共におられる神


                         リヨン美術館で(26)         右端クリックで拡大
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                                                    共におられる神 (下)
                                                    マタイ1章18‐25節


                              (4)
  ヨセフは、「その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである」と言われたのです。

  先程はヨセフの家系に触れました。しかしその家系に連綿と流れる救いようのない罪の問題は、単にヨセフ個人の家系の事だけを指しません。それはイスラエルの民全体の問題であり、更に人類全体の、表面は取り繕えても救い難く罪に染まった私たち地上の民、その「自分の民を、この子は罪から救うからである」と語ったのです。キリストのご支配される全ての民を罪から救い出すのです。

  自分の家系だけでなく、イスラエルだけでなく全人類に対する壮大な使命です。マリアを迎えることは自分の家系を、イスラエルの民全体を、それだけでなく世界の民の救いにつながる。人類の運命に関わる公けの仕事である。その使命を帯びて、婚約者の胎に子が宿っていると告げられたのです。「この子は自分の民を罪から救うからである。」これはヨセフの新たな決断を促す決定的な言葉になったでしょう。

  「このすべてのことが起こったのは、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった」と記されています。預言者とあるのは預言者イザヤです。「見よ、おとめが身ごもって男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる。」イザヤ書7章の、イエス誕生の約700年前の預言です。インマヌエルは、『神は我々と共におられる』という意味です。

  イエス、この方はインマヌエルと呼ばれる。「神は我々と共におられるという意味である。」神は長い罪に染まった歴史を持つ我ら人類と共におられるのです。人類を決してお捨てにならない。私たちが神と共にいるというより、もっと確かなのは、神が我々と共におられるということです。「神が我々と共におられる。」だから恐れるな、たじろぐな。挫(くじ)けるな。「誰でも重荷を負って苦労している者は、私の所に来なさい。あなた方を休ませてあげよう」と招かれるのです。

  神は信仰者とだけおられるのではありません。未だ神を知らない人も、色々な挫折を味わって来た人も、このイエスこそ、「神は我々と共におられる」と言える方だと語るのです。それらの人にも神の祝福が及んでいるからです。

  聖書が最終的に問題とするのは、罪の人間でした。神が愛し働きかけても、その手を払いのけて応答せず、自分で自分を救おうとして神に背を向け、自己中心的に生きる罪の人間。そして自分の力で手に入る救いを求め、自分を救い得ると考え、救うべきだと考える。大きく世界のためだと語っても、結局の目的は自分自身のためであり、自分を喜ばすことに帰する。

  神が救いの手を延ばされるのは、そのような人間です。自ら救いから失墜してしまった人間、足元の地盤を失い、やがて存在理由さえ怪しくなり、生きる目当てを失って大海の藻くずとなって消えそうになっている人間。その自分の民を救おうとして、「神は我らと共にいます」という御子を送られたのです。旧約聖書はその罪の解決のためにメシアを待望して記されたのです。

  イエス・キリストはこのような人類史に入って来られました。ご自分を私たちの良い所と結びつけられたのではありません。人間の一番醜い所、闇の部分、罪の塊である所に入り込んで、それを解決するために来ることを永遠に決意して下さったのです。それが、クリスマスが指し示す神の永遠の愛であります。

  都会では真っ暗闇を経験することがほぼありませんが、田舎に行くと淋しい暗闇の道がお墓の傍を通っていたりします。そんな所を歩いて通るのは気持ちいいものではありません。

  そんな真っ暗な中で、小さい子どものペチャクチャ話す明るい高い声が近づいて来たのです。そしてポツンと灯る外灯の下に来た時、初めて、お母さんが一緒にいて手を引いている姿が目に入ったのです。この子はだから闇を恐れなかったのです。神が共におられなければ、私たちは闇を恐れ、不安になり、色んなことに手出しできなくなったり、自分の影にさえ驚いたりします。しかし「神は我々と共におられる」のです。安心して呼吸し、穏やかに生きることが出来る。キリストはその事を我々に告げるために来られたのです。


        (完)

                                            2016年12月18日



                                            板橋大山教会 上垣 勝




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