良寛さんと詩編に想う


    リヨンは美食と共にマリオネットの町。作りは雑ですが個性的で魅力溢れます。これは喫茶店で。
        丘にあるガダニュ博物館にはマリオネット人形館があり、世界の人形たちが集まっています。
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                                                 鳥のように逃れよ (中)
                                                 詩編11篇1-7節
                                                 Ⅱコリント4章7―10節


                              (2)
  次に4節以下です。「主は聖なる宮にいます。主は天に御座を置かれる。御目は人の子らを見渡し、そのまぶたは人の子らを調べる」と語ります。これは空を掴むような言葉に聞こえます。しかし一言で言うなら、私たちが戦うのではない。天にいまし、聖なる宮にいます主が戦われるのだと言いたいのです。何を寝言を言っているのかと言われそうですが、ダビデはそう語るのです。

  天におられるなら、何者も攻め入ることはできません。どんなに背伸びし、豪語しても主のみ座に達することはできません。これは聖書がおかしいのでなく、日本でも良寛さんが風格はあるが弱い文字で「天上大風(たいふう・おおかぜ)」という書を書いています。大風なら豪快に書けばいいのに真面目な細い字です。私は思います。それはまるで、いかに地上では世間さまを気にして細々生きなければならなくあっても、天上ではいかなる権力もものともせず自由奔放に大風が堂々と吹いているのだ。怯えるな、安心せよと言わんばかりです。こう解釈すると、詩編11篇4節と意味内容が似ていると思います。

  更に、主の「御目は人の子らを見渡し、そのまぶたは人の子らを調べる。」御目は人の心の中まで克明に調べられるのです。また5節は、「主は、主に従う人と逆らう者を調べ、不法を愛する者を憎み逆らう者に災いの火を降らせ、熱風を送り、燃える硫黄をその杯に注がれる。主は正しくいまし、恵みの業を愛し、御顔を心のまっすぐな人に向けてくださる」とあります。日本では煮え湯を飲ませると言いますが、ここでは、「燃える硫黄を杯に注いで飲ませられる」と更に倍する激しさで語られます。反対に、恵みの業を愛し、心の真直ぐな義人に、主はご自身を恵みとしてその盃に注いで下さると言いたいのです。それ以上の誉れはありません。

  いずれにせよ、主はつぶさに調べられるのです。ある本に実際にあった事ですが、娘の誕生の秘密を娘には隠したまま、死の床についている老婦人のことが書かれていました。娘は自分の父だと思っている人の子ではないのです。だがその事を母は誰にも打ち明けられないで来た。だが、老婦人はどうしても誰かに打ち明けなければ死に切れず、余り面識がない著者の精神科医に打ち明けたとありました。そんなことも主はつぶさにご覧になっているでしょう。

  夏目漱石は小さい頃非常に苦労したようです。生後4ヶ月で四谷の古道具屋に里子に出され、1才で別の人の養子になりますが、やがてその夫婦が離婚し漱石は生家に戻されます。だが実父と養父が対立して散々な環境に漱石が置かれ、暗い子ども時代を送ったようです。そのせいか漱石私小説は暗さが付きまといます。その暗さが魅力かも知れませんが、そんな漱石の心の闇も、主はつぶさに見ておられたに違いありません。

  ここで言われるのは、主は人間を見渡し、確かな目を持って主に従う者と逆らう者を厳正に調べ上げられる。両者を混同されないと言うことです。これは、「天網恢々疎にして漏らさず」という中国の言葉で言い表すことが出来るでしょう。天の網は目が粗く大きく作られている。だがその網は重要な何ものをも漏らさず、逃がすことがないと言うことです。神さまの御目も同じで、「主は正しくいまし、恵みの業を愛し、御顔を心のまっすぐな人に向けてくださる」のです。

  ダビデは、私は主を避け所とする。私はあわてない。鳥のように自分の身を案じて軽々と逃げ去らない。主に信頼し、この困難な時代の中で主にのみ従って行くと語るのです。主は心の真直ぐな人にみ顔を向けて下さる、主の判断には誤りはない。一点の曇りもないと信仰を告白するのです。


        (つづく)

                                            2016年10月2日



                                            板橋大山教会 上垣 勝




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