逆境を投げ出さない人を尊敬します


カレッジの構内は大木が繁り、車の音が少しもしない静寂の中で学生の談笑と美しい小鳥の声が聞こえます。
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                                       待てぬか、時を (中)
                                       Ⅰコリント7章17-24節


                               (2)
  パウロは、「割礼の有無は問題ではなく、大切なのは神の掟を守ることです」と語ります。掟とは戒めや律法、命令です。その中心は、神を愛し、隣人を愛する事ですから、キリストに在っては外面的な割礼は重要ではない。重要なのは神に応答して生きる事だと言いたいのです。

  クリスチャンにとっては、体に救いの印をつけるとか、お札(ふだ)のようなものを頂くとか、見えるものは不要である。神のみ言葉を日々、生活の中で頂いて生きることが大切で、それがキリストにある者のしるしであるという事です。

  そういう中で、「 おのおの召されたときの身分にとどまっていなさい」と語るのです。ここも原文に身分という語はありません。各自が神に召されたそのままに留まりなさい。神の召しは、身分を越えているという事です。

  「召されたときに奴隷であった人も、そのことを気にしてはいけません」と21節にあります。むろん自分が奴隷である事や奴隷の生まれである事、また先程の人なら自分がリストカットをして来た人間だということは気になります。気にならない筈がありません。気になるのですが、その事をキリストに在ってもはや重視するな。言葉を変えて言うなら、それに負けるなということです。

  そう考えると、次の「自由の身になることができるとしても、むしろそのままでいなさい。」という言葉は、屈従的な奴隷の身分に忍従して生きなさいと言うのとは逆に、あなたは奴隷である事をチャンスとして積極的に用いよ。それを益に変えなさいと言うことです。主に在るなら、「万事が益となるように働く」と彼は別の個所で語っています。あなたの力で益に変えろと言うのでなく、主が奴隷であるあなたの中に入って働き、益になるように変えて下さるから、心に平和を持ってそれを信じて働きなさいと言うことです。

  彼が言いたいのは、奴隷でも奴隷でなくても、主が共におられるから、あなたの置かれた場所と機会を最も良く用いなさい。そこで神の栄光を現わしていきなさいと言うことです。

  先日、妻が川崎で小学校の教師をしていた時の教え子7人が、有り難いことですが先生と慕って、ここに集まって同窓会をしてくれました。55、6歳の方々です。これまでで良かった事や苦しかった事を話して貰ったそうですが、中に、確かな職もないが、若くして結婚し、2児をもうけ、借金を抱えたり過重な労働をしたり、合計7回職を変わり、今も家族のために苦労している教え子がおられたそうです。彼は信仰を持っていませんが、それでも塗炭の苦しみを舐めながらも、生きる道を授けられて来たのです。またある男性と結婚したが離婚し、また同じ男性と再婚したが再び離婚し、その後は、認知症になっていた夫の母親の世話を5年間もして来たという苦労に苦労を重ね、この世の生き地獄であったかどうか知りませんが、涙の谷を通って来た教え子もおられたそうです。皆、実人生でよく頑張っておられるのです。

  逆境を投げ出さず、懸命に生きて来た。すると友達が多く与えられたり、克服の道を与えられたりして、今日まで歩んで来られたということらしいです。すんなりした優等生より、色んな重荷、苦労を負っていた子の方が伸びたり、味があったりして今に至っているようです。

  パウロ自身、この世の生き地獄のような所を何度も見て来た人です。神は試練を与えられますが、それと共に逃れの道やそれを負って行く道を授けられるのを経験から知っていたのです。

  それで、「そのことを気にしてはいけません」と、奴隷だからと言え、人間としての価値は変わらないと言うのです。奴隷だからと言って、卑しくはない。キリストに在っては奴隷であるなしは重要でないからです。

  それが22節です。「主によって召された奴隷は、主によって自由の身にされた者だからです。」主によって信仰に導かれた奴隷は、主によって自由にされた自由人である。キリストに召された奴隷は、既に世の奴隷制を越えている。真の自由人である。

  青い鳥は遠くでなく、あなたのすぐそばにいる。それに目を留めなさい。奴隷主を越えた方が実在する。ここに、あらゆる困難や試練を超える道があるという事でしょう。


      (つづく)

                                     2017年9月10日




                                     板橋大山教会  上垣勝



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