闇に語らせてはならない


                         リヨン美術館で (22)         右端クリックで拡大
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                                                   アドベントの喜び (中)
                                                   フィリピ4章4-9節


                              (1)
  今日の4節も、「主において常に喜びなさい。重ねて言います。喜びなさい」と語ります。

  「喜び」、それは想像以上に大きな力を持っています。私は鉄鋼会社に勤めていた青年時代のある時期、非常に暗い気持ちで過ごしていました。ところが会社の構内でたまたま会った顔見知りの人事課長さんが、「やあ、上垣さん」と声をかけてくれました。その方は、週何日か人工透析を受けながら大企業で課長をするという、当時では考えられないような闘病生活をしながら、しかも周囲の信頼を集め、リーダーシップを発揮していたキリスト者でしたが、その明るい一言がどんなに私を力づけたか知れません。重い病気を持ちながらこの方の顔は輝いていました。内面にきっと戦いがありながら、にこやかな笑顔で生きておられたのでしょう。

  私たちは闇に語らせてはならないのです。闇に耳傾けてはならないのです。闇に語らせてしまうとドンドンと暗く悲観的になり、恐ろしくもなり、消極的になります。むろん現実に闇はあります。だがキリストは死に打ち勝たれたのです。復活されたのです。勝利されたキリストの存在が予期しないほどの喜びへと導きます。

  復活のキリストが実在されることに耳傾けるなら、喜びが起こり、新しい歩みが始まります。恐れが取り去られるのです。詩編に「闇の中でも主は私を見ておられる。夜も光が私を照らし出す」とありますが、本当にそうです。復活のキリストが私たちと共にいれば、闇はもはや闇ではなく、夜も昼のように光を放つのです。

  普段暮らしていると、自分や人について悲観的なしるしが見えたりします。だが自分やその人に、神が果たそうとしておられることを敢えて信じるのです。自分の判断でなくキリストのみ手に委ねて敢えて喜ぶのです。すると悲観が消え、心は軽く、単純になり、思い煩いが退いて行きます。

  キリストに委ねず、自分の知恵で気張って生きると、却って問題は複雑になり、思い煩いが嵩じて闇に襲われ、恐れに飲み込まれてしまう可能性があります。

  パウロは獄中で死の危険に晒されながら、「主において常に喜びなさい。重ねて言います。喜びなさい」と語りました。小説ではありません。小説なら何でも書けますしどうとも脚色出来ます。だが、彼の実人生の中で語っているのです。だから凄いのです。

  主にある喜びです。主においての喜びです。パウロは獄中で言わば血を吐きながらも十字架の主を仰いで、喜びにあふれたに違いありません。やせ我慢ではない。私たちが喜ぶのは、単純に主を喜ぶのです。主がおられるから喜ぶのです。主が解決して下さると信頼して喜ぶのです。この単純な喜びが大事です。

  主を喜ぶ、この単純な主を喜ぶ喜びが私たちの心を広くします。寛大にするのです。穏やかに、また思慮深くもするのです。「あなたがたの広い心がすべての人に知られるようになさい」とあるように導くのです。

  アメリカの人種差別問題は非常に根が深いようで、社会のあちこちで今も不法な取り締まりや制裁や問題が起こり、白人警察官が簡単に黒人容疑者に発砲する事件などが後を断ちません。レイボンというアメリカの黒人女流作家がいるようです。彼女は合衆国で白人を憎みながら育った人です。頭の中に白人への憎悪が煮えたぎっていました。

  ところが何かの際に、昔、高校時代にあったことを思い出すのです。その頃、白人への憎しみのせいで、ある白人生徒が示してくれた友情に気付くことが出来なかった事を振返って書いているのです。「白人が過去に犯した罪や不正の赦しを求めて来るのを待つ代わりに、自分の方こそ自身の憎しみに、そして白人を単に抑圧する側の片割れとしてではなく、1人の人間として見ることが出来ないことに赦しを乞う必要があると気付いた」と記しています。素直で心の柔軟な方だと思います。

  本当の寛大さは、人の欠点を裁きの目で見ていた所から一旦出て、自分の心の中にこそある罪、狭さを発見した時に生まれるのでしょう。これはキリストに砕かれ、キリストを喜ぶ事から生まれる人への心の大きさ、広さともつながります。

      (つづく)


                                            2016年12月11日



                                            板橋大山教会 上垣 勝




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