用心し過ぎるな


             J.W.インチボールド。アシュモレアン博物館で。          右端クリックで拡大
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                                             望みなき時も (中)
                                             創世記15章1-6節



                              (1)
  そんな中、今日の所で、「主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。『恐れるな、アブラムよ。わたしはあなたの盾である。あなたの受ける報いは非常に大きいであろう。』」 主なる神が臨み、主の言葉が彼を圧倒したのです。「恐れるな。わたしはあなたの盾である。」主なる神は、あなたに対するどんな敵の攻撃も受け留め、敵の力を圧倒して守ると言われたのです。

  神は槍や刀でなく、盾である。攻撃でなく、あなたを守る護身の力だ。見ず知らずの土地で主なる神があなたの祝福となり、最高の武器となる。アブラハムは平和の人、平和主義者であったと言われますが、ここに、彼は攻撃や侵略、暴力の神でなく、盾としての祝福の神が共におられたことが示され、ヤーウェの神は侵略や暴力の神でないと示唆されています。神はアブラハムを擁護し、その身も財産も保護されると約束されたのです。

  「恐れるな」ともありました。カナンでは、彼は様々な恐怖で取り巻かれていました。親しい者がおらず、異質な人間、腹の中が分からない、敵に早変わりする者らに囲まれていました。むろん親族だからと信用していたらコロッとひっくり返って急に背(そむ)かれる場合だってあるのが世の中です。

  しかし神経質になって用心し過ぎてもいけません。蛇のようにさとく、鳩のように素直でなければなりません。手前の14章に、甥のロトが、家族と財産をすっかり略奪された事件が記されています。アブラハムはそれを取り返しますが、彼自身も狼の群れに囲まれた心細い羊のような思いだったのでしょう。

  だが神は、「恐れるな、アブラムよ。わたしはあなたの盾である。あなたの受ける報いは非常に大きいであろう」と言われたのです。

  彼は、この言葉を最初から素直に聞いたのではありません。彼は、「わが神、主よ。私に何を下さるというのですか。私には子供がありません。家を継ぐのはダマスコのエリエゼルです」と神に訴えています。「御覧のとおり、あなたは私に子孫を与えて下さいませんでしたから、家の僕が跡を継ぐことになっています」と詰問さえしています。

  彼は75歳で故郷を出ました。行き先を知らず、神の言葉に従って進んで来たのです。だが今、神に疑問を投げかけ、詰問するようになっていた。ここに彼と私たちの姿がダブル所があるかも知れません。

  報いは大きいと言われますが、何を下さるというのです。私はもう99歳。しかも後継ぎがない。私に何を下さっても無意味です。どっちみちそれも人手に渡ります。神に不満をぶつけました。信仰者であった筈の彼は、喜びが尽き、将来への希望をなくし惰性で生きていたのです。

  神の答えはゆっくりしています。直ぐ聞かれる事もありますが、多くは時間がかかります。

  この間、石神井川の畔をウオーキングして、ある公園の鉄棒を使ったアスレチックでウエストを引き締める運動をしていましたら、面白そうだったのか、お母さんといた3才程の女の子が、私もすると言ってそばで見ているのです。私は百回程その運動をしますから、女の子に直ぐ代わってあげませんでした。すぐ代われますが、どの位待てるかなと思って、そしらぬ顔で代わってあげなかった。意地わる爺さんです。そしたら、大したものです。最後まで辛抱強く待っていましたね。待つ力、忍耐力は素晴らしい能力の一つです。小さい頃から待つという徳を身に付けるのは素晴らしい事です。最近は待てない人が増えました。頭が良くても待てない人とか、器量が良くても待てない人とか。いずれにせよ、神の答えは中々聞けないことがありますが、しびれを切らして途中で投げ出しちゃあいけません。

  当時の習慣では、後継ぎがいないと奴隷の1人が全財産を継いだようです。今なら、公正証書にもう書きましたと言った所でしょう。あなたは約束しておきながら、後継ぎを下さらなかったのでこうしましたと、反発しながら言ったのです。

          (つづく)


                                         2018年6月3日


                                         板橋大山教会  上垣勝



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