群衆の歓声に沈黙するイエス


議事堂のトップは9階、真ん中の5つの窓は8階で、ダンスホールです。その下の長い柱部分は吹き抜け部分。
                                ・


                                           子ロバを用いる (下)
                                           マルコ11章1-11節



                               (3)
  最後に、イエスが子ロバに乗ってエルサレムに入城された時、前を行く者も後ろに従う者も、「ホサナ。主の名によって来られる方に、祝福があるように。 我らの父ダビデの来るべき国に、祝福があるように。いと高きところにホサナ」と叫んだとありました。

  「ホサナ」とは、元々は、「今救い給え」という意味ですが、やがてそこから「栄光あれ」とか、「万歳」とい言う意味になったようです。

  人々は子ロバに乗って入城するイエスを見て、ゼカリヤ書9章9節を思い出したのでしょう。そこに、「娘シオンよ、大いに踊れ。娘エルサレムよ、歓呼の声をあげよ。見よ、あなたの王が来る。彼は神に従い、勝利を与えられた者、高ぶることなく、ろばに乗って来る、雌ろばの子であるろばに乗って」とあるからです。

  娘シオンとはエルサレムの別名です。あなたの王が来る。ロバに乗って、雌ロバの子、即ち子ロバに乗ってと預言されています。過越しの祭りで国内からも海外からも大勢集まって、ごった返したエルサレムに、2~300年前に語られた預言者ゼカリヤの預言通りに入城した者があったのです。彼らは喜び勇んで、今や世界の終末に現われる政治的な王的メシアが登場したと思ったのでしょう。まず最初に一人の者がイエスの姿を見てそう叫び、続いて誰かもそう叫んだ。それが段々エスカレートして多くの者が叫んで歓呼して迎え始めたのでしょう。木の枝を切って来て道に敷いて歓迎する者たちもあった。

  国会議事堂に行きますと赤い絨毯が敷かれていますが、あのコンパクトに見える議事堂内に4.6キロに及ぶ絨毯が敷き詰められているようです。その絨毯を踏むのを目指す者たちがあり、絨毯メーカーはあそこに納めるのが名誉なようです。緑の木の葉は絨毯代わりです。歓迎の道です。この日、エルサレムは騒然となったでしょう。

  しかし、イエスは群衆の歓呼に一言も応えておられません。沈黙したまま入場されました。ご自身はこの世の王的メシアや政治的メシアとして来られたのではないからです。彼らはイエスの姿を誤認したのです。彼らはこの方の姿を肉眼で見たでしょう。手を合わす者もいたかも知れません。それでも、自分たちは誰を相手にしているのか、分かっていません。その証拠に、やがて金曜日には祭司長や長老たちに扇動されて、群衆の大半は掌を返したように、「十字架に付けよ」と叫んで、総督ピラトに迫ったからです。

  しかし、イエスは、彼を遣わされたお方、彼が由来された根源である神の恵みに基づいて来られたのであって、政治的メシアでも王的メシアとしてでもなく、全人類に罪の赦しの福音と救いを授けるために来られたのです。「あなたは私の愛する子。私の心に適う者」と、洗礼の時にお聞きになった神の恵みの言葉に基づいて、その使命を果たすために来られたのです。

  これが低い子ロバの背に乗る方、身を低くして小さい者と共におられる方、人に仕える方、十字架の上に上って、「わが神、我が神、何故にお見捨てになるのですか」と本当は私たちが叫ばなければならない叫びを、代わって叫んで下さるお方、私たちの罪と汚れをすべて背負って私に代わって神に捨てられるために来られた方です。このお方こそ私の主、私のメシア、キリストだと知る。これが聖書が告げる福音です。そこに喜びと祝福の泉が湧き出ています。ゼカリヤの「あなたの王が来られる」という預言は、彼の意図を越えた「私たちの王」、「私の王」が来られることを告げています。

  これが棕櫚の主日に、私たちが覚えているメシア、キリストであり、やがて最後の日に再び来られるお方です。


       (完)

                                         2017年4月9日



                                         板橋大山教会 上垣 勝




  ホームページは、 http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/

  教会への道順は http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/img/ItabashiOyamaChurchMap.gif



                               ・