愛されていると美しくなる


     オックスフォードのアシュモリアン博物館の創立は1683年。大学博物館として世界一のコレクション。
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                                      富める青年 (下)
                                      マルコ10章17-22節



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  彼はイエスの言葉に、「気を落とし、悲しみながら立ち去った。たくさんの財産を持っていたからである」とあります。財産とあるのは、元は「勝ち取ったもの」という意味で、資産や不動産を指します。

  気を落とし、顔を曇らせて立ち去ったのです。ここが運命の分かれ道でした。だが、もしここで彼が踏み留まって、イエス様に助けを求めるなら、彼の人生に新しい道が開けたでしょう。イエスは、この所で、助けを求めるあり方、自分の破れを認めて救いを求める生き方を求められたのです。

  イエスは色々と細かい事を指示されません。彼の魂に干渉されません。自発的に、「主よ、信なき我を助けたまえ」と告白する時を待たれるのです。既に9章24節に、息子を救って頂こうとやって来た父親が、やがて、「信じます。信仰のない私をお助け下さい」と語って、謙虚にイエスに救いを求めたことが出ています。

  詩編51篇に、「神の求める生けにえは、打ち砕かれた霊。打ち砕かれ、悔いる心を、神よ、あなたは侮られません」とあります。神はいけにえを求められる。だがそれは動物のいけにえでなく、砕かれた心、悔いた心を神に捧げることです。信仰生活において最も大事なのは、打ち砕かれた、悔いた心です。イエスはそれを期待されたのです。詩編34編にも、「主は打ち砕かれた心に近くいまし、悔いる霊を救って下さる」とあります。

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  イエス様は彼が財産家である事を最初から見抜いておられたでしょう。しかし、財産があっても、砕かれて、信なき者を助けたまえの信仰をもって行くなら、彼も永遠の命へと導かれたに違いありません。

  しかし、彼は自分の所に貯めるのみです。富だけでなく、今や救いをも自分の所にかき集めようとして、人に与えないのです。繰り返しますが、イエスは私たちに、私は救いにふさわしくありません。助けて下さい。この言葉を待っておられるのです。

  Aさんが旅立たれました。パスポートも航空券も持たずに、空高く、彼方へと、先に旅立って行かれました。慌ただしく、24日の深夜に布団の上から旅立たれたようです。25日の礼拝に来られなかったのはそのためです。普段、教会から帰る時は、玄関で、それではまた来週にお会いしましょうと言って帰られたのに、今は、誰にも挨拶なしに、平和なお顔をして旅立たれました。

  色んな事情で教会でのお別れは出来ませんでしたが、今日の午後1時半から、戸田の葬祭場で讃美歌を歌い、祈りをしてお見送りしたいと思います。最近は犬猫でも火葬前に読経すると言います。どうして心を込めた別れの一言もなく、私たちの愛するAさんをそのまま火にくべることが出来ましょう。

  Aさんは、私たちの中で一番、「信なき我を助けたまえ」と祈っておられた人の一人だと思っています。自分には何がある、かにがある。何をなした、何を持っている。そうでないが故に、「信なき、我を助けたまえ」とそのまま言えた人だと思います。

  この財産家もAさんのように、「信なき我を助けたまえ」とイエスの前に踏み留まって助けを乞えばよかったのです。そうすればAさんのように喜びの内に永遠の命に与ったでしょう。

  女性の事はよく分かりませんが、女性は美しくなりたいと、美しくなって注目されたいという願望を持っておられますか。どうでしょう。

  あるカトリックの神父さんがそんな事を書いて、「注目を引くために身を飾ることが必要であると考え、その様にする人は、神は私たちが美しいから愛して下さるのでなく、私たちは愛されているから美しくなるのだということが分からない」と語っておられます。含蓄があります。愛されていると美しくなる。愛されている、その平和な思いがその人を美しくするのです。

  何かをしたら永遠の命を獲得できるのでなく、私たちは何もなく、信仰も貧弱なのに、信なき我を助けて下さるのです。それを知る時、永遠の命が手元に来ているのです。すると気を落とさず、悲しまず、心を高く挙げてキリストのために賛美を捧げたくなるのです。キリストは本当に素晴らしい方だと語りたくなるのです。

       (完)

                                   2017年7月2日



                                   板橋大山教会  上垣勝



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