愛はしぼむ…
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最高のもの （上）
Ⅰコリント１３章８－１３節
（序）
人生と生活の足場をしっかり築こうとすれば、神の愛の上に築くことをお勧めしたいと思います。本当に確かなものがあるとすれば愛です。いつまでも続く永遠不滅なものは愛だからです。
ただ人の愛は移ろい易く、やがて薄れたり、萎（しぼ）んだり、歪んだり、ややこしくなったり。時には憎しみに変わって愛憎無限。傷ついたり、傷つけたり、満身創痍になったりします。
一時は情熱的に、互いに自分たちの愛は決して滅びない、変わらないと誓う事があるかも知れません。しかし人間に根差している限りそれは薄れ、萎み、頼りなくなり、変化します。
神の愛は萎まず、いつまでも変わることがありません。大陸すら地殻が徐々に移動し、山頂が海底に沈んだり、エベレストの山頂近くに沢山の貝殻があって、太古の海底が隆起して今では山頂近くに押し上げられている訳ですから、人の愛も不滅ではありません。だが神の愛は滅びません。永遠に消えることはありません。ここに最高のものがあります。
（１）
パウロはコリント前書１３章１節から神の愛、キリストの愛について語って来ましたが、今８節で、「愛は決して滅びない。」アガペー、神の愛は決して変わらない。落ちぶれたり、凋落したり、終わりになったりしないと証しするのです。
それに比べ、「預言は廃れ、異言はやみ、知識は廃れよう、わたしたちの知識は一部分、預言も一部分だから。完全なものが来たときには、部分的なものは廃れよう」と語ります。
知識や預言は不要というのではありません。だが預言すら一時的なものです。賞味期限が切れ無効になります。異言などは無論、永続しません。やがて静まり、黙り込み、停止します。
知識もまたそうです。今、最先端の知識も明日は古くなって通用しなくなるでしょう。牧師館に100枚近くレコード盤があります。昔は希少価値があり、値が張って高く高級だったものもあります。それを時々かけていますが、やっぱりCDの方が音質がいいです。あれほど良かったものが今は何とも時代遅れです。
私たちが知る知識も預言も一部分に過ぎません。誰が真理全体を知っているでしょう。科学者が本物であればある程、真理の前に謙虚であるのは、事柄の究め難い膨大さに圧倒されているからで、そのような科学者こそ、神秘の中に分け入って真理を一段と深く究めることが出来るのではないでしょうか。科学者で態度が大きく横柄な人もいますが、その性格と業績の関係はどうなのでしょう。
「完全なものが来たときには、部分的なものは廃れよう。」明るい太陽のもとでは、明るい街灯も光を失います。群盲象を評すとか、群盲象を撫ぜると言いますが、真理の断片は、真理全体に比べれば比較になりません。真理全体が来れば断片の知識は当然捨てられるでしょう。
更にパウロはこう語ります。「幼子だったとき、わたしは幼子のように話し、幼子のように思い、幼子のように考えていた。成人した今、幼子のことを棄てた。」
幼子は自由な発想をします。天真爛漫で、大人が思いつかない着想を持ち、それに夢中になります。
幼子ではありませんが、昔、信濃町教会にいた頃、中学生に驚いたことがあります。４０年も前です。夏に教会学校の中高生の引率で恵泉女学園の清里の寮に泊りました。朝食前に食堂の前で待っていましたら、、数人の女子中学生たちもたむろしていて、朝日が射して庭にキラキラ照っているのを見ながら、「そら、妖精たちが来て踊っているわ。見て、あそこにも、あそこにも。小さな天使たち。あそこでおしゃべりしている。まあ、ステキな朝の庭だこと。東京では絶対ないわ。」こんな会話でした。
私は目を凝らして見ましたが、普通の朝の光が見えるだけで、妖精なんて何も見えないのです。私は一瞬そのフレッシュな少女たちの会話に驚き、メルヘンの世界に迷い込んだのかと錯覚しました。また彼らの感性の柔らかさと、自分の感受性の鈍さに劣等感のようなものを感じました。
ただ、その時の中学生は今、もう５０半ばでしょうが、未だ「妖精たちが」とか、「小さな天使たちが」とか言っていたら、恐らく頭がおかしいに違いありません。彼らもやはり、今は幼さを卒業していることでしょう。
（つづく）
２０１８年９月３０日
板橋大山教会 上垣勝
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