扱いにくい放射能


                     話でなく、手の表情に引き込まれました。
                               ・



                                             逮捕の前夜 (下)
                                             エレミヤ35章1-19節


                              (3)
  35章の時代は、約10年後に、既に頭角を現していた新バビロニア帝国と言う巨大な野獣にユダという小動物が襲われ、一たまりもなく滅ぼされ、地上から姿を消す時代です。

  エレミヤは何十年も昔から、神に遣わされ、15節にあるように、「おのおの悪の道を離れて立ち帰り、行いを正せ。他の神々に仕え従うな」と厳しく悔い改めを迫りました。しかし、王も祭司も指導者も、民衆も悔い改めず、滅亡が目前に迫っても、「この民は神である私に従おうとしない」という始末です。

  では、日本は今、歴史のどういう時期にあるかと思います。更に発展するか、横ばいを続けるか、それとも世界経済の浮き沈みの中で突然、巨大な財政赤字や人口減少と超高齢化が没落に向かわせるか、それとももう一度巨大地震原発事故が起こって大変な事態を迎えるのか、分かりません。だがもう一度起これば没落は必然でしょう。そんなことが起これば、必ず富める者たちは貧しい者たちを残して国外脱出します。

  この春に、教団が主催して「国際青年会議イン京都」と言うのが開かれました。久々の良い会でした。国内外の色々な人が講演し、浪江町保健師だった伏見さんと言う方も、原発事故当時の事を講演しました。3・11は1万5千余の命を奪い、行方不明者を含めると1万8千余、災害関連死も含めれば2万人を超えました。また原発巨大事故の死の灰からの避難者は27万人に達しました。

  伏見さんは、最初は原発から30キロ離れた津島地区――ここから横浜ほどでしょうか――に避難し、保健師ですから、一時は300人程の地区に8000人で溢れて、ごった返す中、認知症の高齢者や精神科の患者さん、透析の患者さんなどのお世話。健康な人への対応と共に多くの病人に対応されました。それだけでも大変ですが、特に避難所のトイレがすぐに詰まり、またトイレが絶対的に不足して本当に大変だったそうです。保健師は地域衛生の面からトイレのことは不可欠です。

  4日目には、原発からの避難に遅れた人が続々と津島地区に着き、原発事故の怖さを初めて知るのです。私もその話で、原発とは何か、初めて知るところがありました。幾つかご紹介します。

  若い女性でも避難が遅れるそうです。どうしてか、「屋内退避って言うから家にいた。屋内に退避し換気扇も回さないように」と言われて、気づくと村に誰もいない。そんな中で避難所に駆けこんで来るのです。

  原発から3キロの所から来たご夫婦は、奥さんがガタガタ震えて止まらなかったそうです。自分は被爆したのでないかという恐怖心です。だが、放射能の計測器がない。測定できないので、人々で混む避難所からシャッタウトです。もし高レベル放射能を浴びていれば、他の人迄危険に晒すからです。本当に高レベルになれば、そんな事態を招きます。その夫婦は計測器が届くまで、何時間も雪が残る屋外で待たされたそうです。非人道的ですが、これが放射能の脅威です。

  また福祉事業所のスタッフが、高齢者の避難のために自衛隊がやっと迎えに来て、その後やっと最後に施設を出て避難所に着いたのですが、この人も放射能の測定が出来ず、避難所に受け入れるべきか、保健師の伏見さんは本当に迷うのです。そして、おにぎりを持たせ、水が十分ある所に行って、幾度も水を浴びて下さいと言って、去らせられるのです。残雪があるのですよ。たとえ90才、95才の婦人でもそうされるでしょうね。考えるだけで恐ろしい。

  また赤ちゃんと高齢者を更に遠くに避難させなければならなくなり、丁度いたパトカーに頼んだら、パトカーは今、浪江町内を通って来たので車内が汚染されているかも知れないので、自分らは先導するから役場の車を出してほしいというのです。放射能汚染は警察もへったくれもない。すべての壁を越えて行きます。

  あれやこれや、放射能の実態、その恐ろしさがヒシヒシ伝わってきます。初めて知る事も多く、放射能の扱い難さ、原発事故の怖さを改めて思いました。

  それでも原発を推進し、原発を輸出しようとする政治家の頭はおかしいのでないかと思いました。太陽光発電などを政府は本腰を入れて推進しない。推進せずに、設置を困難にさせる。本当におかしい。経済は大切ですが、何が何でも経済成長させるという価値観は、人間も国もダメにするのです。

  「おのおの悪の道を離れて立ち帰り、行いを正せ。他の神々に仕え従うな」とありました。他の神々とあるのは、バアルやアシュタロテなど偶像の神々です。それらは繁栄の神であり、同時に戦の神でした。聞いて下さいと願って、人身御供さえ差し出すのが偶像崇拝です。利益のためなら、一人や二人が過労で倒れてもいいじゃあないか。そんな奴は早く淘汰された方がいいという考えです。ひたすら経済的繁栄を求め、繁栄を力で支えるために軍事力に頼る王や指導者に、預言者たちは、「他の神々に従うな、主なる神のみを礼拝せよ。悪の道から離れよ、行ないを正せ」と説いたのです。

  いつの時代も、このような言葉を語るのは、真の預言者しかいないかも知れません。こういう預言者こそ、歴史を前進させるのです。「進める責任。東京を前へ」というポスターが今もあちこち街角に貼られています。不都合に目をつぶり、前に前にと無理に前進させる所に今日社会の病根があります。


         (完)

                                     2017年7月23日



                                     板橋大山教会  上垣勝



  ホームページは、 http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/

  教会への道順は http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/img/ItabashiOyamaChurchMap.gif


                               ・