女性が理解しにくい領域
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男女と性 （上）
Ⅰコリント７章１－７節
（１）
先週申しましたが、この個所はコリント教会の特殊な問題に対し、パウロが返事を書いたものです。「そちらから書いてよこしたことについて言えば」とあるのが、手紙のいきさつです。
どんな問題か。「完全なクリスチャンになろうと思えば、欲望を完全に捨て結婚もしてはならない。」そういう極端な人たちの考えだったと思われます。厳しい禁欲主義です。なぜならコリント人は好色的で風紀が極端に乱れていましたから、それに反発して、完全なキリスト教徒はここまでの覚悟がいると説く人たちが居たのです。
当時のギリシャには、「若者にはコリント行きは勧められない」という諺すらありました。今なら、「若者には、夜、新宿歌舞伎町行きは勧められない」と言ったものになるかも知れません。よく知る人は、夜だけではないという人もあるでしょう。
質問に対して、パウロの考えは穏健で、バランスが取れ、中庸を行くものでした。ただ２千年前の特殊事情にあるコリント教会に宛てたものですから、これをどんな時代にも通用する普遍的なものと考えるには無理があります。特に男女関係は時代や国によってずいぶん違いますから、当時パウロはこの問題をどう考えたかを見て、その本質的な所を頂いて参考にすればいいでしょう。
予め申しますと、彼は男女の平等、夫婦の平等を説いています。無論結婚を禁じません。彼は状況に応じて発言していますが、禁欲主義者たちのように偽善的になるな、抑制できないなら進んで結婚すればいいと申します。
これが１節から１６節までの大枠ですが、先ず彼は、コリント教会からの質問に、「男は女に触れない方がよい」と語ります。
これは今日からすればあまり厳しくちょっと歪んだ考えに思えるかも知れませんが、この続きを読むと、彼はかなり現実を知った男性として発言していると思います。いや今日でも、やたらと女性に触れたがる男性がいますが、それはセクハラですよ。
彼は男性と女性の性の差、性差を知っているのでしょう。私の偏見でなければ、男性はやはり、かなり動物的です。野蛮なけもの性を持っています。愛や雰囲気を大事にする女性と違って、愛なしで肉体関係を持って行きます。いつか、「男は狼だから気をつけなさい」と言われて育ったから、結婚するまで男の人と口を聞いたことがなかったと、どなたかが言っておられましたが、当らずとも遠からずの所があります。
この質問は特に男性からだったのでしょう。そこで、「男は女に触れない方がよい。しかし、みだらな行いを避けるために、男はめいめい自分の妻を持ち、また、女はめいめい自分の夫を持ちなさい」と答えています。
「みだらな行為を避けるために」結婚するというのは解せないと思う方が居るでしょう。むろん結婚は両性が出会い、愛し合い、魅かれ合って結婚します。それが普通です。パウロは当然そのように考えています。
しかし不品行に陥らないために、世に多い不倫に陥らないために結婚することも否定してはならないのです。自分の弱点、それを異性に補って貰う。そういう実際的判断がおかしいとどうして言えるでしょう。「みだらな行為を避けるために。」これは自分の弱さを知る成熟した人間だから考えることかも知れません。ここは女性が中々理解できない男性の領域かも知れません。
むろん理想的な男女の出会いがあればそれに越したことはありません。だが現実とある意味の妥協をして結婚する。女性の中に、将来の生活を考えると、自分の性格では独身で暮らして行けないから結婚すると言う人がいらっしゃいます。それでもいいと思いますし、もっと違った理由もあるでしょう。そんな現実的判断をしてはいけない筈がありません。これは結婚に対して不謹慎というより、自分の弱さや限界をよく知る大人だからでしょう。理想像に縛られず、自分を考えて、キリスト者として一番よく胸を張って生活できる道を選んでいいのです。
（つづく）
２０１７年９月３日
板橋大山教会 上垣勝
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