死によって死を滅ぼす


ジュネーブからリヨンに飛びました。レマン湖から流れ出たローヌ川は蛇行し中小の町々を経てリヨンに至ります。
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                                                  み手に委ねます (上)
                                                  ルカ23章44―49節



                              (1)
  今日の個所には、これ迄になかった不思議な事が色々出て来ます。「既に昼の12時ごろであった」とあります。イエスの最期の時が近づいていました。前夜にオリーブ山で逮捕されてから、あちこち裁判で引き回されて慌ただしく経過し、半日以上がたって既に正午を迎えていたのです。実に長い日でした。ある人は「地上で一番長い日」と表現していますが、後世に与えた事柄の重大さから言えばまさにそうです。

  全地は暗くなり3時頃まで続いた。太陽はすっかり光を失ったとありました。原文では太陽が没落し、立ち去ったとあります。

  3時間です。日蝕には多少長い短いがありますが、皆既日蝕でもそれほど長時間ではありませんし、十字架に合わせて皆既日蝕があったとは思えませんが、何か異常な現象が起こったのでしょうか。イエスの死の時を迎えて、まるで自然界さえ悲しみ、生彩を失い、暗闇が全地を覆ったということでしょう。イエスの死を嘆いて、太陽が落胆して萎れ、喪に服したかのようになったというのでしょう。

                              (2)
  すると、やはり異常な現象ですが、突然、「神殿の垂れ幕が真ん中から裂けた。」

  聖所と至聖所を隔てる長い垂れ幕が、上から下まで真っ2つに裂けたのです。神が臨在する聖なる至聖所が万民に開かれ、解放された。普通ならあり得ないことが起こったのです。

  これまで至聖所には、年に一度、贖罪の日に、大祭司だけが、しかも体を清め、自分と民の罪を取り除く動物の血を携えて入りました。大祭司だけです。しかし、今やキリストを通して誰でも、信仰によって神の至聖所に入り、神と交わる道が開かれた、神と出会う喜ばしい道が備えられたという事です。これは、ユダヤ教ではあり得ない、キリスト教を象徴する事件です。

  神社とエルサレム神殿の配置がなぜか似ていると言われます。拝殿と本殿。これは聖所と至聖所です。2体の狛犬や手を洗う洗盤も、エルサレム神殿に2体の獅子が置かれていましたし、祭司たちが手を洗う洗盤がありました。また、例えば伊勢神宮も他の神社と同様、拝殿までは一般人は行けても、本殿には特別な人間以外、一般人が入るのは厳禁です。大罪と言うか、昔なら打ち首です。エルサレム神殿の場合は至聖所には一般祭司も出入りが禁じられ、ただ大祭司だけが年に一回、身を清めてから入れたのです。その他の人間が入れば直ちに石打ちの刑です。ところが、キリストによって、万民が神の至聖所に至る道が開かれ、いかなる者も神と交わることが出来るようにされたという事です。

  ヨハネ14章でイエスは、「わたしを見た者は父を見たのである」と語られました。そのような事が、キリストを信じる者に起ったということです。「神はその独り子どお与えになる程に、世を愛された。それは独り子を信じる者が、一人も滅びないで永遠の命を得るためである」とありますが、この事とも関係していきます。

  別の角度から言えば、イエスは十字架の死によって死を滅ぼし、命の道を開かれたという事です。ヘブライ人への手紙10章19節は、「兄弟たちよ。私たちはイエスの血によって聖所に入れると確信しています。イエスは垂れ幕、つまりご自分の肉を通って、新しい生きた道を開いて下さった」と述べています。イエスの死と至聖所に至る垂れ幕が真っ二つに裂けた出来事は、象徴的に密接に関係しているのです。イエスはご自分の肉を十字架に付けることによって、神に至る道を開いて下さったのです。

  もう一か所あげますと、同じヘブライ人への手紙9章に、「血を流すことなしに罪の赦しはあり得ない」と語られた後、イエスは、「御自身の血によって、ただ一度聖所に入って永遠の贖いを成し遂げられたのです」とあります。 また、「世の終わりにただ一度、御自身をいけにえとして献げて罪を取り去るために、現れてくださいました。」ここにも十字架と罪の贖いの密接な関係が語られています。

  要するに、「私は道であり、真理であり、命である」と言われたことが、イエスの十字架の死によってここに成就し完成したという事です。

          (つづく)

                                           2016年8月7日



                                           板橋大山教会 上垣 勝




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