ボクと同じ天然パーマ？
それでも元気に飛び出しました… 右端クリックで拡大
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犯罪者とイエス （中）
ルカ２３章３９―４３節
（２）
「すると、もう一人の方がたしなめた。」たしなめるというより、黙れ、神妙に覚悟を決めろと強く叱ったのでしょう。犯罪人が犯罪人を正しい道義に照らして叱るというのもおかしいですが、もう一人の犯罪人には、人としてのけじめがあったのでしょう。そして、「お前は神をも恐れないのか、同じ刑罰を受けているのに。 我々は、自分のやったことの報いを受けているのだから、当然だ。しかし、この方は何も悪いことをしていない」と言って咎めた。
彼は、人は誰も怖くなかったのです。だが人間を越えるお方への怖れと畏敬を抱いていたのです。彼が言いたかったのは、「ここに、人間を越えるお方が俺たち犯罪者と共に同じ刑罰を受けて下さっている。俺たちの報いは当然だが、この方は何ら裁かれるべき悪を行なっていらっしゃらない。それにも拘らず我らと共に十字架について下さっているのだ。何というあり得ない出来事だ。メシア・キリストが我らと共にいて下さっている。この事を誰が恐れずにおられよう。感謝し、驚き、喜ばずにおれようか。」
そして彼は、思わず、「イエスよ、あなたの御国においでになるときには、わたしを思い出してください」と言ったのです。彼は一言、一言、言葉を噛みしめながらイエスに願ったでしょう。「イエスよ、あなたの御国においでになるときには、わたしを思い出してください。」心からほとばしり出た美しい祈りと言えます。
まるで彼は、「この愚か者をもみ国で思い出して下さい。いや、過去にこんなに罪を多く重ねて来た、捨てられるべき小さな者などは思い出して頂くに値しない者です。だが、もしみ国においでになる時に、頭のどこか片隅に覚えて下さっていれば何と有り難いことでしょう」と、慎み深く謙遜さに満ちて祈っているかのような言葉です。
彼の地上の生活は全くうまくいかなかったのでしょう。何とか社会と歯車を合わせようと努めたが、最初のボタンを掛け違えた事がたたってか、その後、何をしてもうまくいかず、遂にすっかり行き詰まり、道を外すような事をしでかし、やがてそんな事をしても罪を感じない人間になってしまった。
だが人生の最後に、メシア・キリストが十字架にまで来て下さったのです。彼はイエスを聖なる方として迎え、その前にこうべを垂れて正直になり、素直になったのです。
この後すぐ処刑された彼はこの後のことを知りませんが、彼の祈りはその後、何万という人たちを正直になることへ、単純になってイエスの前に出ることへと向かわせました。「思い出して下さい。」元の言葉では、思い起こす。心に留めるとも訳されます。
話しは飛びますが、８年前にオバマさんが大統領になり、ホワイトハウスの執務室に、ある黒人一家が短時間招かれました。別れ際に両親が、私たちは内容は分からないのですが、子どもが大統領にお尋ねしたいことがあるようなのですと言うと、５才の少年が恥ずかしそうに、小声で何かを呟きました。大統領は「もう一度言ってくれるかい」と優しく聞くと、少年は、「大統領の髪の毛は、本当にボクと同じ天然パーマなんですか」と尋ねたのです。大統領は笑顔で、「君、そうだよ。君と同じだよ」と答えて、「さあ、触ってごらん」と、少年と同じ高さまで長身の大統領が頭を下げたのです。少年はためらいました。でも勧められて、ためらいつつオバマさんの頭に触ったのです。触っただけでなく、頭のてっぺんをポンポンと叩いた。オバマさんが体を起こしざま、「どうだった」と笑顔で聞いた。すると、「本当に、僕の髪の毛と同じだ」と嬉しそうに言ったのです。そこにいた人々は皆、笑い出した。
少年は、自分の願いを大統領が聞いてくれたことを誇りに思い、自分と同じ髪の毛だったことを誇りに思ったのです。
この犯罪者がイエスに願った時、イエスは、「はっきり言っておくが、あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」と言われたのです。彼はこの言葉を深く心に刻んだでしょう。感謝にあふれ、人生の最期に偉大な方に出会ったことを誇りに思い、喜びをもって十字架上で人生の幕を閉じたのです。
（つづく）
２０１６年７月３１日
板橋大山教会 上垣 勝
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