魂の静かなる沸騰


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                                         愛を追い求めよう (上)
                                         Ⅰコリント14章1-5節



                               (1)
  「愛の賛歌」と呼ばれるコリント前書13章が、先週で終わりました。皆さんはどれだけ自分にはもっと愛の心が必要だと、愛を増し加えて下さいと切実に思われたでしょう。「愛がなければ、何の益もない」とありましたが、これが自分の切実な問題になる事。それが、パウロが13章でコリント教会に願った事です。

  今日の14章は新しいテーマに入って行きます。しかしパウロは新しいテーマに入るに当って、もう一度、「愛を追い求めなさい」と語るのです。愛の問題は13章で語り終わったから、もう愛はさようなら、終わりというものではないからです。

  まさか先週、本庶 佑(ほんじょ たすく)さんという方が医学・生理学のノーベル賞に輝くとは知らず、この個所を選んでいましたが、報道では本庶さんの研究の原動力は好奇心だったと言います。納得するまで諦めず追い求める。1年、2年で結論が出なくても、10年、20年して結果が出る場合がある。それほど辛抱強く追い求めたのが本庶さんだと書かれていました。

  パウロの場合は科学研究ではありませんが、「愛を追い求めなさい。霊的な賜物、特に預言するための賜物を熱心に求めなさい」と書きました。熱心に求めるという元のギリシャ語は、熱烈に、沸騰せんばかりに求めるという意味です。

  生ぬるいものでなく、熱い愛を持ってほしいとパウロは語るのです。私たちはノーベル賞とは無関係ですが、愛においてまた神の御心の求めにおいて、沸騰するような求め方をしたいと願わずにおられません。

  他府県ですが、長く年賀状を交換しているある牧師の教会で、先年97才で召された婦人があったそうです。女性ですが、昔、仕事でイタリアに行き、ミケランジェロの「ロンダニーニのピエタ」を見て、心動かされて絵葉書を買って来られ、老人ホームに入ってからは狭い一室にそれを飾っておられたそうです。

  ミケランジェロは生涯で4つのピエタ像を制作していますが、「ロンダニーニのピエタ」は、有名な「サン・ピエトロのピエタ」や「フィレンツェピエタ」と違って、ミケランジェロが亡くなる前日まで鑿(のみ)を奮って彫り続けたもので、精緻な技巧はどこにもありません。腰が曲がって頭を上げることすらままならず、既に目が見えなくなっているのに手探りで彫っていたのです。

  普通のピエタは、悲しむ母マリアが十字架から降ろされるイエスを抱きかかえていますが、これはイエスがマリアをおんぶしているように見えます。ミケランジェロは、自分の89年の人生はイエスに負われた生涯であった事をこの彫刻で証ししようとしたのだろうと言うのです。

  この婦人はお体が徐々に弱って行く中で、この絵葉書からいつも慰めを得、ご自分もイエスに負われて御国に導かれたいと願っておられたそうです。

  年老いてお体は弱ってベッドに横たわっても、なお魂は静かに沸騰するかのように神を求める信仰者の姿がそこにあったと思います。魂の静かなる沸騰。「追い求めなさい。熱心に求めなさい」とは、そのように魂がキリストを切に求める事です。そういう求め方を私たちもしたいと思います。

        (つづく)


                                       2018年10月7日


                                       板橋大山教会  上垣勝



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