71才の女性ホームレスにクリスマス・プレゼント


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                                            大きな喜び (上)
                                            ルカ2章8-16節


                              (1)
  クリスマスおめでとうございます。今日の聖書の最初に、「その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた」とありました。

  その地方とは、イエスが生まれて飼葉桶に寝かされたベツレヘム地方です。彼らが「野宿をしながら」とあるのは、私たちが経験する夏の楽しいキャンプや野性味あふれる野山の野宿と違います。元の言葉では、彼らは、「野に住みながら」羊の群れの番をしていたのです。羊は数百頭はいたでしょう。男たちは数人から5、6人で夜通し見張りをしていたのです。

  羊飼いの仕事は、中々厳しい、辛い仕事です。羊泥棒もいますし、羊を襲う狼などもいます。しかもその割には収入が少なく、社会的地位は低く、下層階級でした。農業と同じく、多くの人に食糧を供給するという、ある意味で一番大切な仕事ですが、報われず、却って卑しめられていました。今日でも似た仕事があるかも知れません。

  ところが、羊の群れの番をしていた卑しい彼らに、「主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた」のです。彼らの周辺を照らしたのでなく、彼らを照らしたのです。それで、恐怖に襲われたというのです。

  彼らは物理的な光を見て驚いただけでなく、自分たちのようなこの世から見下げられている小さい者に、どうして聖なる神の栄光の光が照らされたのかを思って怖れを抱いたのでしょう。

  これはザアカイに似ています。徴税人の頭、ザアカイは金持ちですが、ローマの手先になって民衆から税金を取り立てる仕事柄、忌み嫌われ、友がなく、孤独でした。彼は、イエス・キリストがエリコに来たと聞いて桑の木に登り、イエスを上から見下ろしてやろうと待ち受けましたが、イエスは来られると、木を見上げて、「ザアカイ、下りて来なさい。今夜、あなたの所に泊ることにしている」とおっしゃったのを聞き、びっくりしたのです。

  どうして、自分の名前をご存知なのか。しかも今夜、自分の家に泊ることにしていると、まるで親しい親友であるかのように見ておられるのを知り、胸が熱く一杯になったでしょう。非常な驚きを覚えた。誰もが自分を避けているのに、この人はなぜか自分を避けず、人々が、「イエスが罪人の家に行って宿をとった」と呟いても、前言を翻されないのです。このように、ザアカイの出来事は、卑しい羊飼いたちが誰よりも最初に御子の誕生を知らされショックを受けたクリスマスの出来事と大変似ていたのです。

  ザアカイはイエスに、「主よ、私は財産の半分を貧しい人に施します。誰かから騙し取っていたら、4倍にして返します」と言ったとあります。それを聞かれたイエスは、「今日、救いがこの家に来た」と言われたと書かれています。彼の家は、徴税人の親方として家の造りは立派。お金はあるのに、家庭の内側は救いようのないありさまだったのでしょう。だが、今日、ザアカイは神に救われ、義とされ、平和を得たのです。今から彼の新しい人生が始まることになるのです

  彼はイエスの救いの喜びに与ったのですが、羊飼いたちも同じでした。ただ羊飼いらの場合、喜びが訪れる前に、恐怖に襲われたのです。余りに場違いな、桁違いな、常識を越えた知らせだったからです。それで御使いは、「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる」と告げたのです。これは恐れることでなく、喜ぶべきことである。あなた方個人の喜びだけでなく、民全体に関わる喜び、民全体と分かち合われるべき喜びであるということです。

  クリスマスの喜びは自分一人が独占すべきものではありません。また、「クリぼっち」という言葉が今、流行しているそうですが、クリスマスをひとりぼっちで過ごす。ただそれはクリスマスではありません。そういう方々は教会に来ていただきたいと思います。ここでなくても、クリぼっちの人は近くの教会に行ってみていただいきたいと思います。必ずどこの教会も温かく迎えてくれるでしょう。このクリスマス礼拝もそうであり、祝会もそういうことをしていますが、人々と分かち合う喜び。分かち合ってこそクリスマスになります。分かち合わなければその喜びは半減するからです。

  先日、イギリスのブリストルという町の3人の仲間が相談して、4つ星のホテルに1人の客に泊って貰ったのです。客というのは、18年間路上生活をして来た71才の老婦人で、人生で一度だけでもクリスマスのこの時にホテルに泊って過して貰いたいと計画したのです。それでタクシーを拾おうとしたら、何台も乗車拒否に遭いました。仕方なく一人が近くにホテルの空室がないかと探しに行き、4つ星ホテルを見つけたので、彼らは歩いてホテルに案内したそうです。クリスマスの喜びは民全体に与えられる喜び、前の訳では、「全ての民に与えられる大きな喜び」となっていましたが、この不幸な婦人も喜びに与って頂きたいと考えたのです。

  彼らの思いは、自分たちだけでクリスマスの恵みに与っちゃあいけない、人は「クリぼっち」じゃあいけない。たった一晩でも71才のホームレスの婦人にも暖かいクリスマスを過ごして貰いたい。そう思って、彼らはこんな粋なプレゼントをしたようです。

            (つづく)


                                         2017年12月24日



                                         板橋大山教会  上垣勝



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