彼ははぐらかさない


      湖水地方に遊びました― ヒル・トップのベアトリックス・ポターの家で(1)     右端クリックで拡大
                                ・


                                         批判された大使徒 (上)
                                         Ⅰコリント9章1-12節



                               (序)
  今朝も子ども達へのメッセージをありがとうございました。1週間勤めをなさりながら、大人たちがいる中での子ども達への話を考えるのは大変だと思います。でも毎週色々な方から色々なお話を聞けて、また同じ聖書個所でも多彩な話し方があることを知って、色々と教えられます。この教会は活き活きして素晴らしいと思いますね。

                               (1)
  さて、今、イエス様亡き後、キリスト教の基礎を築いた使徒パウロへの批判と彼の反論をお読み頂きました。今日は、次の段落も含めて福音を聞きたいと思います。

  パウロユダヤ人ですが、外国人伝道を志して、小アジアと呼ばれる今のトルコと、エーゲ海を渡ってヨーロッパ大陸にまで伝道し、ギリシャマケドニア地方に色々な教会を建てた人です。どこからの支援も受けず、テント作りの仕事で生活費を稼ぎ、自給伝道をする宣教師でした。非常に骨太の逞しい人物です。

  宣教師と言うと母国の教会から支援を得て働きますが、彼はそういうものなしに、行く先々で仕事をして伝道活動をした訳で、言わば、先程お話し下さった兄弟が普通のお仕事を持って日曜日にこうしてメッセージを語るのと似た形です。A兄は言って見ればパウロの後継者ですよ。

  パウロはむろん各地で開拓伝道した教会から援助を貰うことは出来ましたし、当時も今も、伝道者は教会に支えられて伝道するのが原則ですが、彼は自分が設立した教会からも謝儀を受けなかったのです。

  そのパウロが礎を作り、殊に愛したコリント教会ですが、彼が他に移った後、様々な問題が起こりました。それは既に何度も触れて来たので今日は申しません。その様々な問題が起こる中で、創立者パウロにも批判が向かったのです。コリントはアテネに近いギリシャの大都市です。教会にも論客が現われ、幾つかのグループが生まれて論争したりする中で、パウロもやり玉に挙げられたのです。

  批判の中心は、パウロは本当の使徒なのか。キリストから任命された使徒であるか。キリストの信任を得ない偽の弟子でないかという伝道者の命に関わる厳しい問です。それにしても今日から見れば、パウロなしには、その後のキリスト教はない訳で、使徒中の使徒とも言うべき大使徒に対して、彼らは批判の矛先を向けたのです。

  彼らの憶測は、パウロはキリストの真の弟子でないから、教会から謝儀を受けないのでないか。謝儀を受ける資格がないから、バレたら大問題になるので、どの教会からも受け取らないのだと邪推したのです。伝道のアマチュアであり、プロではないと言ったのです。

  公の場で反論しにくい批判を受けたことがおありでしょうか。先週、牧師の集まりがあり、長く牧師をして来た方が話されました。一番苦しかったのは、初めて主任牧師になった教会で、当時は青年たちが活発な時代ですが、説教が聖書的でない、福音的でないと彼らからさんざん批判され、それがエスカレートして遂に衝突して、10数人が教会を出て行ったとの事です。中でも苦しかったのは、彼ら青年の批判より、彼らに対するその方の対応が悪かったからこんな結果になったと、一般信徒から痛烈に責められた事だったと言っておられました。

  パウロに非がないのに、論客たちは彼をやりこめるため、論証が難しい事柄を持ち出して批判を浴びせたのです。さぞ弱ったでしょう。彼はこの章の終わりで、ボクシングの譬えを持ち出しますが、論客の批判はボディブローのように体に応えたに違いありません。彼はこの後も、幾つかの手紙で使徒職の問題を取り上げているのは、このボディブローが後々まで尾を引いたからでしょう。

  しかし私は、彼のような大使徒でもこんな批判を受けたことに一種の慰めを覚えます。いつでも身を引ける趣味などでなく、生活が掛った生き死の問題で矢面に立ったことがある方は、身に沁みてお分かりだと思います。彼はそんな中、主に寄りすがり、耐え忍んで、はぐらかすのでなく、――首相は、自身の加計学園や森友問題から国民の目をそらすために衆議院を解散しました。誰の目にも明らかな、卑しいはぐらかしです。国難とか何とか言って、自身が国政を困難にしておきつつはぐらかしたのですが――、パウロははぐらかさず、先ず5点を挙げて批判に応え、更に数点挙げて反論し、最後に論点を大転換してパウロ独自のオリジナルな考えを述べています。それが次の段落にかけての個所です。

       (つづく)


                                         2017年10月1日

                                         板橋大山教会  上垣勝



  ホームページは、 http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/

  教会への道順は http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/img/ItabashiOyamaChurchMap.gif


                               ・