自分へのパンチ


       ポターがピーター・ラビットなどを書き、無口なこの地の法律家と結婚しました。
翌年、彼らはポターが愛したこの湖を買い取り、赤と白の夢見る睡蓮を育て、二人は夕べのひと時ここに来てボート楽しみました。
湖には糸トンボやヤンマが飛び交い小鴨連れの鴨たちが泳ぎ、ここは今は湖沼生物の貴重な宝庫だそうです。
ポターは死後、彼らの家や牧場、またこうした湖などをすべてナショナル・トラストに寄贈しました。
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                                        朽ちぬ冠を(下)
                                        Ⅰコリント9章24-27節



                               (3)
  「空を打つような拳闘もしません。むしろ、自分の体を打ちたたいて服従させます」とも言っています。今度はボクシングの譬えです。空気を殴りつけるだけのボクシングは誰もしません。正確に相手の顔面やボディを捕えて打つのです。

  ただ彼は実際のボクシングのことを言うのではありません。「むしろ、自分の体を打ちたたいて服従させます。」自分との闘いです。自分へのパンチです。打ち叩いてとあるのは、元の言葉はとんでもない語ですよ、虐める、いじめぬくという言葉なのです。自分をやっつける、懲らしめるのです。そのようにして、自分を従わせ、服従せしめる。この「服従させる」の元の言葉は、「奴隷にする」という言葉です。自分を厳しく打ち叩いて従わせ、奴隷にするのです。

  これは余りに自虐的でないか。聞くに堪えないと思う人があるかも知れません。しかし不健康な自虐と健康な自虐があります。スポーツ選手はその健康な自虐をしています。昔、カトリックの修道士は自分を虐げるため体を鞭で打ちました。キリシタン時代の修道士がそうです。毎日、何十回となく背中を鞭打ち苦しめました。ただパウロはそんな事を言いません。もっと健康なあり方です。それは心の持ち方です。自分を、自分の力の下に置くための懲らしめです。

  翻(ひるがえ)って、現代は、自分を叩かず人を叩く人が余りにも多いのではないでしょうか。自分は棚に上げてしょっちゅう人を叩く人がいないですか。女性の国会議員にもいる訳で、酷いです。

  パウロは精神的な意味で自分を叩くというのです。たるみがちな自己への挑戦です。チャレンジです。アスリートが言うように最後は自分との闘いです。日々内なる闘いが要ります。そんなものはもういいと投げ出しちゃならないと思います。私たちは自分の命を生きるために命を与えられているのであって、それを投げ出しちゃあ実に惜しいです。

  ファリサイ人は他に見せるために顔を見苦しくして断食しました。パウロが言うのは見せるためでなく、人を救うための、伝道のための自分への厳しさです。

  「他の人々に宣教しておきながら自分の方が失格者になってしまわないためです。」落第生にならないためです。パウロほど信仰義認に立脚し、神の子とされていることを信じた人が、何でここまでするのか。それは先程言ったように、キリストの愛に迫られていたからでしょう。またキリストの恵みは安価な恵みではない訳で、私のようなとんでもない者をも救って下さった測り難い恵みだから、それにお応えしたいのです。

  今年も今週土曜日のバザーが終わると、一万枚のチラシを皆さんと各戸に配布しますが、私の心の内ですが、元は、一万枚の配布を自分に課すため、自分と戦うためでありました。本当なら1軒、1軒、大山周辺のお家の戸を叩いて、1万軒の人たちに福音を説いてお渡ししたいですが、それはちょっと無理です。それでたとえそれは出来なくても、それに近い事をしたいと1万戸の郵便受けに届けることにしました。

  しかしこの業を一人の業にしなかったのは良かったと思います。皆さんは100枚でも、50枚でも、20枚でも結構なのですが、皆さんと共にする業であることは、もっと大きな意味があるからです。普段伝道ができなくても、この時だけでもイエス様の恵みに応える伝道が出来るのです。むろん、こうした業をしたとしても、「他の人々に宣べ伝えておきながら」、私たちも失格者にならないために、自分自身を打ち叩いて従わせながら生きて行きたいと思っています。


          (完)


                                         2017年10月15日



                                         板橋大山教会  上垣勝



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