老夫婦に起ったこと


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                                           老夫婦に起ったこと (中)
                                           ルカ1章5-17節



                               (1)
  さて、先程の今日の聖書にはイエス・キリストはどこにも出て来ません。イエスでなく、「ユダヤの王ヘロデの時代、アビヤ組の祭司にザカリアという人がいた」という言葉で始まり、エリサベトやヨハネの名前が出て来るだけです。

  「ヘロデの時代」とは、彼がユダヤの王として紀元前40年から紀元後、西暦4年まで在位した時代のことです。ルカが、「ユダヤの王ヘロデの時代」と書くのは、これから書こうとしているイエスは歴史上の人物であること。架空の人物でなく実在の人物であることを語るためです。3節に、「テオフィロさま」、前の口語訳では「テオピロ閣下」にこの書を献呈しますとあったのも、イエスが実在の人物であるのを語るためです。

  幾ら正しい生き方でも、イエスが想像上の人物であったり作りものなら、慰めにはなっても、少しも現実の力になりません。しかしヘロデ王の時代に、エルサレム神殿に仕えるアビヤ組の祭司ザカリアがいた時代だと語るのです。ヘロデ王は、キリスト誕生を聞いてベツレヘム周辺の2才以下の男児をすべて殺させた人物としても歴史に名を留めていますから、やはりキリストは空想上の人物ではないということです。

  ところで、ザカリアは神殿に仕える祭司でした。日本で言えば神社の神主さんで、神主さん達は宮司禰宜権禰宜など色んな役職を持って神社に仕えています。ザカリア達も輪番制で神殿の無数に近い色々な仕事をしました。何しろエルサレム神殿は巨大で、祭司が1万8千人いて、24組に分かれ、彼はアビア組で色々の仕事を担当したのです。アビア組だけでも750人です。

  現代風に言えば、彼は巨大組織の中で組織の歯車として生きる人間でした。例えば、職種は違い仕事内容も違いますが、従業員約36万人のトヨタは巨大組織です。従業員はその組織で1つの歯車として働いています。ザカリアも組織の中で働くという意味では同じです。

  「妻はアロン家の娘の一人で、名をエリサベトといった」とありました。彼女は名門の出です。血統正しい娘だったのです。また、「2人とも神の前に正しい人で、主の掟と定めをすべて守り、非のうちどころがなかった。」少しの隙もないほどの人たちだったようです。彼らはユダヤ教徒であって、別にキリスト教で勧める生き方ではありませんが、見事な夫婦だったのでしょう。

  それにしても、「エリサベトは不妊の女だったので、彼らには、子供がなく、二人とも既に年をとっていた」のです。当時、2千年前ですが、子どもができない女性は人から低く見られ、後ろ指を指されました。日本では、つい戦前まで、子が生まれないだけで馬鹿にされ苦しんだ女性たちがいました。

  私には分かりませんが、板橋のこの辺でも、名門の出とか、数ランク上と言われる家があるかも知れません。幼稚園からこの辺の地元で育ったり、親がここが地元の人はそういう名門とか、何とか言われる家を知っているでしょう。しかしザカリアとエリサベトという老夫婦は、名門とか、非の打ちどころがない家であった訳ですが、一歩中に入ると彼らのように、人は、人知れぬ悲しみを抱えていたり、大きな苦難を負っていたりすることを知らされる訳で、その辺のことを知って、私たちは人との間で人間として誠実な、人を貴ぶ関係を結ばなければならない事を教えられます。あの家はこうだからどうのこうのと、勝手な噂をするかも知れませんが、そんな尻馬に乗っちゃあおかしいと思います。外からは分かりませんが、もしかすると救いを切に待ち望んでいるご家庭かも知れないのです。

       (つづく)

                                         2017年12月3日



                                         板橋大山教会  上垣勝



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