王様は子ロバに乗って


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                                           あなたの王が来る (中)
                                           ヨハネ12章12-16節


                                (2)
  弟子たちですら、イエスが子ロバに乗って入城された意味は、後になってやっと分かりましたが、十字架に架かって死に、復活されるまで、理解できなかったのです。十字架の死で栄光を受けられた時に、やっと15節が語ろうとしていた本当のことが分かったのです。

  15、16節は、「次のように書いてあるとおりである。『シオンの娘よ、恐れるな。見よ、お前の王がおいでになる、ろばの子に乗って。』 弟子たちは最初これらのことが分からなかったが、イエスが栄光を受けられたとき、それがイエスについて書かれたものであり、人々がそのとおりにイエスにしたということを思い出した」と告げます。

  カッコの中は、先程交読しました旧約聖書のゼカリヤ書9章9節の引用です。「シオンの娘」とあるのは、エルサレムの民衆を指します。ただ、王がロバの子に乗っておいでになるというのは、童話の世界ではあっても、現実にはあり得ないことです。背の低い野暮な家畜に、一国の王が乗って入城するなんてあり得ません。滑稽で、不似合いです。だがゼカリヤは、王が子ロバに乗ると預言したのです。

  即ちここで言わんとするのは、弟子たちは、イエスが栄光を受けられた時に「思い出した」とあるように、イエスが十字架の死で栄光を受けられた時に、始めてゼカリヤの預言の真意、預言に隠された霊的、信仰的意味を悟ったのです。

  ゼカリヤは、背の低い子ロバに乗って、「お前の王」、「あなたの王」が入場すると告げています。キリストはあなたの王として、内面的な意味で、あなたの人格の一番大事な中心、都に来られる。であれば、あなたは誰を王として迎えるのかと問うのです。

  また、仕える為に低くなられたキリストを自分の王として迎えるのなら、あなたも低くなってイエスと共に生きなくていいのかということです。

  更にまた、イエスが私の本当の王、私を真に治める方なら、私は、自分を取り囲む闇も、闇の中にいる辛さも、悲観的状況も、恐れなくていいのです。「恐れるな。見よ、お前の王がおいでになる」のです。悲観的状況の方に眼を向けるのでなく、ロバの子に乗って来られる「私の王」に目を向けるべきです。そうでないと、悲観的状況に飲み込まれてしまう。圧倒されてしまう。しかし「私の王」に眼を向けると、悲観的状況に拘わらず、「今は、恵みの時」、「今は、救いの日」であることが分かって来るのです。

  クリスマスは一年で一番夜が長い、冬至の頃にイエスの誕生を祝います。今後更に寒さが酷くなる時期に、イエスの誕生を祝います。これは、寒さが酷くなる時期を、今は恵みの時として祝っていることです。寒さや苦しみが過ぎ、やがて春が来ると言って祝うのでなく、冬至の一番暗く、陰鬱な、長い厳しい冬が1月、2月と前方に控えている時を、恵みの時として、今が救いの日として喜び祝っているのです。

  ある人は、クリスマスを祝って誰かが何かをしてくれるのを待つのでなく、この暗黒の時自体、この時こそ恵みの時だと言っています。何かを、誰かを待つのでなく、私は何を神から期待されているかを考えるのがこの時期です。それが分かると、そのような全く厳しい環境が、恵みの時期、恵みの日になるのです。

  4人の方が一挙に亡くなり、小さい教会の礼拝がガクンと減りましたが、これを悲観的に捉えたら暗くなります。落ち込みます。だがこの時こそ、恵みの時であり、私が、神から何かを期待されている時です。それに気づいて示されたことを各自が行なって行く。すると前途が開けて行くでしょう。

  新年度は毎月招詞を変えようとしていたら、そんな事を知らないある方が、看板の聖句を書きましょうかと言ってくれました。教会を愛する、キリストへの熱い思いを持って挑戦しようとしている人がおられると、励まされました。中学時代まで書道を習っておられたそうです。明るいニュースでした。また、ある人から手紙を頂き、文面にこの方もキリストにつながっておられることが溢れていました。やはり、パッと心が明るくなりました。この人たちは、キリストが自分に何を期待しておられるかという話を知らずに、進んでキリストが期待しておられることをなさったのです。

  イエスは立派な毛並みのいい馬でなく、まだ一度も人を乗せたり、大切な働きをしたことがない子ロバを、ご自分の為にお用い下さるのです。それは嬉しい知らせです。

  イエスが子ロバに跨(またが)って入城されましたが、私たちが馬の背にまたがり、上から人を見下ろして語ったり、行動してはいけないと言う事でもあるでしょう。アウグスティヌスは、一番大事な徳は何ですかと聞かれて、謙虚と答えています。第2は何ですかと問われて、謙虚と答えました。第3はと聞かれて、やはり謙虚と答えたと申します。あなたの王がロバの子に跨っておられるなら、あなたは何に跨って生きるのですかと聞かれている事になるでしょう。


        (つづく)

                                         2018年3月25日




                                         板橋大山教会  上垣勝



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