濁った魂も真実を求める


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                                                 岩盤の上に建てる (中)
                                                 ルカ6章47‐48節



                                (2)
  一方イエスは、「地面を深く掘り下げ、岩の上に土台を置いて家を建てた人」をご覧になると、喜びの声を上げられるに違いありません。その人たちは、イエスのみ言葉は確かで信頼できること、祝福を伴っている事を信じて、喜びをもって行なったからです。そういう私たちの姿を見て、イエスは喜ばれるのです。

  ああ、よかった。この人たちは助かった。悪しき誘惑から救い出される。み言葉に忠実であったから、洪水に持ちこたえ、難を逃れることができると喜ばれるのです。

  多くの芸術家が絵に描き、彫刻にしている、マグダラのマリアのことを私は思います。彼女は罪に罪を重ねた女性でした。多くの男たちをたぶらかしたに違いありません。若い時は無論魅力に富む上に、誰もが惹きつけられる個性があって、チヤホヤされましたが、今はもう誰からも見向きをされない年になろうとしています。彼女の悩みは、若さを良いことに砂の上に人生を築いて来たことです。その愚かさが恥ずかしい。

  だが手痛い失敗を幾度か経験しましたが、イエスから罪を赦されて本当の愛を知りました。その経験の中で、これからはイエスの勧めに従って、遅まきながらみ言葉に生き始めたのです。するとそれがこれまでで一番安心できる生き方であり、そこに確かな岩の上に人生を築く日々があったのです。砂の上に家を建てる人であったが、今や岩の上に建てる人に変わったのです。回心とはこのことです。

  イエスの言葉に従ったのは、先ほども申しましたが、手痛い失敗を繰り返してどうしようもなくなり、最後にイエスの勧めに聞き従ったのです。今や、彼女はイエスの言葉に人生を掛けたのです。それは地面を深く掘り下げ、深く、深く、幾度も掘って、堅い岩盤の上に届かせて、その上に自分を築くあり方でした。

  途中で、そこまで掘らなくてもいいよ。そんなことをしなくてもいいよと、笑う人がいたかも知れません。余りの変わりように、いつかマリアの化けの皮が剥がれるぞと、嘲笑の目で見る人もいたでしょう。しかしイエスの言葉を真実として、右にも左にも逸れずに掘り続けて岩に到達したのです。

  自分を反省し、イエスの言葉に導かれて深く掘り下げる事。即ちイエスに向かって方向転換することを回心と言い、悔い改めとも言います。この世から、神の方に心を向け変えたのです。

  人生は短いです。誰も、失敗を2度と繰り返したくありません。悔い改めて神の前に出る人は、あいまいな態度をやめて、堅かなものの上に人生を建てようとするでしょう。もはや中途半端なことでは満足しないのです。

  旧約聖書は人間の罪の姿を色々な方面から明らかにしています。預言者エレミヤは、「人の心は何にもまして、とらえ難く病んでいる。誰がそれを知りえようか」と語りました。作家のドストエフスキーは、そうした救い難い人間の姿を数々の小説で明らかにしました。人間の内面をあれ程深く掘り下げた人はいないのではないのでしょうか。少なくとも、彼以前にはいなかったでしょう。きれいに見える人でも、どれほど魂は病んでいるか。汚れているか。しかも濁っていても、人の魂は本当のもの、真実なものを、いかに切に求めているかを明らかにしたと思います。だから彼の小説は偉大なのです。人はいくら堕落しても神の似姿が刻み付けられているからに違いありません。

  その魂を深く掘り進んで、すべての罪とウミを出して、堅固な土台の上に据えなければならない。しかし罪もウミも出し切れる人などいません。キリストにおいて、誰でも一切の罪は赦されて、迎え入れられ、再出発できる。罪の贖いです。そんな願いを、ドストエフスキーは持っていたと思います。

  イエスは私たちをそういう所へと導かれるのです。


       (つづく)

                                                  2018年11月25日


                                            板橋大山教会  上垣勝



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