歴史の器であるお墓


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                           18年5月墓前礼拝
                                         マタイ25章14-27節
                                         2018年5月13日


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  今日はあいにくの土砂降りになり、傘をさしての墓前礼拝になりました。今、私たちは礼拝をし、この地に新たに3人の方を納骨し、同時に納骨されませんでしたが墓石に永久に名を刻まれた方も覚えています。それぞれ妻や母や祖母である方であり、親しく話し、笑い、涙し、肝胆相照らし合った無二の信仰の友、仲間であった方々です。

  既に当初の悲しみが薄れつつある方、涙の日々をようやく脱した方もあるでしょうし、未だ悲しみが去らず、傍らに居るべき愛する者がいないのに気づいて愕然とする日を過ごしている方々もいらっしゃるでしょう。愛する妻の名のそばに、寄り添うように赤字で名を刻まれた方もあり、お2人を結びつけていた愛の密度を覚えます。

  4人の方は皆、私たちの尊敬する方でした。身近な方の中には、「尊敬」という言葉に違和感を抱く方があるかも知れませんが、少なくとも教会の人たちは皆、この方々の色々な時に語られた言葉や人となり、態度や様々な色合いの個性に出会っていずれの方にも魅力を感じ、神が世界にこの方々を送って下さった事に心から感謝し、尊敬を覚えました。

  むろん人は皆、不完全ですから欠点に目を留めれば色んなキズがあったかも知れません。しかし、それぞれの方は自分の不完全さを自覚していた人でした。ですが、その限界の中で全力を尽くして身近な者を愛し、隣人を愛し、心を尽くして働き、努力して来られたのです。私はこの方々がそういう積極的な魂を持っておられた事を心から誇り、感謝したいと思います。

  先程の聖書に、旅から戻って来た主人が、5タラントン預けたり、2タラントン預けていた者らと清算をして、「忠実な善い僕よ。よくやた。お前は少しのものに忠実であったから…」と語ったという譬えがありました。この主人は神を指しています。またタラントンとは、日本でも、あの人はタレントがあると言ったり、タレントさんと言ったりしますが、タレントの語源がタラントンです。才能や能力と考えて下さってもいいでしょう。ただ、私たちは才能や能力を、自分が手に入れた才能、自分の能力と考えがちですが、本来はそれは神から授かったものだという視点を欠いてはならないものです。

  この方々は全て、人生を最後の行程まで走り尽くし、天のみ国に入れられ、世界の王なる神から、「忠実な善い僕よ。よくやた。お前は少しのものに忠実であったから…」と、文語訳聖書で言えば、「善かつ忠なる僕。よくやった」という言葉で迎えられていると思います。そうです。限界を持ちながらも、力を尽くして神に仕え、人に仕える、「善かつ忠なる僕」でいらっしゃいました。この事を感謝します。

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  今日は40名近くが墓前に集っていますが、初めての方もいらっしゃるので、このお墓の歴史に触れますと、墓標にあるようにこの墓は板橋大山教会と町屋新生伝道所の教会墓地です。共同管理しているのは、板橋大山教会が30年程前に町屋新生伝道所を生み出したからで、元は1つの教会でした。

  私はここに初めて立った時、「実に立派なお墓だ」と思いました。今もその感を抱きます。ただこれだけのお墓を持つからには、有力者の寄付があったのだろうと浅ましくも思いましたが、そうではありません。貧しい母親の精一杯の献金がこの墓を作るきっかけでした。

  教会学校に来ていた小学4年生の母子家庭の女の子が突然亡くなり、教会員だったお母さんが精一杯献げられて墓地を作って欲しいと言われ、それがきっかけで献金を集め、ここに墓地を買いました。今なら土地だけで約370万円します。

  最初は貧弱な木の十字架が建つのみでした。当時、教会の会堂建築があり、墓地の方に手が回らなかったからです。しかしやがて教会の方が終わると、墓地献金を始め、この立派な墓標を建立し、堅固で広い空間を持つ地下納骨室カロートを作りました。

  既に50人程の信仰の先達が眠ります。そのお母さんも今は安らかにここに眠ります。知的財産という言葉に倣えば、この方々は皆、私たちの友であると共に、素晴らしい信仰的財産です。教会墓地というのは、単に召された方を供養する場でなく、私たちの信仰の財産を記念する歴史の器と言っていいでしょう。このような方々を偲んで今年も墓前礼拝が出来たことを心から感謝したいと思います。

  最後に、死は一巻の終わりではありません。死はいっときの眠りです。永眠と申しますが、神の目からずれば永遠もいっときの眠りです。復活の時には、再び私たちは合いまみえるでしょう。私たちはその事を信じ、今は一時の分かれとしてこころ安んじていましょう。

  讃美歌を歌い、献金を行なった後、納骨と墓参をいたします。その後今度は385番「花いろどる春を」を歌いましょう。

           (完)



                                         板橋大山教会  上垣勝



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