試練は皆無になりませんが


    グラスミアの教会の敷地にあるワーズワースのダッファディル・ガーデン。
               世界から集められた3千枚以上の名板がはめ込まれていました。
                           5月には一面にラッパ水仙が咲き乱れます。
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                                           馬小屋の赤ん坊 (中)
                                           ルカ2章1-7節
 

                              (2)
  「ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、 初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。」

  今なら予定日が分かりますが、大昔の話です。陣痛が来て初めて今日が予定日だと分かったでしょう。「すべての事には時がある」とは、今の私たちが考えるよりもっと神秘な意味を持っていました。それは神の永遠を思う、事のほか大事な機会だったのです。いや、それでもなお神の業を始めから終わりまで極めることができない事を知る機会だったのです。現代人はそのような大事な神秘を知る機会を失っています。非常に残念なことです。

  人口調査のお布令が出たのは、つわりがあってどれほどの時でしょう。ベツレヘムへの旅は安定期に入ってからでしょうか。それにしても登録には期限があったでしょう。だから困難な妊婦を連れての旅です。道は悪路で山坂があり、ロバに揺られて身重には辛い旅です。うつらうつらして、落ちたらどうなるか考えただけで恐ろしい旅です。

  ここ数年、多くの難民がシリア、イラクアフガニスタン、またアフリカからヨーロッパに流れ込みました。その中には身重の女性もいました。彼らが男たちに混じって地中海を難民ボートで来るのはどんなに苦労だったことでしょう。想像するだけでぞっとします。

  マリアは、御告げを受けて何度も躊躇しましたが、最後に、「お言葉通りこの身になりますように」と答えました。その時、こんな辛い現実が待っていると思ったでしょうか。「お言葉通りこの身になりますように」、そうお答えしたのだから、必ず最後まで持ち運んで下さると信じたものの、この先どうなるのか、心配すればするほど不安が募ったでしょう。

  私たちは信仰の道を選びましたが、それは必ずしもなだらかな順境の日々だけではありません。極めて厳しい環境に置かれることもあります。しかしそういう困難を経験しても、その困難を経験しながら神は私たちを持ち運んで下さるのです。ですから、神の御心を行なって約束のものを受けるために、「あなた方に必要なのは忍耐である」と言われているのです。

  と言っても、信仰者は別に強い人でも、試練や試みの前で、「矢でも鉄砲でも持ってこい」という傲慢な思いを持つ者でもありません。そんな勇ましい者ではありません。だから私たちは今日も、イエスが教えて下さった「主の祈り」を唱えて、「試みに遭わせず、悪から救い出し給え」と祈ります。弱さを知る者はそう祈ります。しかしまた、祈りましても、この世に在って試練や試みが皆無になることはないでしょう。

  イエスが弟子たちに、「あなた方はこの世では試練がある」と言われたように、試練や試みは必ずあります。だが、イエスを信じて揺るがないなら、必ずそこを通って向こう岸に着かせて下さるのです。イエスガリラヤの海で、弟子たちに、「恐れるな。どうして信仰がないのか」と叱咤されましたが、必ず向こう岸に着かせて下さるのです。

  2月に社会委員会が主催して「平和集会」を開く予定です。その時、ヘレン・ケラーが取り上げられるそうで、素晴らしいです。ぜひそれ迄に、ヘレン・ケラーの自伝、あるいは子ども向けの本でも構いません。お読みになるといいでしょう。

  視力障害者は日本に約30万人ですか。世界では3600万人。数の多さに驚きます。イギリスの新聞では、2050年に1億人を超えるとしています。

  目が見えず、耳が聞こえず、話せない。ヘレン・ケラーは1才半で突然発熱して3重苦になりました。これ程辛いことはありません。だが彼女がいなければ、今のように盲人福祉が世界で進むことはなかったでしょう。彼女の信仰は広く、キリスト教の枠に留まらず宗教の枠を越え、盲人、いや、盲人の枠も超え、色々な障害者を救い、障碍者と共に生きる道を切り拓く先駆者になりました。


       (つづく)

                                         2017年12月17日



                                         板橋大山教会  上垣勝



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