パウロは実に正直


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                                           神からの賞 (上)

                                           フィリピ3章12-16節



                               (1)
  このフィリピ書3章の初めに、「私の兄弟たち、主において喜びなさい」とあります。前の訳は、「最後に、兄弟たちよ、喜びなさい」となっていました。英訳なども、「最後に再び言うが、喜びなさい」となっています。

  著者のパウロは、フィリピの人たちへの手紙の最後に当って、言い残していた事、最も重要な幾つかを書いて、「主にあって喜びなさい」、これが信仰者、クリスチャンにとって最も大事なことです。主にあって喜ぶ。信仰者の信仰者であるゆえんは、主にあって喜んでいるかどうかにある。食事の譬えで言えば、主を日毎に頂き、主を食べてそれを喜ぶことだと言っている訳です。感謝して頂くと、何でも滋養になると昔の人は言いましたが、信仰においても感謝と喜びがあると何事が来ても益になります。

  最後に重要なのは、主にあっての喜びです。この事を私たちも片時も忘れずにおきましょう。

  さて今日の所に、「わたしは、既にそれを得たというわけではなく、既に完全な者となっているわけでもありません」とありました。「それ」とは、直前の10、11節の、「わたしは、キリストとその復活の力とを知り、その苦しみにあずかって、その死の姿にあやかりながら、 何とかして死者の中からの復活に達したいのです」とあることです。

  復活信仰を与えられたい。復活信仰の思想を知りたいというのではありません。そうではなく復活そのものに与りたい。キリストと相まみえ、キリストの復活に与ることによって力を授けられたい。もっと感謝と喜びの生活、永遠の命の希望に生かされたいという願いです。1章には、「生きるにも死ぬにも、わたしの身によってキリストが公然とあがめられるようにと切に願い、希望しています」とありますが、死を越える力をお授け頂きたいと願っているということです。

  パウロは実に正直です。自分を過大評価も過小評価もしていません。「わたしは、既にそれを得たというわけではない」、復活を手にした、それを得るのに成功したというのではない。既に完全な者、パーフェクトになった訳でもありません。私は未完の者、未完成な者であり、完成した完璧な者ではないと語って、「何とかして捕らえようと努めているのです」と語るのです。

  彼はしっかり捕まえようと努力し続け、努力を決してやめないと語るのです。むろん復活をです。人生と生活の奥義とも言うべきものをです。

  信仰者にとって、全て神にお任せ、お委ね、棚から牡丹餅(ぼたもち)、それがキリストを信じるということではないと語るのです。むしろ捕えようと努力し自己修練して努める。祈る。「自分を打ち叩いて従わせる」と彼は別の個所で語っていますが、そのような自分との戦いを不要としないのです。そんなものはキツイと言って避けないのです。

  むろん捕えようと努めても何の甲斐もないかも知れません。だが、自分自身のことを考えれば、一見(いっけん)何の力も甲斐もないかに見えるが、こうするのは、「自分がキリスト・イエスに捕らえられているからです。」これが彼の信仰の基盤にあります。信仰の客観性です。詩編の信仰者が語るように、既に、み言葉は天で確立され救いも確立しているのです。

  イエス・キリストが全能の神のみ腕でムンズと私たちを捕えて下さっている。だから安心して祈り、努力し、努めるのです。徒労に見えることにも賭けて行くのです。

  小さい子どもが何かを見つけたとたん、母の手を離してパッと道路に飛び出しかけます。すると瞬時に母はその子の手をパッと握ります。幾ら子どもが手を離しても、母が強い手で捕まえてくれる限り安全であり、安心でしょう。それと同じです。

        (つづく)


                                         2018年4月8日



                                         板橋大山教会  上垣勝



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