塩味は火でつける


                     劇場前の聡明そうな女子高生たち。        右端クリックで拡大
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                                         火で味付けしなさい (下)
                                         マルコ9章42‐50節


                               (3)
  ところが、一転、次の43節からは、当のキリスト者自身への警告になります。「もし片方の手があなたをつまずかせるなら、切り捨ててしまいなさい。両手がそろったまま地獄の消えない火の中に落ちるよりは、片手になっても命にあずかる方がよい。(地獄では蛆〈ウジ〉が尽きることも、火が消えることもない。)もし片方の足があなたをつまずかせるなら、切り捨ててしまいなさい。両足がそろったままで地獄に投げ込まれるよりは、片足になっても命にあずかる方がよい。(地獄では蛆が尽きることも、火が消えることもない。)もしもし片方の目があなたをつまずかせるなら、えぐり出しなさい。両方の目がそろったまま地獄に投げ込まれるよりは、一つの目になっても神の国に入る方がよい。地獄では蛆が尽きることも、火が消えることもない。」今、十字印がある、省略されている言葉も補って読みました。

  42節は躓かせる者への警告でした。しかし43節以下は、キリストにある者自身への警告です。警告ですが、42節で明らかなように愛するゆえの警告です。ここまで小さな者(あなた)が愛され、顧みられているのだから、目の前の欲に引かれず自分を大事にしなさい。命に入れられるように歩みなさいと、繰り返し語られるのです。

  即ち、あなた自身の片手、片足、片目が、あなたを躓かせるのなら、それを切って捨てよ。――本当に切り捨てちゃあいけませんよ。むろん、そんな方はないでしょうが。ただ長い歴史の中ではそういう人たちがいました。鋸(のこぎり)で引かれた人もいました。――キリストから離れさせるもの、背かせるそれらを捨て、手一本、足一本、片目、多少不自由になっても、神の国に入れられる方が、両方が揃って蛆(うじ)が尽きず火が消えることのない地獄に落ちるよりも、遥かによい。命に入るのを妨げるものは、たとえ不自由になっても潔く捨て、神の救いに入れられるようにと勧めるのです。一貫して私たちへの神の愛がテーマです。

  キリストから離れさせる誘惑は、人が原因の場合もありますが、自分が原因である場合の方が多いのではないでしょうか。イエスは、「先ず自分の目から丸太を取り除け」と言われたのではないでしょうか。イエスは、自分自身に警戒するように語って、イエスの弟子として生きる道を示されたのです。

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  そして最後に、「人は皆、火で塩味を付けられる。塩は良いものである。だが、塩に塩気がなくなれば、あなたがたは何によって塩に味を付けるのか。自分自身の内に塩を持ちなさい。そして、互いに平和に過ごしなさい」 と教えられました。

  火は清めの象徴です。イエスの弟子たちは火のような迫害に遭い、実際に火攻めに遭うこともありました。しかし、火、即ち試練は私たちに塩味をもたらすもの。塩味は火でつけられるのです。キリスト者キリスト者として鍛え、清め、引きしめ、腐らぬようにし、新鮮さを保つものであるとの意味があります。この言葉は迫害の時代には、迫害と苦難への決意を促したでしょう。

  イエスは山上の説教で、「あなた方は地の塩である」と言われ、「だが、塩が塩味を失ったら、何の役に立つだろうか」と仰(おっしゃ)いました。塩に賞味期限があるかどうか知りませんが、賞味期限切れの食べ物は捨てられたりします。死海から取られた当時の塩はいつの間にか塩味を失いました。賞味期限があったのです。もし塩気を失えば掃き捨てられたのです。

  だからこそ、キリストにある小さな者たちに、彼らへの愛ゆえに、「自分自身の内に塩を持ちなさい」と語られたのです。他の人に塩っ辛い、辛辣な存在になることではありません。自分自身への塩辛さ、厳しさ、慎み。自分を引き締め、新鮮さを保ち、腐らぬように保つ塩です。

  そのような塩を自分の内に持って、「互いに平和に過ごしなさい。」自分への塩、厳しさはその人をフレッシュにするでしょう。だがそれを失くせば、たとえ年令は若くてもフレッシュさはいつの間にか失せて行くでしょう。

  目指す所は、互いに平和に過ごすことです。和解、和らぎ、友情、一致、平和に生きることです。これは素晴らしい教えです。キリストの愛を思いつつ、よくよく用心して生きていきましょう。


       (完)

                                       2018年8月26日



                                       板橋大山教会  上垣勝



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