こころの芯に喜びが来ました


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                                          わが民は大勢いる (中)
                                          使徒言行録18章9-11節



                               (2)
  いずれにせよ、長居は無用と、彼は足の塵(ちり)を払って異邦人伝道に向ったのです。「パウロはそこを去り、神をあがめるティティオ・ユストという人の家に移った。彼の家は会堂の隣にあった」とあります。敵愾心(てきがいしん)を燃やすユダヤ人が大勢出入りするユダヤ教の会堂、シナゴグの隣に住んで伝道したというのです。

  彼の太っ腹には呆れますが、キリスト教はこんな風な伝道をする人もあって、やがて日本にも1500年代に伝わったと考えると、その逞しさに思いを馳せざるを得ません。彼は大胆で、こだわらない、自分のことから考えてよく熟睡できる人間だったのでしょう。

  幾ら神経が太いと言っても、彼がわざわざシナゴグの隣の家を選んだのでなく、神の人と呼ばれているユストが彼に部屋を提供したのでしょう。と言っても1年6カ月です。今なら月10万円、いやこの辺りなら3人ですからもっとしますが、10万円として、180万円程の家を提供してくれた。賄(まかな)い付でしょうか。キリストは軟弱な方でありません。愛の人ですが強い方です。真理に立つ限りこの方が必ずお守りくださるという信頼がある。だから少しも悪びれず、シナゴグの隣家に住み、そこから伝道に出掛け、その家でもキリスト教の集会を持ったに違いありません。皆さん、出来ますか。ため息が出ますね。

  ところが、会堂長のクリスポが一家をあげて主を信じるようになり、コリントの多くの人々も、パウロの言葉を聞いて信じ、洗礼を受けたのです。パウロが取った行動が却(かえ)ってキリスト教信仰への注目を集めたに違いありません。

  それにしても、どこに神が選ばれる人たちがいるか分かりません。会堂長というのは、この大都市のユダヤ人社会を構成する中心人物の1人であり、名士です。学もあります。コリントのユダヤ人社会の内部事情を知り抜き、その社会に根を深く下ろして暮らす人です。それが一家をあげて信仰に入った。むろん会堂長の職をなげうち、ユダヤ人社会から出て、暮らし始めたのですから、コリントのユダヤ人社会に激震が走ったでしょう。それのみか、ギリシャ人たちの間でも評判になったでしょう。

  古代のキリスト教の歴史を勉強しますと、こういう人が時々出て来ます。ある人は、生前に既にローマの町に銅像も建つ有力者で、ギリシャの伝統的な宗教を奉じていました。日本なら、仏教とか神道とかです。だが信仰に入り、キリストを主と崇めるようになると、あっさり高位の職を辞職して、信仰に生き始めます。有名人だけでなく普通の人や、奴隷たちが信仰に生き、こういう様々な人の勇敢な生き方、というよりキリストに対する真実な生き方、その影響がローマ帝国内にキリスト教が広まる原動力になります。

  勇敢とか大胆とか太っ腹と申しましたが、パウロ自身持病もちですし、色々な迫害や争いのトラウマも持っていた訳で、決して鉄人ではありません。彼もキリストに生かされ、慰めを与えられ、罪を赦されて生きる、私たちと同じ普通の人です。

  パウロは、私は異邦人の方に行くと言いましたが、今やそれが実を結んで、クリスポだけでなく、「コリントの多くの人々も、パウロの言葉を聞いて信じ、洗礼を受けた」のです。

  ユダヤ教の会堂長、クリスポが信仰に入った詳細はここにありませんが、彼は自分の心の最も奥、心の核心部分で、キリストを通して神が語って下さるのを聞いたのでしょう。今までは、会堂長をしながら、神が語られるのを聞いた思いがなかった。本当の意味では信仰の喜びなどない。だがパウロから福音を聞いて最も深い心の内奥、魂というか、芯(しん)の部分に福音が入って、そこが神の恵みの光で満たされ、光がみなぎり溢れて喜びに圧倒されたのでないかと思います。神の光がみなぎり溢れると共に、安心というか安堵(あんど)の光が心の奥深くに満ちて、キリストのみ言葉がはらわたに沁み渡ったのでしょう。そういう事があって、一家をあげて主を信じ、洗礼を受けたのだろうと思います。そういう事でも起らない限り、一家をあげて主を信じることは不可能であったでしょう。

         (つづく)

                                         2018年3月18日



                                         板橋大山教会  上垣勝



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