君のガリラヤで会おう


                          イギリスでは列車とバスで回りました
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                                       新しい始まりに向かおう (下)
                                       マルコ16章1-8節

                                (3)
  イエスに出会うとすれば、そこは夢のような世界、複雑な問題も全く解決したパラダイスのような世界でしょうか。いや、弟子たちの時代、ガリラヤには問題が無数に渦巻いていました。そこはローマの権力が常に住民の生活を脅かしていましたし、貧困が人々を襲い、病気があちこちに蔓延し、色々な差別もありました。だがそのような場でイエスは私たちを待っておられるのです。

  私は成田から飛び立った飛行機の中で、この1月の北支区信徒大会で話された、岩手県の二戸教会に属するSさんという酪農家の文章を読んでいました。補足しながら紹介しますとこうありました。

  戦後の1958年頃、岩手県の奥中山の開拓に入植した無教会のクリスチャンで、酪農で2~30頭の牛を飼って、初期の頃は健全な経営をしていた方が、息子さんが成長して酪農を継ぐ頃から農協主導になりました。農協がバラ色の経営計画を出し、1年で1千万円の利益が上がるという。すると息子さんは乗り気になって、父の頭は古いと激論を交わして、遂に父親は将来を考えて息子に酪農経営を委ねました。

  農協から指示されたマニュアルで、朝早くから夜遅くまで、将来を夢見て懸命に働いたのです。ところが毎年赤字で、5、6年で倒産したそうです。だが誰が責任を取るのか。生産者なのです。農協は責任を取らない。昔の地主と小作人制度と何も変わらないと書いておられました。搾取する者と搾取される者。ここに歴然として差があると言うのです。

  次にブロイラーのニワトリを飼う養鶏家ですが、農業にも商社が入って来ているようで、希望者には土地も建物も用意し、資金の調達も一切しますと言って、ひよこを1度に沢山入れて、工場のような建物に2万羽ほどを飼育します。中に入ると薄暗い。餌の効率を上げるために出来るだけ動かさず、静かにさせて、水はすぐ側にあり、餌も自動で与えられ、喉が乾けば飲み、お腹が空けば首を伸ばせば食べられます。そうして密集して飼っているのです。私は10数年前に福井で経験しましたが、こう言う鶏舎はもの凄く臭いです。ニワトリが風邪を引かないように大量に抗生物質やビタミン剤を投入するからです。環境の劣悪な所で、ブラジルから来た夫婦が雇われて社長からパワハラを受けていて、私に助けを求めて来たのです。

  Aさんが紹介したのはそういう社長ではありません。ただ、出荷は僅か50日です。昔は70日や80日でしたが、今は高タンパク高脂肪の餌で僅か50日で出荷する。肉なんて締まっていない。出荷時の鶏の鳴き声は、「ピヨ、ピヨ」だそうです。体はデカイが未だヒヨコです。消費者から言えば肉はまだ締まっていないものを食べさせられているのだそうです。

  生産者はオーナーと呼ばれますが、ここでも商社の言いなりで、こうしなさい、ああしなさいと、酪農をした事のない人間からパソコンのデータを見ながら指示され、その通りやって、何か事が起きると責任は生産者。それが日本の酪農現場で起こっている事だと、岩手の酪農家自身が語っておられたのです。

  ガリラヤです。これがガリラヤです。これが現代社会のガリラヤです。国は商社や大資本の利益を優先して自営業者や小資本の者のことはかまわないのです。圧倒的に経済的に優位な組織が一般の農民や人々を苦しめている。農業関係だけでなく、ここにおられるBさんのような小企業も同じように苦しめていると思います。それが今の政治家がしている事です。

  しかしそういう中で、この方は幾人かのキリスト者の酪農家を紹介していました。酪農をする中でキリスト教になり、経営方針を変えた人たちです。大規模で高利益を約束する経営から、小規模で安全な酪農を目指すのです。そうすると不思議ですが黒字になり、何人かの酪農家の所には全国から見学者が絶えないのだそうです。夢のような話です。だがこれが現に起こっているのです。

  イエスは今もガリラヤで出会えるのです。ガリラヤでこそ出会えるのです。経済的な力が人々の上に猛威を奮っている。そこで復活の主は人々に出会ってその生き方を変えて行かれるのです。イエスを信じて、堅く動かされず、生き方を変えられた時に、夢のような現実が起こって、彼らは復活の証人になって行ったのです。

  使徒言行録に出て来るペトロや他の弟子たち、また最初の殉教者になったステファノやパウロといった人物は、みな彼らのガリラヤで復活のイエスに出会って、その証人になった人たちです。私たちも自分のガリラヤで、復活のイエスに会うために出掛けたいと思います。

     (完)


                                   2017年6月18日

                                   板橋大山教会  上垣勝



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