パウロの危機感
キプロスの髭の男（BC500-600）。アシュモレアン博物館で。 右端クリックで拡大。
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神を見くびる （中）
Ⅰコリント１１章１７－２２節
（１）
今日の個所に教会という言葉が２度出て来ます。教会とは何でしょう。それは宗教的な同好会や自主活動団体でしょうか。癒しを求める人の集まりでしょうか。聖書好きの会でしょうか。教会という建物や制度や組織のことでしょうか。献金は会費でしょうか。
基本の事ですが、ギリシャ語で教会はエクレシアと申します。エクレシアは、エク・カレオーという言葉に由来して、キリストによって呼び集められた者らの集まりの意味です。教会の基本はキリストに召された者らの集団であって、人の考えで自発的に集まって何かをする所ではないのです。あくまでもキリストに聴く。ここから教会が生まれ、この方によって世に派遣されて活動し、絶えずこのお方に帰って来る。それがキリスト教会です。
むろん集められたのは人間ですから、人間が運営しますが、その運営はキリストに聞きつつ運営するのです。ですから聞く耳を持つ人は幸いだとあるように、キリストから離れたキリスト教会はありません。
さて、当時コリント教会は大変な時期を迎えていました。「あなたがたの集まりが、良い結果よりは、むしろ悪い結果を招いている」と言うのですから、彼は大急ぎでこの手紙を出したに違いありません。彼は他の個所で、自分には、「日々私に迫る厄介事、あらゆる教会についての心配事があります」と記していますが、コリント教会の問題は心痛の種になった訳です。
彼は、「まず第一に、あなたがたが教会で集まる際、お互いの間に仲間割れがあると聞いています」と言います。仲間割れとは端的に言って分裂です。分裂は考えの相違だけでなく、当時最も大事にされた「主の晩餐」と呼ばれる食事においてさえ起っていたのです。その痛々しい事態を、彼は誰かから聞いたようです。
それで彼は、「わたしもある程度そういうことがあろうかと思います」と一旦語ります。ただこれは、分裂を肯定して、分裂は教会でも起る部分的に真理性がある現象だという意味ではありません。そうじゃなくて、自分が聞いた報告はある程度当っていると思うと言う事です。その報告は事実であり、信憑性が高いと言うのです。
ただ彼は、「 あなたがたの間で、だれが適格者かはっきりするためには、仲間争いも避けられないかもしれません」と述べて、議論が必要になる場合があると言っています。誰が信頼できる人物か、本物が明らかにされるために、議論を必要とする場合です。その議論によって正しい事は何かが分かれば、議論も意味はあろうという事です。
しかし対立が顕著になり、単に意見の対立でなく感情の対立に発展し、口も利かない、目も合わせない。神の家族と呼ぶ教会でキリストにある筈の兄弟姉妹を分断していがみ合っている。それは、キリストに呼び集められた集団だろうかと問うのです。教会の中心にキリストがおられるのかと問い質（ただ）すのです。
「それでは、一緒に集まっても、主の晩餐を食べることにならないのです」と語られているのがその事です。今や、一致を指し示す主の晩餐も一緒にできない所まで堕落してしまっているという事です。
主の晩餐は「ローズ・サパー」と申します。聖餐式のことです。仲間争いで感情的にさえなっている。それでは、主の晩餐、ローズ・サパーに折角与っても、主を中心とした聖餐、主の恵みに与る聖餐にならず、主を蔑（ないがし）ろにした聖餐になってしまう。パンとブドウ酒を頂いても、キリストを味わい、恵みのキリストを食すことにならない。折角主を中心に集ったのに、人間同士が前面に出て争っていては、主の晩餐ではないと語るのです。
主の体は一つだから、私たちは一つにされた。それにも拘わらず、主の体を頂きながら分裂していてはどうなるのか。主の晩餐の趣旨が取り違えられている。パウロは教会の本質が歪められている事に危機感を抱いたのです。
（つづく）
２０１８年７月１日
板橋大山教会 上垣勝
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