狂わんばかりの所に宝が隠されている


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                                                  足元に宝が隠されている (中)
                                                  マタイ13章44節


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  皆さんもお読みでしょうが、星野富弘さんに、「鈴の鳴る道」という美しい花の詩画集があります。お読みでない方のために少し紹介しますと、星野さんは体育の教師でしたが、授業中に生徒たちの前で首の骨を折って9年ほど入院し、首から下が動かず、絶望の底にあって信仰を得ました。やがて電動車椅子に乗るようになり、退院されました。今も渡良瀬川沿いの東村にお住まいです。

  彼は田舎育ちですからデコボコ道や草が生えた道、曲がりくねった山道が大好きです。ところが電動車椅子ではデコボコ道はガタガタして脳味噌がひっくり返るかと思うほどで乗っておれない。それで車椅子に乗ってから12年ほどは、デコボコ道を避けて通って来たのだそうです。

  ところが、ある時、誰かが小さな銀色の鈴をくれた。でも手が使えないので、せめて車椅子の見える所にとぶら下げてもらいました。

  ある日、道路を走っていたらデコボコ道があったので、ゆっくり慎重に車椅子を操縦して通過しようとしたら、少しデコボコに車輪が乗り上げて、「チリーン」と鳴った。それが心に滲みるような音色だったと言うのです。「いい音だなあ」と思って、もう一回引き返して、デコボコを行ったらまた「チリーン」「チリーン」と小さいがもの凄くいい音色で鳴ってくれた。

  その時、自分は長い間、小石やデコボコ道を避けて来た。道にそんな物があると思うだけで暗い気持ちになった。ところがデコボコ道を通らないと「チリーン」といういい音色を立てて鈴は鳴らないことを知った。それで思った。人は皆、この鈴のようなものを心に授かっているのでないか。「その鈴は整えられた平らな道を歩いていたのでは鳴ることがなく、人生のデコボコ道に差しかかった時に揺れてなる鈴である。…これから私は行く先にある道のデコボコを、なるべく迂回せずに進もうと思う。」素晴らしいです。頭が柔軟です。そこがまた惹かれます。

  足元に宝が隠されているのです。そぐ傍にあるのです。それを、自分の目で発見する。自分が発見しなければ真の喜びに与れません。もし誰かに、デコボコ道を行けばきれいな音がするよ。行ってごらんなさいと言われて、鈴の音を聞いても喜びは半減するでしょう。星野さんは思いがけず自分で発見した。だからもの凄くきれいな鈴に聞こえたし飛び上るほど嬉しかった。一冊の本のタイトルにする程に興奮した。彼は「鈴の鳴る道」という事で、自分が遭遇した過酷な試練は「なぜだ!」という怒り狂わんばかりの場所で、キリストは素晴らしい答を用意して下さっていたと言いたいのでしょう。腑に落ちない、狂わんばかりの所、そこが最も人生で大事です。その破れ口でキリストは出会って下さり、私たちはそこでこれまで聞いたことがない鈴の音を聞くのです。

      (つづく)

                                            2016年9月11日

                                            板橋大山教会 上垣 勝




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