言(ことば)の内に命がある


                         リヨン美術館で(27)         右端クリックで拡大
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                                               人類を照らすまことの光 (上)
                                               ヨハネ1章1ー14節



                              (1)
  クリスマスおめでとうございます。クリスマスの時期は、教会の暦ではもう新年が始まっていますが、次の1年人類にまことの光が、平和と信頼と正義の希望の光が輝くように祈ります。特に内戦や難民で、また災害などで非常に苦労している方々に神の支えが与えられるようにお祈りします。

  今年はクリスマスに、ヨハネ福音書を取り上げましたが、ここをお読み頂いてどこにも博士も羊飼いも天使もなく、イエスの誕生の具体的なシーンはありません。表現の仕方には色々ありますが、この福音書は具体的描写でなくイエスという方の本質を詩的な言葉で語るのです。

  この福音書では、意識しなければ気づかない仕方でイエスの誕生が語られます。それが14節です。「言は肉となって、わたしたちの間に宿られた。わたしたちはその栄光を見た――ベツレヘムの貧しい飼葉桶で見た訳です――。それは父の独り子としての栄光であって、恵みと真理とに満ちていた。」讃美歌の1節のような、詩的な表現でクリスマスのシーンが記されています。

  原文で読むと活き活きした響きや語感、語調があってまさに1篇の詩です。比喩や隠喩などで語られているので分かりにくいですが、分かれば実に味わい深く、キリストの本質が歌われているのです。

  「言(ことば)」とあるのは、ギリシャ語でロゴスと言います。これは万物を貫き、万物を統べ治める理法や理性の事ですが、具体的にはキリストを指しています。

  ですから、「初めに言(ことば)があった」とは、万物を貫き万物を統べ治めるキリストは、世界が創造される前からおられた。万物の初めから、その根源において万物を治める方として既に存在しておられたということです。ですから、「あった」というより、「初めに言がおられた」と訳す方がいいでしょう。このキリストは、「ロゴス・キリスト」とか、「先在のキリスト」と言われる、ベツレヘムに生まれる前から神の前におられたキリストを指します。

  そのキリストである言は、神と共におられ、言ご自身も神であったのです。そして「万物は言によって成った。成ったもので、言によらずに成ったものは何一つなかった」と言われています。

  万物は「言によって成った」とは、ロゴスの愛、キリストの愛により万物は存在したという意味です。万物の存在にはその愛の意志があり、存在するもので神の恵みから漏れるものはないという事を語っています。

  こうして次の4節、5節は、更に重要な事を語ります。「言の内に命があった。命は人間を照らす光であった。」

  この言の内に命があり、その命は人間を照らす光、希望を与える光であったのです。この光は、人間の外側からだけでなく、内から、その存在の内側から命の光となって照らし、人々に希望を授ける光です。

  先日、三田線の有楽町駅で地下鉄を待っていましたら、白い杖を持つ全盲若い女性が乗車口から離れて立っていました。最近ホームの転落事故が多いので用心しておられたのでしょう。お世話しようかとためらっていましたら、普段着の親切な中年の婦人が積極的に手を貸して一緒に乗り込み、混んでいましたが座席を空ける人があり、座らせていました。手を貸して貰った時、全盲の方の心にパッと光が射したように感じました。闇の中に光が輝いたと思いました。光は希望を与え、喜びを与えると思いました。

  ロゴス・キリスト、この言(ことば)の内に存在するのは命であったのです。その命こそ私たちに希望を授け、人を照らす光であったのです。

  要するに私たちが語る希望は、進学や結婚にしても目先だけの浅い所からのものが多いですが、本当の希望は非常に深い所に根差し、そこから希望の光が私たちに届いているということです。物質的なものを遥かに超えた所から来る希望の光です。しかもこの希望の光は、どこか何物か分からない深い所や、得体の知れないものから届くのでなく、先在のキリストというお方。永遠に神と共に実在されるお方の命の光として、私たちの所に達しているのです。これは実に素晴らしいことだと思います。

      (つづく)


                                            2016年12月25日



                                            板橋大山教会 上垣 勝




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