母を探し出し、天に連れて行きたい
オーランジュのバザール 右端クリックで拡大
・
あなたの中の光（下）
マタイ６章２２－２３節
（２）
私たちの一番古い教会員でＡさんという方が、９６歳で３週間ほど前に亡くなられたことを、亡くなられてからお聞きしました。町屋新生伝道所を開拓伝道する時に、ここから向こうに移られた方です。
Ａさんは若い頃に結核を患っておられましたが、中野療養所時代に６人部屋の３人の方を信仰に導かれた方です。６人部屋の４人がクリスチャンになったのです。地味な方ですがそういう信仰に生きた方です。そして長く４人で毎日祈り続けたのです。修道院みたいですね。この教会はそういう人たちの信仰の礎の上に立っていると言っていいでしょう。
Ａさんが導かれた一人の方は、余命６カ月と言われる中で洗礼を受けたまだ２０代の方ですが、最期の息を引き取る時、「天の神様、助けて下さい」と言って召されたそうです。イエスの十字架上の祈りを思い出せます。Ａさんの方もまだ２７、８でした。もう一人の方は、Ａさんが「イエス様は一緒ですよ」と呼びかける中で息を引き取られました。この方も若い方で、２０代で信仰に入った方です。肉親も出入り禁止の病室で、信仰の友たちが互いに手を堅く握り合って息を引き取ったのです。
もうお一人、Ａさんより年上のＢさんという方も洗礼を受け、退院後この教会のメンバーになられました。そして１０数年後に召されました。
Ｂさんが召される少し前に、大塩先生が訪ねられたそうです。そしてＢ姉妹のためにお祈りしようとされたのです。そしたらＢさんが、「私のためでなく母のためにお祈りして下さい」と言われたそうで、「どうしてですか」と聞きますと、「母は信仰も何の確信も持たずに亡くなりました。今頃、どこかでウロウロとさ迷っているのでないかと思うと悔やまれます。それで、自分が天に行く時に、母を探し出して、ウロウロさ迷っていた母の手を取って、天に連れて行きたい」と言われたそうです。
何という親思い、親孝行な方でしょう。青年ですが、信仰が血肉となって地に足がついています。こんな地に足がついた方々がこの教会の礎となっているのです。これらの方は皆、世の光キリストの光を仰いでおられたのです。肉体は肺病病みでボロボロでいらっしゃいましたが、心の内にはまことの光に来て頂いていたのです。だから人生の夕暮れになっても光があった。太陽が西に沈む日没を迎えても希望の光がこの方々を照らしたのです。
「自分が天に召される時に、母を探し出して、さ迷っている母の手を取って、天に連れて行きたい。」何と澄んだ信仰でしょう。私たちの内なる光は曇っていてはならないのです。むろん、今申し上げているのは、他人の信仰ではありません。人さまのことでなく、自分の中の光が曇っていないか。澄んでいるかを調べなければなりません。そして曇っていれば、キリストにおいで頂き、明るく澄むようにして頂かなければなりません。イエスのみ言葉に導かれるなら、たとえ人生は短く、人一倍重荷を持っている人であっても、悔いのない、素晴らしい生涯を送らせて頂けるのです。
アウグスチヌスという人は、「神の為し給うことは全て愛である」と語っています。
神のこのような愛と真実こそ、私たちの慰めの源に存在します。それは私たちを常に支える土台であり岩盤です。この世で何も確実なものがないように見えても、またどこにも幸福が見出せず、人生に意味があるのかと疑わしくなる時にも、また父も母も死んだり認知症になって、天涯孤独になっても、私たちが戻って行ける所、戻って行けるお方がおられるのです。両手を広げて、喜び迎えて下さるお方がおられるのです。どんな人をも迎えて下さるのです。
ルカ１５章の放蕩息子の物語の父のように、全ての遺産を使い果たして家に戻った放蕩息子をも抱きしめるため、神は、言わば家から駈け出て迎えて下さるのです。父の態度は息子の長い愚かな失敗の生活にも拘らず、少しも変わることはなかったのです。キリストが喜んでおられるのは、ただ、父なる神のもとへ破れたままに帰って来た愛する息子、死んでいたのに生き返った私たちのことです。
（完）
２０１７年２月１９日
板橋大山教会 上垣 勝
ホームページは、 http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/
教会への道順は http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/img/ItabashiOyamaChurchMap.gif
・
