災いを恐れない


                           知人のドイツ人親子
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                                           災いを恐れない (下)
                                           詩編23篇4節
                                           ヨハネ12章46節


                              (3)
  最後に、ヨハネ福音書12章からも、「わたしを信じる者が、だれも暗闇の中にとどまることのないように、わたしは光として世に来た」というイエスの言葉をお読み頂きました。

  ここにも、私たちへのキリストの愛の配慮が記されています。真の闇の中では、闇の深さが一体どの位かさえ分かりませんが、希望をすっかり奪い取る闇の中にキリストを信じる者が閉じ込められ、そこに留まることがないように、「わたしは光として世に来た」と言われたのです。これ以上に、私たちへの愛のお言葉はないと思います。この方を信じるなら不安は不必要であり、イエスは光としてあなたの所に来ているのです。

  今、日本社会はどこへ向かっているのでしょう。戦前の暗さの再来を予期させることがどんどん進んでいます。今国会で審議中の共謀罪の法案が通れば、戦前の息詰まる社会が来そうです。共謀罪というのは何を指して共謀と言うのかさえ見えて来ません。その時の政府の一存で恣意的に決まりかねません。罪がなくても、これは共謀だと官憲が判断すればそうなってしまう恐れがあるのです。

  戦前の国民総動員法や治安維持法は、当初は色々隠していましたが、何かを契機に恐ろしい法律に豹変して国民を縛りました。そんな本質を今審議中の法律は持っています。驚くのは、治安維持法が審議された時に当時の政府が答弁した答えと、今、共謀罪で政府が答えている言葉や内容が酷似して来ました。知人やご近所が密告者になり、家族の中にさえ密告者を出す可能性があります。これは人々に希望を与えず、社会を疑心暗鬼に陥れる法です。社会の屋台骨を危うくする法です。

  低賃金、長時間労働をやめさせようとしても、その動きは、国家の方針の転覆を謀る者と考えれば、共謀罪が適用されるでしょう。すると労働環境を変えようとする正しい動きも萎んで行き、労働者は国家の奴隷のようになります。国民を国家の僕として仕えさせ、一旦事が起これば国家のために潔く死ぬのが国民の務めだと教えたのが教育勅語ですが、その方向への発進です。一旦否定された戦前の教育勅語さえ、学校で子どもに唱えさせてもいいというのが、今の政府の考えです。極めて危険な考えで、これこそ危険思想です。

  取り締まり強化より、相互信頼を作りだすことが最も社会を安定させる道です。

  怖い、暗い話をしました。だがイエスは、「わたしを信じる者が、だれも暗闇の中にとどまることのないように、わたしは光として世に来た」と言われるのです。イエスは必ず出口を示されるでしょうし、いかに陰険な時代を来させる者たちがいようと、必ず個々人に光を灯されるでしょう。希望を与えられるでしょう。

  東京湾をはじめ、大きな港には必ず水先案内人がいます。なぜ広い港に水先案内人が必要でしょうか。それは、東京湾にもあちこちに浅瀬や岩や、水面下の障害物があるからです。それに衝突すれば船底に穴があいたり、座礁したります。霧がかかったり、雨の日は特に注意が要ります。しかし、水先案内人がいれば、夜も船を動かすことが出来ます。水先案内人はどう船を導くのでしょう。

  導灯という言葉をご存知でしょうか。導く、灯と書きます。高さの違うAとBの灯が、一直線になる道を進めば、そこには障害物がないと分かっていれば、どの船も安全に進めます。浜には灯台があり、色々な信号となる明かりや標識があります。あれらがあるので水先案内人は安全に港に導けるのです。

  キリストはいわば、人類を安全に導く導灯です。「わたしを信じる者が、だれも暗闇の中にとどまることのないように、わたしは光として世に来た。」このお方に従うなら、子どもも大人も、正しい航路を辿って安全に母港に帰って来る事が出来るでしょう。

  「死の陰の谷を行くときも、わたしは災いを恐れない。あなたがわたしと共にいてくださる。」このみ言葉が、次の4カ月間、皆さんの導灯になるようにお祈り致します。

      (完)

                                         2017年4月23日



                                         板橋大山教会 上垣 勝



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