祈りの歌集


           Georges Michel (1763 – 1843)。アシュモレアン博物館で。     右端クリックで拡大。
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                                            レバノン杉のように (2)
                                            詩編92篇1-16節


                               (1)
  さて、今日は久しぶりに詩編からお聞きましょう。詩編をご覧下さると、詩編は祈りですが、祈りには多くのタイプがある事が分かります。讃美があり、感謝があります。訴えがあり、嘆きがあり、苦悩もあります。悪との闘い、神の正義を求める祈りがあり、罪を悔いる懺悔があります。明るい、透明感あふれるものがあり、重苦しく、苦渋に満ちた祈りもあります。

  日本ならさしずめ古今和歌集とか新古今和歌集など歌集がありますが、詩編は数百年に渡る色々な人の祈りの詩の歌集です。

  そうした中で、92編の信仰者は、「いかに楽しいことでしょう。主に感謝をささげることは」と語り、神の偉大さに感謝します。その素晴らしさに魅せられ、心を高く上げて、主なる神に感謝を捧げる事は何と楽しく素晴らしい事かと歌います。

  彼の心が晴々し輝いているのが分かります。澄み切ってどこにも鬱陶しいものがない詩編です。しかし、ここまで澄んだ喜びに触れると、ヘドが出ると言う人もあるでしょう。私の若い頃、信仰に入って間もない頃がそうでした。偽善を嗅ぎ取ったのです。そうでないのに、今思えば先入観です。恥ずかしい話でした。

  人は長い年月を経、色々な曲折を経て、み言葉によって随分変えられるものです。こんな愚かな者もキリストは赦し、慈しみを持って働いて下さったのです。50年以上信仰の長い年月を歩んで来て思います。

  いずれにせよ、へどが出そうな人が居ても、この詩編の価値は少しも減じません。この間、転会なさったAさんがインタビューでお話になったように、また召されたBさんが証ししておられた事ともつながりますが、主と本当に出会わせて頂くなら、恐れが消されるのです。弱まるのです。むしろ感謝と喜びが生まれます。この信仰者は、自分を越える方に出会っていたのでしょう。

  「主に感謝をささげる」とあります。主とはヤーウェのこと、唯ひとりのまことの神です。意味は在って在る者。私は在る、存在すると言う方。誰が否定しても存在する方です。また私たちを在らそうとして在らしめる者。巌のように断固在りつつ、私たち被造物を在らしめ、私たちの根底におられて命の源となる方です。私たちはそういう方を礼拝しています。

  この信仰者は、そういうヤーウェ、主に、感謝を捧げるのを最高の喜びにして、朝毎、夜毎、御名をほめ歌い、主のまことを述べ伝えています。

  「あなたは慈しみ」「あなたはまこと」とあるのは、主の変わらぬ愛、不変の永続する愛と、主の真実、信義、確実さです。それを朝毎、夜毎に述べ伝えると語ります。彼は喜びを抱いて朝に夕に礼拝していたのでしょう。何十年続けて来たか書かれていませんが、数年の短期間でなく、何十年、もしかしたら半世紀以上に渡って捧げて来たのかも知れません。それを伸び伸びと明るく歌っています。

  「いと高き神よ」と呼んでいます。自分を越え、万物を越え、高きにいます大いなる神への呼び掛けです。

  「御名をほめ歌い、…十弦の琴に合わせ、竪琴に合わせ、琴の調べに合わせて」と語るのは、彼は神にほめ歌を歌うミュージシャン、歌手かも知れません。十弦の琴、竪琴、琴など、管弦楽何重奏かの調べに合わせて、神に音楽の捧げものを捧げたのでしょうか。素晴らしい日常です。

  礼拝で、讃美や祈りや説教がなされます。オルガンやバイオリンの奏楽は音楽の捧げものです。ヒムプレーヤーの演奏も神への捧げものです。信仰を持ってする奉仕は、捧げ物のニュアンスを皆、持っています。讃美歌は礼拝の景気づけや心を鼓舞するだけのものでなく、本質的に神への捧げものです。

  この信仰者は、「主よ、あなたは、御業を喜び祝わせてくださいます。わたしは御手の業を喜び歌います」と語りますが、讃美の歌は、こうした神を喜び、祝う思いで歌う必要があります。

 説教もむろん神への捧げものです。皆さんに語っていますが、それが説教の全てでなく、たとえ纏まらない説教であっても、力を尽くしてキリストに捧げられるものです。


       (つづく)

                                         2018年6月24日


                                         板橋大山教会  上垣勝



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