何を受け継ぎますか



          ボウヌスの小さな宿。入ると美味なシェリー酒で歓迎されました。   右端クリックで拡大
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                                       何を受け継ぎますか (4)
                                       Ⅰコリント15章1-11節



                               (4)
  復活のイエスの顕現は、色々な人に起ったが、私のような月足らずで生まれたような者にも起ったのですと、パウロは語りました。元の言葉は未熟児、早産の子を指します。あるいは異常なアブノーマルな状態で生まれた者を指しますが、そのような尋常でない生まれ方をした者の上にも復活のイエスは顕現して下さった事です。

  ただこれは、過去の自分の考えや思想的な未熟さや異常さをも指そうとしているかも知れません。その未熟さが教会の迫害になってしまったからです。

  自分は教会を迫害した者。教会はキリストの体を指しますからキリストご自身を迫害した者であり、何度も何度も自分はイエスを十字架に磔(はりつけ)にしたも同様の者であって、使徒と呼ばれる値打ちが全くない最も小さな者。大罪を犯した、人間的にも信仰的にも最低の者である。それにも拘わらず、キリストは敢えて私を選んで下さった。これは、ただ一方的な神の恵みによります。実に今の私があるのは、ただ神の憐れみによるのです。それ以外に考えようがありませんと語るのです。

  彼の証しはさらに続きます。「神の恵みによって今日のわたしがあるのです。そして、わたしに与えられた神の恵みは無駄にならず、わたしは他のすべての使徒よりずっと多く働きました。しかし、働いたのは、実はわたしではなく、わたしと共にある神の恵みなのです。」

  私に顕現して下さった復活のキリスト。そのキリストによって頂いた神の恵みは、無駄になりませんでした。私の中で復活のキリストが働いて下さったからです。そのために私は他の使徒たちよりもずっと多く働けたのですが、この働きは私の働きというより、私と共に神の恵みがあって神が働いて下さったからです。ただ神の恵みのみ。彼はこう証ししたのです。

  パウロは当時の教会の中で恥ずかしいほど誰よりも小さい者でした。キリスト教徒を捕まえては裁判にかけ、時には石打の刑で殺したのです。キリストの迫害者であり、神に対して大罪を犯して来た。しかしその彼の上にキリストの光が射したのです。神の恵みが自分のような者と共にあったのです。

  「信仰を持つものは、常に前を見る」とある神学者が語っています。神の光が届いているのを知る時、前を見ることができるのです。彼は復活のイエスとの出会いによって、自分のまっ黒けの闇を知りました。ボロボロの姿を知りました。キリスト教徒を次々捕え、ダマスコ途上まで追跡していた彼が、復活のイエスに出会って暫らく目が見えなくなったのは、自分のまっ黒けの姿を知る象徴的な事件であったかも知れません。それにも拘らず、闇の中に、神の恵みの光がキリストを通して輝いているのを知って、恵みに打ち震えたのです。

  パウロはここで、神の恵みは旧約聖書以来、ずっと歴史の中で一貫していると語ろうとしているのでしょう。しかもその恵みは自分と無関係などこか他で起こる恵みでなく、この私たちにおいて起る恵みであり、すべての人に起る恵みであって、復活のイエスは私たち全人類に顕現して出会って下さるという事です。

  こう考えると、パウロという人物は、言わば、畑の中に高価な真珠1個を発見した人だと言っていいでしょう。パウロという、キリストに反対して迫害した、そんな大罪を犯した極悪人、そんな悪しき畑に、高価な真珠が隠されているとは誰が思ったでしょう。本人自身も思いませんでした。しかし彼は復活のキリストに出会って高価な真珠を発見したのです。それで持ち物を売り払い、その畑を、キリストを信じる道を買ったのです。そして知ったのは、「神の恵みは無駄にならない」こと。長い年月を重ねて分かるのは、決して無駄にならない事でした。それが、自分において起った恵みは、「実はわたしではなく、わたしと共にある神の恵みなのです」という事です。

  私たちの信仰生活はこういう恵みの発見の生涯でありたいと思います。私において起った恵みは、実は私でなく、私と共にある神の恵みなのです。ここに非常に深い恵み理解があります。単なる謙遜ではない、神と現実に出会って知った恵み理解です。

  パウロが今日の所でぜひ分かってもらいたいと思うのは、もしあなた方も、私が告げ知らせた福音をしっかり覚えて生きるなら、それはあなた方の恵みになり、力になり、救いとなって働き、あなた方の信仰は決して無駄になることはないという事です。

  この信仰を継承して下さいと彼は言うのです。物や金や財産でなく、もっと大切なものを人類の歴史から受け継いで下さいと語るのです。


     (完)


                                          2018年10月14日



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