チリに返るのも喜び


                             花束にしました       右端クリックで拡大
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                                                故郷を慕う (中)
                                         詩編90篇1-12節
                                         ヘブライ11章13-16節


                               (2)
  3節以下に、「あなたは人を塵に返し、『人の子よ、帰れ』と仰せになります。 千年といえども御目には、昨日が今日へと移る夜のひと時にすぎません」とありました。

  これは、あなたは、人を本来の塵に戻しという意味です。元々、人は塵に過ぎないからです。どんな人も、「人の子よ、帰れ」と命じられれば塵に帰ります。いかに巨大な実権を持つ人も同じです。夏に枝葉が繁り、存在感があって巨大に見えた木も、冬に裸になるとそんなに恐れる程でなかったのを知るのと同じです。どんなに劣った人も、優れた人も、神の目には差別なく平等です。優劣はありません。

  この事実が平安を与えます。神の下では、長者番付も金メダルもノーベル賞もありません。むろん素晴らしいものを一概に否定しませんし、美しいものは美しいと思いますが、マスコミが国威発揚の思惑もあり絶賛していかに高く持ち上げても、それは畢竟(ひっきょう)相対評価であって、神による絶対評価ではありません。主のもとでは全人類は平等。目立たぬものの中にも多くの素晴らしいものを見て来て私はそう思います。皆、神の愛する人の子であり、1人も失われてならない存在です。

  「塵に返し」とあるのは、本来、人は皆、塵から造られ、原子から造られ、神によって命の息を吹き入れられた存在だからです。息のような存在です。神のみ手の中で塵に戻るのを喜ぶことが出来るように造られているのです。私はやがてチリに返るのも喜びとします。「塵に返し」とありますが、肉体は塵に帰るが、私という人格は神のもとに帰るのです。

  詩編102篇に、「神を賛美するために、民は造られた」とあります。神こそ、全ての民の源であり、私たちが生を享けたのは、命の根源である主なる神をほめたたえる為だと語ります。これが、聖書が語る、私たちが生きる最大の意義です。ここに人生と生活のコア(核)があります。87篇7節は、「私たちの源は全てあなたの御手の中にある」と語るのは、肉体は塵に帰っても、私という存在は永遠に神の御手の中にあるからです。

  4節以下には、「千年といえども御目には、昨日が今日へと移る夜のひと時にすぎません。あなたは眠りの中に人を漂わせ、朝が来れば、人は草のように移ろいます。朝が来れば花を咲かせ、やがて移ろい、夕べにはしおれ、枯れて行きます」とありました。

  「昨日が今日へと移る夜のひと時」、人生は夜の片時の間だということです。「眠りの中に人を漂わせ」とは面白い表現です。

  最近私は机に向かっていていつの間にか居眠りをしています。若い頃の自分では考えられない姿です。目覚めようとしますが、どうしても目が開かず、眠りの中に漂っています。「眠りの中に人を漂わせ」とは、どんなに抗しても眠りに押し流される状態を言うのでしょう。

  ただ90篇は、眠りのことを言いたいのでなく人生のことです。人は朝には花を咲かせ、夕べには萎れて枯れ、夢の中に漂うように、どんなに抵抗しても押し流されて行くからです。

  「千年といえども御目には、昨日が今日へと移る夜のひと時にすぎません。」人生の短さです。たとえ千年生きても終われば一瞬でしょう。長くても質的変化は起らないのに、人間はなぜ長生きを目指すのでしょう。主の目には千年も夜の一時に過ぎません。「人の子よ、帰れ」と呼ばれれば、潮が引くように、ページがめくられるように終わります。

  去年6月以来、北川さんが急逝し、森田さんが後を追うように逝き、阿部さんも去ってしまい、浜松さんも2度と帰らぬ人となり、そして大塩先生です。地上は淋しくなり天国は花盛りです。だがどなたも大切な、愛(いと)しさが残る方でした。

  だが、寂しく喪失感がありますが、ここにも必ず深い意味が含まれていると思います。神はマイナスだけを与える方ではありません。必ずプラスのいい意味があります。


            (つづく)

                                         2018年2月25日



                                         板橋大山教会  上垣勝



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