたが、昔の遊び仲間でも生活費まで持ってくれません。豚の餌であるいなご豆で腹を満たしたいと思うほどでしたが、「食べ物をくれる人は誰もいなかった」のです。いなご豆というのは酷い悪臭があります。到底食用になりません。
やがて彼は我に返って、「父の農場では、あんなに大勢の雇い人に、有り余るほどパンがあるのに、私はここで飢え死にしそうだ。ここをたち、父のところに行って願おう」と思いました。先ほど申しましたように、父親は大地主で、その地域の有力者だったのでしょう。
ただ彼は、実家に戻ることに何度も躊躇したでしょう。当然、厳しく叱られます。父は兄と一緒に、自分を追い払うかも知れません。あれこれ考えると決心は鈍ります。だが空腹には勝てません。やはり帰ろうと思いますが、実行に移す段になるとビビる訳です。あれだけの大金を持って家を出たのです。一文無しで帰れば、親戚中、いや町中の嘲けりの的です。自分だけでなく父も母も笑い者になるでしょう。そう考えるとまた決心が鈍ります。
しかしとうとう、勘当されてもいいと固く腹を決めて、「お父さん、私は天に対しても、お父さんに対しても罪を犯しました。もう息子と呼ばれる資格はありません。雇い人の一人にして下さい」と頼み込もうと、もと来た道をたどったのです。むろん途中でも心はグラついたでしょうが、思い切って帰って行った。
(つづく)
2019年1月27日
板橋大山教会 上垣勝
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