自由を生きる


    湖水地方――ポターさんがいつも小1時間ウオーキングしていたモス・エクルズ湖への道
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                                          自由を生きる (下)
                                          Ⅰコリント9章19-23節


                               (3)
  「福音のためなら、わたしはどんなことでもします。」こういう意志は大変尊いものです。「福音のためなら」とあるように、福音が中心になり、自分が中心にならないのです。信仰者が成長するとは、その人が自分のために何かをするという所から、「福音のためなら、わたしはどんなことでもします」という所まで成長し、導かれることです。そこまで導かれると、言わば眺望のいい山の上に着いた時のように、キリストの福音が本当に慕わしく、喜びになります。

  以前、その人のためになればと思って、普通はしないことも出来るだけ協力した方がありました。しかし今考えると、その方は福音のためでなく、自分のためにし、人々も自分のためにして欲しいとの欲求が強い人でした。抽象的に言いますが、教会も自分のために利用するという姿勢ですから、思い通り行かないと自分の都合のいい話を「作り上げて」突然サッと去りました。実に悲しいことでした。しかし、そのような姿勢は他の所でも必ず露見するでしょうから、本当にその方のために悲しみます。教会の人たちに色々お世話になったにも拘わらずです。「私のためのキリスト」であって、「キリストのための私」ではないのです。献金の祈りも自己顕示的で、多数の人が異様に感じたそうです。祈りは自己顕示ではありません。この大切なことでも、私、私の自己中心が取れないのです。その一番肝心な点を分かって頂けなかったのは、私の導きにも責任があると反省しています。

  パウロは、自分のためには何でもすると語るのではありません。それは自己中心です。パウロは、「福音のためなら、わたしはどんなことでもする」と語るのです。この2つは天地の違いがあります。

  パウロはこう語って、「福音のためなら、わたしはどんなことでもします。それは、わたしが福音に共にあずかる者となるためです」と述べたのです。ここに彼のキリスト者としての姿勢がはっきり出ています。

  「福音に共に与る」とは、自分も、救われたその人々と共に福音に与るという意味でしょう。彼はここでも、自分の心の平安だけでなく、自分を越えてもっと広く大切なもの。イエスの福音がこの人も、この人も、またこの人も救って下さった。その福音の素晴らしさ、福音の力に自分もその人と共に与る者になりたいと語るのです。即ち彼は救われた人たちとの愛に生きているのです。

  先週の所で、彼は最初に当然の権利を語りました。だが当然の権利を語った後、すぐ、自分はその権利を求めない。求める位いなら、死ぬ方がましだとさえ語って、無償で福音を宣べ伝える喜びを、その無尽蔵の価値を語りました。

  それは自己満足的な喜びのことではありません。個人プレーでもありません。彼が語るのは、福音を宣べ伝える彼の喜びは、自己中心の、自分を満足させるための喜びでなく、主を求める人たちと連帯して生きる喜び。福音に共に与る喜び、彼らと連帯して愛に生きる喜びであることを証しするのです。

  彼は、「わたしは、だれに対しても自由な者ですが」と申しました。だがこの世の自由はしばしば相手を躓かせます。その自由は自分の欲求を達成する自由、自分の欲だけを追求する我儘(わがまま)な自由になりがちなのです。

  しかしパウロが語る自由は、愛に生きる自由です。愛する自由です。仕える自由です。だから彼は、「わたしは、だれに対しても自由な者ですが、すべての人の奴隷になりました」と語ったのです。9章は、こうしたキリスト者の自由とは何かを語っています。


           (完)

                                         2017年10月8日



                                         板橋大山教会  上垣勝



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