初代教会の力


                              アヴィニヨン
                                ・



                                         父親としての諭し
                                         Ⅰコリント4章14-21節



                               (2)
  その様に語って彼は、次に、「そこで、あなたがたに勧めます。わたしに倣う者になりなさい」と語ります。また、私に倣う者になるために、テモテをそちらに遣わしたのです。「彼は、わたしの愛する子で、主において忠実な者であり、至るところのすべての教会でわたしが教えているとおりに、キリスト・イエスに結ばれたわたしの生き方を、あなたがたに思い起こさせることでしょう。」

  「あなた方に勧める」のは、あなた方を今も諦めていないからです。あなた方がキリストを仰いで、私と同じように生きれば、今でも遅くないと思うからです。

  パウロの偉大さは、聖書の教えを教えただけではなく、地中海を何千キロに渡って旅し、内陸部に入って教えを宣べ伝えただけでなく、私に倣う者になりなさいと、キリストにあっての生き方を、自分の生き方で説いた所にあります。

  学ぶは真似る事から始まります。子どもは模倣によって育ちます。素直さが大事です。中国の方は今日奏楽のAさんにしても、何故と思う程素直です。それが伸びる力になっているのでしょう。日本の子どもはこうはいきません。パウロの場合、言葉が生活になり、生活が言葉になって伝道したのです。彼にとって信仰は、キリストにある修道の道でもあったと思います。そのため彼はわざわざ愛弟子のテモテをコリントに遣わし、パウロのキリストにある生き方を教えようとしたのです。

  初代教会はこの点で今日より遥かに優れています。生き方にまでなって来ない福音は、福音でなく、信仰でないと言いたいのです。火が燃えれば必ず熱を発します。熱を発しない火がないように、生き方にならないキリスト信仰はないのです。また、私に倣いなさいという限り、教える者自身がキリストに導かれ、慰められ、砕かれ、正されていなければなりません。

                               (3)
  そして最後に、「わたしがもう一度あなたがたのところへ行くようなことはないと見て、高ぶっている者がいるそうです。しかし、主の御心であれば、すぐにでもあなたがたのところに行こう」と語って、「高ぶっている人たちの、言葉ではなく力を見せてもらおう。神の国は言葉ではなく力にあるのですから」と言っています。

  彼は、手を変え品を変えて説得します。まだまだパウロに反抗する人がいたのでしょう。その人たちに、「言葉でなく力を見せてもらいたい。神の国は言葉ではなく力である」と語ったのです。

  信仰を実際にどう生きているかを見せてもらおう。キリストを慕っている人間なのか、現実生活でキリストに救われ、慰められ、救いの喜びを持って生きているのか。もしまだそれが出来ていないのなら、少なくとも謙虚になって道を心から求めて欲しい。洗礼を受けても一生求道的であってよい。また核心を捉えていないなら、何とかして救いに達しようと、求め続ける。それが洗礼を受けた者の姿勢である。信仰は口先でなく、ダイナミックに生きて働く神の力である。その力を見せてもらいたい。これも、父親が愛する子どもを諭すように愛を込めて言う事です。

  力です。

  度々、石神井川ウオーキングの話をしますが、この間、川べりを歩いていて、太くなった桜や欅の木などが川の頑丈な鉄柵を押して、あちこちで鉄柵が相当曲がっています。鉄柵も負けじと頑張って、鉄柵が太い幹を深くえぐり、幹に鉄柵が食い込んでいます。ある意味で、静かな川辺で壮絶な闘いをしているのです。10年後か、20年後か、そのうち木の力が太い鉄柵を押しつぶすでしょう。時間の問題です。木は生きているので必ず鉄柵をねじ伏せる力を持ちます。

  神の国を信じる信仰も言葉でなく、力にある。ここにキリスト教信仰に対する偉大な喝破があります。「高ぶる」とあるのは、膨れ上がることです。実際の力より大きく膨張する。しかし膨れ上がった高ぶりから生まれるのは、空疎な言葉です。内容のない言葉が空を舞います。そういう言葉でなく、み言葉から生まれる信仰と義、愛と命に満ちた力、実のなる力を見せてほしい。パウロはガラテヤ書で、御霊の実は愛、喜び、平和、寛容、親切、慈愛、柔和、節制と語りますが、神の国への信仰は、このような素晴らしい力を着実に生み出すものだとパウロは見るのです。


      (完)

                                     2017年5月21日



  ホームページは、 http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/

  教会への道順は http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/img/ItabashiOyamaChurchMap.gif


                               ・