墓前礼拝
インターネット予約した芝居のチケットが余ったので譲りますとアヴィニヨンの本部前で掲示したら買い手がつきました。
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墓前礼拝
詩編133編1節
2017年5月14日(日)
武蔵野霊園・教会墓地
(1)
「見よ、兄弟が共に座っている。なんという恵み、なんという喜び。」
風かおる5月、秩父にある素晴らしいこの場所で今年も墓前礼拝をすることが出来て嬉しく思います。今お読み頂いた詩編は、見出しに、「都に上る歌」とありました。この歌はエルサレムを目指してユダヤやガリラヤ、あるいは遠く外国からエルサレムの都に巡礼に来た人たちが、道中、都を慕って歌った歌です。
ただ、私たちキリスト者がこの歌を歌いながら巡礼をするなら、単に地上の都エルサレムだけでなく、地上を越えて遥かなる神の国、天の国を仰ぎ見て、「見よ、兄弟が共に座っている。なんという恵み、なんという喜び」と歌いながら巡礼するだろうと思います。
兄弟姉妹が互いに和合して共に座っている。なんという恵み、いかに麗しく楽しいことか。兄弟の和合はこの上ない恵みだと言うことですが、地上では、兄弟でも意見の違いや衝突があったり、反りが合わないという場合もあります。必ずしもずっと仲良しでなく、くっついたり離れたりしている兄弟や姉妹もあります。だが天の国では、まさに「兄弟が相和して共に座っている。」それは何という恵み、何という幸せ、何という喜びであろうか。天国においては、キリストにおいて既にこの事がリアルに成就している。永遠の相の下で実現している。そのことを仰ぎ望むと共に、遥かに予感させる歌です。
「大切なものは目に見えない。心で見なくちゃあ、大切なものは見えない。」これは今なお愛読者が多い、サン・テクジュベリの「星の王子さま」に出て来る言葉ですが、神の国、そして神様は目に見えません。一番大切なものは目に見えないのです。心で見なくちゃあ見えないのです。そしてそれに目を留めなくっちゃあならないのです。今から三千年前の巡礼者たちも、心で見なければ見えない一番大切なものを遥かに仰ぎ見て巡礼の旅をしたのです。
私たちが今、墓前礼拝をしているのも、これも神の国を仰ぎながら一種の巡礼の旅をしている事だと言ってもいいでしょう。
(2)
ところで、なぜ教会は墓地を持つのでしょう。信仰の本質からすれば、復活を信じるだけで十分ではないでしょうか。地上に何ら証拠を残さなくても、主が私たちを受け入れて下さったのだから、地上の墓地は不要ではないでしょうか。これは一理ある考えです。
しかし、それにも拘わらず教会が墓地を持つのはなぜか。それは、ここにお骨を納め、名を刻むのは、例えばいつか将来の話ですが、上垣勝という信仰をもって召された者がここに眠ること、神の愛と救いを信じて生きた者の信仰の告白としてこの場所に納骨し、名を刻むのです。また信仰を持たなかったが、この大山教会のお墓でしっかりとお守りしたい人の名をも刻むのです。
後世において身内の者がここに墓参に来てくれるかどうかは関係ありません。来てくれれば有り難いですが、たとえ来る身内が一人もなくてもいいのです。キリスト教徒の少ないこの国またこの時代に、この人たちはキリストを信じて生きた者であると言う事の証しです。墓がその証となります。千年後の人がこの墓を見て、昔、西暦2千年前後のあの時代に、こう言う名のキリスト者がいたというれっきとした証拠になるでしょう。私の子ども、孫、曾孫がここに来て参ってくれなくても、私の信仰の告白として、何々家にはこう言う人間が百年前にいた、五百年前にいたという告白をここに残すのです。名前を刻み、また納骨するのは、地上でのわが最後の証しとして行なうのです。
また、教会墓地には実に多様な人が納骨されています。個性は皆異なります。経済的に豊かな者も貧しい者もいます。仕事も学歴も違い、独身者も既婚者もあり、健康な人生を送った人も長年病と戦う人生を送った人もいます。人生の前半は苦しかったが、後半になって幸福を得た人もあります。血肉を越えて色々多種多様な人たちが同じ所に合い和して納骨されている訳で、これは神の、キリストの慈愛の大きさ、広さ、豊かさ、偉大さを証ししています。地球大に広がり、時間的には何千年にも広がる大きな神の家族の一員であるという証をするのです。そして、この神の豊かさ、偉大さを、私たちが証ししないで誰が証しするでしょう。何々家でたった独りのキリスト者であるかも知れません。それで結構。その事を証しする事が大事であります。そのためにここに名を刻み、また納骨するのです。
それでは祈りと賛美の後、私たちより一足前にこの証をしてここに名を刻み、納骨しておられる方々を覚えてお参りしましょう。
(完)
板橋大山教会 上垣 勝
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