希望を与えたひと言

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　特にペトロに　（上）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１８年４月１日



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（１）
　　先程お読みくださった所に、イエスの復活を知った女性たちの生（なま）の光景がありました。

　　第１は、朝早くから、３人の女性たちの沈んだ重い足取りで墓に向かう姿でした。イエスの遺体に香油を塗るという、悲しい出来事ゆえの沈痛な姿です。誰いうとなく、「だれが墓の入り口からあの石を転がしてくれるでしょうか」と言っていますが、墓をふさぐ巨大な石を誰が転がすのかという心配もありました。

　　第２は、墓に近づき、目をあげてハッとしたのです。巨大な石が転がされていたからです。急いで近づき墓に入ると、「白い長い衣を着た若者が右手に座っているのが見えたので、婦人たちはひどく驚いた」のです。「ひどく驚く」とある言葉は、実に巨大、甚だ甚大という意味です。墓地の、薄暗い墓穴という、思いも掛けない所に若者がいて気味が悪く、度肝を抜かれたでしょう。もし大山教会の墓地で、納骨しているカロートを開けて中に降りると、人がいて、話しかけたとなれば誰でも気絶するだけでなく、世界的なニュースになるでしょう。

　　若者は、「驚くことはない。あなたがたは十字架につけられたナザレのイエスを捜しているが、あの方は復活なさって、ここにはおられない。御覧なさい。お納めした場所である。さあ、行って、弟子たちとペトロに告げなさい。『あの方は、あなたがたより先にガリラヤへ行かれる。かねて言われたとおり、そこでお目にかかれる』と」告げました。

　　婦人たちは、余りに異様な、恐ろしい光景にすっかり肝を潰し、恐れの為に、伝えて下さいと言われたのに、弟子たちに一言も言わず、暫らく口を固く閉ざしていたのです。８節にこうありました。「婦人たちは墓を出て逃げ去った。震え上がり、正気を失っていた。そして、だれにも何も言わなかった。恐ろしかったからである。 」思い出すことさえ怖かったのでしょう。

　　これがイエスの復活に最初に出会った女性たちの生（なま）の姿です。復活など到底信じられない姿です。

　　他の福音書では、女たちは震えあがって「死人のようになった」とあります。イエスの復活がいかに度肝を抜くほど信じ難い、気味悪い出来事であったか分かります。男の弟子たちの反応は、ルカ福音書では、彼らは「たわ言」のように思われ「信じなかった」と書かれています。

　　死人の復活。私たち現代人だけでなく、イエスの弟子たちも当初は、復活というのはナンセンスだ、たわ言だとして受けつけなかったのです。

　　ところが、やがて彼らに聖霊が降ると、たちまちのうちにキリストの復活を喜びを持って信じるようになります。重い墓石もキリストを閉じ込めておけなかったと、死の力は打ち破られたと、喜びは爆発的でいかなる力もこの喜びを取り去ることは出来ぬほどになります。復活。この事件から、世の常識を覆すキリスト教の力が生まれます。

　　女性たちの恐怖は、６節の「あの方は復活なさった」と若者が告げた、ただ一語から来ました。ところが、やがて復活が信じられるようになると、彼らに希望を授ける力は、「あの方は復活なさった」という、短い同じただ一語から来るようになり、宣教の中心は、イエスの生前の愛だけでなく、その深い愛と復活が一緒になって、キリストは甦られた、復活された、死に打ち勝たれた、もはや墓にはおられない、私たちも死に打ち勝ち、復活するという力強い信仰に発展して行きます。

　　こうしてキリスト教は、キリストが復活したということを原点にして、新しく始まったのです。

　　ギリシャ正教会はカトリックよりも古く、初代教会からの伝統を受け継いでいます。そこでは、イースター礼拝に、司祭と会衆で、交互に力強く、「イエスは復活された」、「復活された」と３回繰り返し言い合います。

　　一度、初代教会から続くかも知れないこの伝統を、今、して見ましょう。私が「イエスは復活された」と言います。皆さんは、「復活された」と力強く言って下さい。３回です。

　　　　　　　（つづく）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　マルコ１６章１－８節



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　板橋大山教会　　上垣勝



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