目が開かれた「もてなし」


                       フォークスヘッド村の小さな喫茶店        右端クリックで拡大
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                                                私の内で生きるキリスト (下)
                                                ガラテヤ2章17-21節



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  話は飛びますが、年末から元旦に掛けて、スペインのマドリードでテゼ共同体が主催する「ヨーロッパ大会」。35才までの数万人の青年の5日間の大集会が開かれました。日本や中国からも参加する人がありました。テゼはプロテスタントの牧師が戦中に始めた共同体で、今はプロテスタントだけでなくカトリックも加わっています。

  今年のテーマは、「気前良さ」、「心の籠ったもてなし」ということが中心でした。この大会は毎年ヨーロッパ各地で開かれ、数万の青年が世界から来ますが、教会や多数の家庭、独り住まいの方などが宿を提供して、たとえベッドがなくても寝袋持参ですから廊下でも泊まれますから、気前よく心と家の扉を開くのです。お金儲けのためのもてなしではありません。オリンピックに観光客に沢山来てもらって儲けたい下心で、日本は世界で稀なもてなしの国だと宣伝していますが、衣の下の鎧(よろい)が見えます。JOC会長の誘致汚職疑惑もエコノミック・アニマルの国では当然です。今回の集会は、若者世代が人類のために、競争ではなく協力によって未来を準備できるとの力強い証になったと言われています。

  テゼのブラザー・アロイスさんはこんなことを話しました。少し長い引用ですが、「心の籠ったもてなしは、互いの相違やキリスト教徒の間に存在する分裂を超え、諸宗教を超え、信仰者と無信仰者の間、政治的見解も越えて私たちを親密にします。心の籠ったもてなしが分裂を消し去るわけでないが、分裂に別の光を当てて見るようにし、互いに耳を傾け合って対話することができるようにします。

  心の籠ったもてなしは、あらゆる人間の根本的な価値です。私たちは誰でも、壊れやすい小さな赤ちゃんとして生まれました。生きるために誰しも歓迎されなければならなかったのです。この基本的経験は最期の息を引き取る時まで続きます。

  心の籠ったもてなしをする動機は、私たちの命が、与えられた贈り物だという信仰にあります。この確信は信仰によって育ちます。聖書の最初のページの、素晴らしい詩的な、神秘的という方が適切かもしれない物語は、存在するものはすべて贈り物だということを私たちに理解させようとしています。大空と大地、大海、闇、光――すべてのものは神から来たものです。そして存在するすべてのものの中に、神はその息、神の霊によって存在します。

  私の命は、与えられた贈り物です。他の人々もまた、程度の差こそあれ、私に与えられた贈り物です。私の存在自身、他の人との関係を通して成り立っています。むろん、他者はいつも私とは異質な存在で、私は他者のすべてを理解しませんし、私は他者とあらゆることを分かち合えないということも疑いありません。

  互いに歓迎し合うことは、私たちが、自分も他者も持つ限界を受け入れ合うことを前提しています。他者を歓迎することは、互いに賢明さをもって手と手を取り合っていくことです。しかし、他者への恐れに負けて私たち自身を閉ざす口実にしては決していけません。…」

  パウロは、キリストを信じることによって神に義とされる。ここに人類の新しい連帯の可能性があると説いたのです。これが人類の新しい一歩、新しい夜明けになったのです。

  もしキリストが来られず、民族や身分や地位を超えた和解という考えが世界に入って来なかったら、今も民族間や部族間の争いはもっともっと絶えないでしょう。それだけでなく、憎しみ、争い、疑り、悪意。妬み、嫉(そね)み、殺意、不和、欺き、邪念。冷笑、そしり、侮り、高慢、不誠実、無情、無慈悲。ありとあらゆる悪と罪がまるでパンドラの箱から世に放たれたままであったに違いありません。

  私たちは、キリストにおいて新しい時代に生きていることを、もっともっと理解したいと思います。



       (完)


                                                2019年1月20日



                                                板橋大山教会  上垣勝





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