土を耕すのが人間


                         リヨン美術館(33)         右端クリックで拡大
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                                                神の愚かさ (上)
                                                Ⅰコリント1章18‐25節



                              (1)
  「十字架の言葉は、滅んでいく者にとっては愚かなものですが、わたしたち救われる者には神の力です」とありました。「十字架の言葉」とは、十字架の出来事が語る言葉、十字架を中心にしたイエスの福音のことです。ですからキリスト教の中心的な教えです。それは「滅んでいく者」にはナンセンスである。馬鹿げていて、何の意味もないというのです。だが、救われる者には「神の力」、驚くべき神の力だと語ります。

  「滅んでいく者」とは、何かの理由で衰弱し、没落し、落ちぶれて行く者を指すのではありません。むしろますます意気盛ん、羽振り良くて上昇気流に乗って栄えているかも知れない。見た目には分からす、本人も気づきかない。だが既に滅びのプロセスにある者です。神の手を払いのけ、神を否定して、だが繁栄してほくそ笑んでいる。そこに前兆があります。神を否定してもうまく行くので、天狗になっている所に兆しがあります。その傲慢が滅びの徴です。知力も財力も能力も人並み以上で自惚れている。

  彼らには、十字架の言葉は実に愚かで、チャンチャラおかしい。だが、キリストの救いを経験した者には、神の力、驚くべき威力ある神の力だと言うのです。それは私たち小さい者にも希望を与え、慰めを授け、勇気を注ぐダイナミックな力だからです。それは重荷を負う者、悲しむ者、罪から足を洗えず苦しむ者、その他多くの人に新しい道を切り拓く力です。

  「滅んでいく」とは、単なる死ではありません。最後的に無になること、虚無に飲み込まれ、全く無意味になることです。「こう書いてあるからです。『わたしは知恵ある者の知恵を滅ぼし、賢い者の賢さを意味のないものにする』」ともありました。

  この言葉は人によっては痛快でしょう。賢さを鼻に掛ける者に対して胸がスッとする、気持ちいい言葉でしょう。大きな声では言えないでしょうが、ぜひ奴だけは居なくなって欲しい、言いにくいが滅べばいい、その活動が意味のないものになればいいと心で思って、思わずニヤッとするかも知れません。だが、そんな高慢な思いを勧めていません。たとえ下積みで報われない生活を長年強いられていても、です。ただ神の正しい公平な、断固たる裁きがあると語ります。

  次に20節、「知恵のある人はどこにいる。学者はどこにいる。この世の論客はどこにいる。神は世の知恵を愚かなものにされたではないか。 世は自分の知恵で神を知ることができませんでした」とありました。

  知恵のある者とは当時の哲学者を指します。学者とは専門家、何かのエキスパートです。論客は巧みに言葉を操る論客オピニオン・リーダー。彼らが全てというのは間違いでしょうが、人を高飛車にやっつけ少しも他の意見に耳を傾けない。自説を曲げず謙虚さを持たない。祭司長や律法学者、また長老たちはそういう種類の人間だったかも知れませんが、「知恵のある人、学者、論客」とあるのは、もっと上を行く人たちを指しているかも知れません。

  余談になりますが、最近私たちの体の新しい臓器が発見されました。今頃になってと驚きました。科学がこれだけ進み、臓器は何と何と何だと最終的に確定していると思っていましたが、未発見の臓器があったのです。腹部にあって、働きはまだ解明されていないと、向こうの新聞に書かれていました。

  またこれはテレビの知識ですが、卵アレルギーとか小麦アレルギーとか色々ありますが、最近の研究では、アレルギーにならないように避けていると一層アレルギーになることが分かって来たようです。これ迄はそのアレルギーの原因を避けることでアレルギーを改善して来たが、どうも反対らしい。例えばブタを飼うとか農作業するとか、言わば多くの雑菌に触れる方が良いらしい。それらを避け、清潔な場所にだけ身を置いていると悪化させるというのです。これもこれまでの通説の逆です。人間はロボットと違い、やはり土のチリから造られ、土から離れては生き得ず、土を耕すように神に造られているのでないかと思います。

  学問と言うのは10年ほど経つと古くなります。50年すればほぼ使い物になりません。現代科学と言えどいまだ道半ばです。そんな不確かな土台に乗っているのに、これが絶対真理のように断言するのは本来おかしいですが、謙虚になれず、私たちはどうしてもそう断言し勝ちです。

     (つづく)

                                            2017年1月8日



                                            板橋大山教会 上垣 勝




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