罪人の連帯の場
リヨン美術館で（１２） 右端クリックで拡大
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キリストと焼き魚 （１）
ルカ２４章３６―４３節
（１）
大山教会は庶民的な教会です。今日は「キリストと焼き魚」という、朝からサンマの臭いがして来るような題でお話致します。
キリスト教には私たちの教会のようにプロテスタント教会とカトリック教会、それにギリシャ正教とも言う東方正教会があります。世界のキリスト教会はすべてこの３つのいずれかに含まれます。
ところで東方正教会では、イースターには、皆が総立ちになり、だいたい東方正教会は伝統的に立って礼拝しますが、「まことに、主は復活された」、「主は復活された」と、３回、司祭と会衆が応答し合うそうです。イースターはキリスト教最大の祭ですから、所によれば数千人が集まり、「まことに、主は復活された」、「主は復活された」と呼応すると、地鳴りのような響きとなって聞こえるようです。
「まことに、主は復活された。」これは、先週の３４節の言葉でしょう。元のギリシャ語は、「まことに、実に、本当に」主は復活されたとなっていて、本当に主の復活が起こったという驚きを伝えています。この「まことに」という小さい言葉に私たちの信仰が掛っています。
ペトロはその事を他の弟子や仲間の者たちに証ししたのです。それは彼の喜びの証しであったでしょう。だがそれと共に、３度自分は主を否んだという痛烈な懺悔の証しでもあったでしょう。それが３３節以下の、「エルサレムに戻って見ると、１１人とその仲間が集まって、本当に主は復活して、シモンに現れたと言っていた」とある内容です。
ペトロは良心の呵責から、主に合わす顔がなかった筈です。だが主はそんな彼に憐れみを掛け、どうしようもない罪人の自分に現われて下さった。赦して下さった。彼はこの時、真にキリストの愛に、十字架で血を流されたキリストの真実な愛に出会ったのです。主の怒りを受けても当然なのに、罪を包んで下さった。「十字架の福音とは、神の当然の怒りの対象を神が愛される事です。神と人との断絶を、神が愛において乗り越え包んで下さる事です。」彼はそれをここで真実に味わったのです。
彼は十字架の福音に触れて、仲間にこう語ったに違いありません。「ここには、私以外にもイエスを見捨てて逃げた方もあるでしょう。汚れちまった自分を責めている人もあるでしょう。だが復活の主は誰も責められません。私たちの罪や弱さをことごとくご自分に負って、赦して下さるのです。さあ、みな罪を告白しましょう。」彼は涙を流して、集まった仲間に呼び掛けたのではないかと思います。
ペトロは、「今もキリストに愛されている」と、涙と共に喜び語りました。すると彼らも、自分こそあの時はこうしてしまった、ああしてしまったと罪を告白し、自分の弱さの為、小心の為、疑い深さの為、自分はつまらない言い訳を持ち出してイエスを見捨てて逃げたのです。遠くから十字架を見ながら、私は怖くてこんな所に隠れました、あんな場所に身を潜めていましたと、涙して正直に話し始めたでしょう。
だがそれらがどんなに可笑しな姿であっても本当の事です。事実です。皆が似たり寄ったり同じような事をしていた訳で、そのうちに泣き笑いが起こり、弱さや愚かさや可笑しな罪の姿を次々語り始めたでしょう。一人が語ると、次の者も自分の本当の弱さを証しし、また次の者も思いがけないとんでもない姿を吐露して、何度も泣き笑いが起こって、その場はキリストを慕う罪人の連帯の場になったに違いありません。罪人の連帯です。
正しい者たち、義人たちの連帯の場が教会ではありません。罪人の連帯です。キリストの恵みを介した罪人の連帯の場。ここに真実な教会の姿があります。義人の教会には互いの裁きがあります。潔白でなければならず、誤魔化しや偽善が起こり易い。だが赦された罪人の教会には笑いがあります。笑ってよいし、笑われてよい。ユーモアがあります。
こうした仲間の姿を見て、エマオからエルサレムに戻った２人の弟子は、自分たちも、絶望的な中で愚かにもイエスの姿が分からなかったことを打ち明けることができたでしょう。まるで先週の愛餐会のインタビューの時のような真実な話が打ち明けられて、泣き笑いに包まれたでしょう。
（つづく）
２０１６年１１月２０日
板橋大山教会 上垣 勝
ホームページは、 http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/
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