心は熱すれど肉体弱し


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                                           男女と性 (中)
                                           Ⅰコリント7章1-7節



                              (2)
  彼は夫婦問題でこう言います。「夫は妻に、その務めを果たし、同様に妻も夫にその務めを果たしなさい。妻は自分の体を意のままにする権利を持たず、夫がそれを持っています。同じように、夫も自分の体を意のままにする権利を持たず、妻がそれを持っているのです。互いに相手を拒んではいけません。」

  彼はかなり中に入った突っ込んだ言い方をしています。彼はここで、「みだらな行いを避けるために」とか、「サタンが誘惑しないともかぎらないから」とか、9節では、「自分を抑制できなければ」とか、「情欲に身を焦がすよりは」などと申しますが、これまでの研究から彼自身結婚の経験があったのだろうと言われています。確かに経験があるから、ここまで突っ込んだ事を言えるのでしょう。結婚したことがなければ中々言えません。彼はこの時は単身者ですから、何らかの理由で、多分15節にあるような理由で、ユダヤ教の妻との結婚を解消したのでしょう。

  彼は夫婦の性の交わりの重要さを熟知しているのです。キリスト教は性の交わりについて隠しません。そういう話題を好んでするというのは疑問ですが、必要な時には避けないのです。

プラトニックラブを説きません。肉体関係を伴わないプラトニックラブと言うのは、空気を食べて生きるような観念的な所があります。奇麗ですが現実的ではありません。むろん夫婦は男女の性の交わりにまさって、人間同士の人格的な出会いでなければ夫婦の質も深まりません。だが肉体的に健やかで、健康な本能を持つ人たちで、肉体関係を全く抜きにした夫婦は、非常に破綻し易いです。例外はありますが脆(もろ)いです。

  いずれにせよ、キリスト教は心や精神や魂と共に、肉体のことを重視します。そうでなければ全国にキリスト系の病院がこんなに多くないでしょう。仏教系、神道系の病院が果たして幾つあるでしょう。キリスト教信仰は人間をバランスよく、全人間的に、霊のことも体のこともインクルーシブに包括的に見るのです。そういう人間観を持った救いです。

  私たちは悟った者のように振舞う必要はありません。いつまでたっても悟れないのが私たちです。自分の中に根拠があるのでなく、キリストに救いの根拠があります。悟れないのを隠して、悟った者のような顔をしていると、却って、隠れて何か仕出かすことになりかねません。

  現代社会は性の問題が余りにも多いです。先日も奈良の天理市の市長さんが東京に出張で来て、夜はいかがわしい女性を2晩だかホテルに呼んでいたというのでしょう。でも新聞でしっかり取り上げられもしません。市長も市長です。公費ではなかった、私費で払ったと弁明しています。私費だったら新聞も許すのでしょうか。

  この問題のパウロの特別な洞察は、この「夫は妻に、その務めを果たし、同様に妻も夫にその務めを果たしなさい。妻は自分の体を意のままにする権利を持たず、夫がそれを持っています。同じように、夫も自分の体を意のままにする権利を持たず、妻がそれを持っているのです。互いに相手を拒んではいけません」と語る所です。

  自分の体は自分だけのものでなく、相手に権利があるというのです。夫が、「これは俺の権利だ」と言って強要して来るというのは論外です。そういう意味ではない。相手に尽くしなさい、仕えなさいと言うことでしょうか。「夫の性の奴隷になるのでないか」とか、「妻の性の奴隷になりはすまいか」と言うようなことでもありません。愛が前提になった夫婦だけが知る相手への労りです。

  パウロは、男女が共に持つ人間的弱さを知る人であったからです。人間は弱いです。性の問題でも実に心が弱いのです。「心は熱すれど、肉体弱し」とイエスは語っています。それで誘惑は多いのです。拒否し続ければ、それがきっかけで誘惑の手が伸び、亀裂が入ることもあるのが夫婦と言う、信頼関係にだけ基づく脆弱(ぜいじゃく)な関係であると見抜いているのです。


       (つづく)
                                     2017年9月3日



                                     板橋大山教会  上垣勝



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