魂のふる里


    司教の冠と名乗るレストラン。入り口上方に確かに金色の冠が輝いていました。    右端クリックで拡大
                                ・



                                          旅人である教会 (中)
                                          ヘブライ11章13-16節



                               (2)
  彼らは喜びをもって、「自分たちが地上ではよそ者であり、仮住まいの者であることを公に言い表した。」

  「公に言い表した。」これはホモロゲオーと言う語が使われて、この言葉からやがて信仰告白という重要な言葉が生まれました。公けに信仰を言い表わすというキリスト教の性格を決定づける重要な用語になります。

  彼らは神の約束を仰ぎ見て喜び、「地上ではよそ者であり、仮住まいの者であることを公に信仰告白した」と語っているのです。信仰者の基本的な信仰告白は、私たちは地上ではよそ者である。外国人である。一時的寄留者であるということだと語るのです。

  約3800年前のアブラハム時代は遊牧時代です。モーセ時代も彼らはテント生活でした。9節の「幕屋」はテントの意味です。彼らはテントを張ってしばらくそこに留まり、働きが終わるとテントをたたんで次の所に移動し、更に移動するという旅人生活でした。これが私たち信仰の基本的姿勢だと言うのが、今日の個所の主要なメッセージです。

  「地上ではよそ者であり、仮住まいの者である」のを信仰告白したということは、信仰者の旅人性の告白です。旅人の姿こそ信仰者の本来の姿だということです。むろんこれを一般の人にも広げて、人は皆、地上では旅人であると意味を広げることも可能です。人間というのは、本質的に地球の宿り人に過ぎません。しかし一般的な意味での旅人性は、どこから来てどこへ行くかは知りません。果てはどこかで野垂れ死にするかもしれないというのが芭蕉などの考えです。だがキリスト者は、永遠のふる里を目指し、魂の国籍のある天を目指して巡礼していると確信するのです。信仰者の旅人性とはそういう意味です。

  アブラハムは、全ての民の祝福の基となる使命を与えられて旅立ったということはいかに重要な事かと思います。というのは、人類は地球資源を食いつぶして行く旅人、言わば寄生虫のようなものと最近、言われ始めているからです。大切な使命を果して去るのでなく、使命を何も果たさずさんざん地球に迷惑をかけて去って行くのかも知れない訳で、折角祝福の基となるように約束されているのに、そんなことになれば残念です。

                               (3)
  さて次に14節以下は、キリスト者が地上の寄留者だと言い表すのは、「自分が故郷を探し求めていることを明らかに表している。」真の故郷、魂の本当のふる里を探し求めている証拠だと語ります。

  私たちの生まれ故郷は東京や埼玉や群馬でしょう。九州や北海道かも知れません。だが、そこが魂のふる里と思わないのです。むろん一般の人が生まれ故郷を大切にするように、私たちも大切にしたり、懐かしいのは変わりありませんが、地上の生まれ故郷が絶対的な真の故郷とは思わないのです。「私たちの国籍は天にある。本国は天にある」とフィリピの手紙は語りますが、私たちの絶対的な意味の故郷は天にあると信じています。

  時に世は低劣になります。超巨大国のトップさえ荒れた低劣な言葉の数々を放ち、日本と経済を取り戻すと語る人物が、夫婦そろって数々の疑惑を生み出す館の主人公になることさえあります。低劣な生き方。ただ、元はそういう場所に居ても、そこから私たちは出て来たのです。後にしたのです。いつまでもその場所を思っていれば、戻るのに良い機会もあったでしょうが、真の故郷を仰いで、不可逆的にそれを背後にした。それが我々だというのです。洗礼を受けるとはそういうことです。

  信仰者は旅人です。巡礼者です。ひと所に留まりません。前進する者です。まことの古里を目指して前進するのです。

  それが16節の、「彼らは更にまさった故郷、すなわち天の故郷を熱望していたのです」とある言葉で表わされています。彼らは天の故郷を切に熱望していた。だから、「神は彼らの神と呼ばれることを恥となさいません。神は、彼らのために都を準備されていたからです」と語るのです。

  ここには、イエスがかねて語られた言葉が響いています。「心を騒がせるな。神を信じ、そして私を信じなさい。私の父の家には住まいが沢山ある。もしなければ、あなた方のために場所を用意しに行くと言ってであろうか。」


       (つづく)

                                         2018年4月15日



                                         板橋大山教会  上垣勝



  ホームページは、 http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/

  教会への道順は http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/img/ItabashiOyamaChurchMap.gif


                               ・