変革の秘密兵器


              副葬品の額の飾り。3400年前。キプロス出土。       右端クリックで拡大
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                                      変革の秘密兵器 (下)
                                      Ⅰコリント11章23‐29節



                               (3)
  では何故、主のパンを食べ、杯を飲み、キリストの体と血に与る聖餐式がそんなに重要なのか――。この力強い恵みは、信仰を持って受けるときに、私自身が変えられる秘密兵器となり同時に社会を変える秘密兵器となるからです。

  最初にバングラデシュのラルシュの話をしました。彼らはBeyond Service、福祉を越えるものを目標にしていると申しました。それは愛である。善きサマリア人の愛だと申しました。そのような愛は普通の状態でトコロテン式に押し出されて自然に生まれません。イエスの新しい契約に内面深く触れたときに初めて生み出されるものです。それがこの第2の手紙でパウロが語る、「だから、キリストと結ばれる人は誰でも、新しく創造された者なのです。古いものは過ぎ去り、新しいものが生じた」という事です。即ち十字架のキリストのような、私自身が変えられ、社会も変える力強い秘密兵器に触れなければBeyond Serviceは生み出されません。そしてそれが世界にとって決定的に大切なのです。愛こそ社会を新しく創造する力だからで、そのような愛に生きる者に変革するのがこの愛の秘密兵器です。

  今月になり、フランスのテゼ共同体に72か国の数千人の若者が集まり、先々週は、クリスチャン青年とイスラムの青年がテゼの丘に一緒に集まって、違いを持ちながら互いに他を発見し合い、友情の絆が固く結ばれるようにと集いました。その集まりでテゼのアロイス院長は、「私達は自分の信仰に堅く根を下ろす時に、考えの違う異質な人たちと恐れず対話ができ、真実な友情も育むことが出来る」と語っていました。これは非常に大切な普遍的な言葉です。テゼは地上に和解と信頼を作り出そうとしているのです。

  恐怖と暴力が優勢になる今の世界で、対話と友情を作る集会を持つのはまさに質的に新しいと言える、画期的な試みです。テゼ共同体はそういう企画を時代に沿って次々に編み出しています。ヘブライ書に、私達は皆、「この世ではよそ者である」とあり、地上には「永遠の住いはない」とあります。キリスト教からすれば外国人拒否というのはあり得ないと彼は言います。

  そうした中、先週はイタリア人の20代の若い女性がこんなことを話しました。彼女は法学部を出た後、難民の安全と権利を守るために働いていますが、それと共に彼女の家族が協力して定期的に難民を家庭に招いているとのことです。これまでシリア、イエメン、モーリタニアから来た人たちを招き、彼らと交わる中で、テレビで知るのと違う、彼らの国で起こっているナマの出来事、何故母国を離れたのかを身近に知って、一層彼らに寄り添うようになったそうです。交わる中で、彼らが後にした国の豊かな文化を知るようになった事、あらゆるものを失ってしまった人たちは非常に多くのものを教えてくれること、彼らにはスピリチュアルで人間的な力がある事など。自分たちが与えるより、彼らから教えられることの方が多いこと、難民は私達の教師である事。またイエスのみ後に従うなら、文化的、社会的、宗教的壁を越えて異質な彼らとの関係に入っていくことを恐れる必要はありませんと話していました。

  このようなことが出来るのは、私達が聖餐に与って、イエスから神との契約という秘密兵器を与えられるからです。この秘密兵器は私たち一人ひとりを変え、異質な他者への恐れを取り除き、社会を変えていく力があります。からし種は実に小さいように、聖餐なんて極めて小さいからし種のような業で目立たない兵器です。だがこれが私たちから恐れを除き、社会をも変えていく愛の兵器であることを忘れてはなりません。

         (完)

                                         2018年7月22日




                                         板橋大山教会  上垣勝



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