祈りと武蔵
何十年振りかで古里を訪ねレンタサイクルであちこち乗りまわしました。
この川(大津川)の辺りが誰か一人の少年の思い出が一杯詰まった古里の大半だと誰が思うでしょう。
60年後、まさか川向こうにラブホテルが密集することになるとは夢にも思いませんでした。
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行きなれた祈りの道 (上)
ルカ22章39―46節
(1)
今日は棕櫚の主日ですが、どなたかが棕櫚の葉をお持ち下さいました。ありがとうございます。イエスのエルサレム入場を覚えるのが棕櫚の主日で、今週はイエスの受難を覚える受難週ですが、今日は、エルサレム入場から4日後の木曜日の出来事を学びたいと思います。
「イエスがそこを出て、いつものようにオリーブ山に行かれると、弟子たちも従った。いつもの場所に来ると、イエスは弟子たちに、『誘惑に陥らないように祈りなさい』と言われた」とありました。
「いつものようにオリーブ山に」とあるこの山には、ゲッセマネの園と呼ばれるオリーブ畑や油絞りの場所がありました。イエスはエルサレムでは、いつものようにこの静かな場所に祈りに行かれたのでしょう。
イエス様の生涯は祈りの生涯です。行き慣れた祈りの道を持っておられたと言っていいでしょう。欠ける日もあったかも知れませんが、欠けてもまた次の日から祈り始め、祈りを中断するということはありませんでした。
祈りは「アバ、父よ」という言葉で語りかける、父なる神との交わりの時であり、神の命に深く触れ、力を頂き、この世に遣わされた喜びに生き、信頼を持って再び神の意志に沿って進むための日々の原点であったからです。即ちイエスにとっての力の源は祈りにありました。
この意味において、私たちも「行き慣れた祈りの道」を持ちたいと思います。前に申し上げたかも知れませんが、宮本武蔵が「五輪書」の中で鍛錬の鍛と錬を分けてこう書いています。「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす。よくよく吟味あるべきものなり。」鍛は千日、錬は万日の稽古で得たものだというのです。
千日(約3年)の練習を積んで得た動きは、一生の業として身につくのです。百日では起らぬ変化が千日の練習で起こる。だが万日(30年)の単位の練習で得たものは、千日(3年)の練習で得たものを質的に飛躍し越えて行くのです。ですから、何日とか何十日とかの短い鍛錬では真の鍛錬にならぬと言うのです。また鍛錬なき者は、身につかぬ、と言うのです。これは多くのことに妥当します。キリスト教信仰は鍛錬で得るものでありませんが、信仰生活においても、まさに「よくよく吟味あるべし」です。
イエスは鍛錬のために祈りをされたのではありません。神との交わりが喜びであり、それが日々の生きる命を生み出す源であったからです。
祈りに触れたついでに、もう少し申しますと、私たちの祈りが三日坊主になり易いことがありますね。中々長く続かない。三日坊主を何回か経験すると、私たちは祈りをしなくなりがちです。
しかし祈りを長く続けていると、今度はマンネリになります。最近、私は、祈りがマンネリにならないために神さまが時々忙しくて祈れない日を作って下さると思うようになりました。祈れない日も、恵みの内にあります。祈れる日と同様、神の恵みに包まれているのです。途切れてもいい。今日は出来なかったから、自分はダメだと責めるのでなく、出来ない日もあるが、それも含めて神との交わりが深められます。
また、祈れない日があると、翌日はこれまでより祈りの大切さに気づかされます。
また一人で祈る時は、ただイエスの前に静まることも一つの祈りです。沈黙してイエスの前に静まるのです。言葉でうまく祈れず、言葉に出すと思いとかけ離れてしまう。そんな時はただイエスの前に黙って出て静まる。そのようにしてイエスとの交わりを深めることも祈りです。また祈りはどんなにまずくても祈りです。イエス様は聞いて下さる方です。自分は祈りがうまいなんて考えちゃならない。
イエス様は今日の所でまた、「誘惑に陥らないように祈りなさい」と言われました。
イエス様はペトロに、私は、あなたがサタンの誘惑に屈し、「信仰が無くならないように祈った」と32節で語っておられましたが、同じ祈りを私たちのためにも祈って下さっています。イエス様が、私たちの中で祈っておられるから、私たちも「誘惑に陥らないように」祈るのです。私たちの内側で祈っておられるから、イエスの御名をただ呼ぶだけでも、また黙ってイエスの前に座るだけでも、それはイエス様との交わりになり、私たちの心の空虚を喜びで満たすのです。
いずれにせよ、私たちも自分の「行きなれた祈りの道」を作っていきたいと思います。
(つづく)
2016年3月20日
板橋大山教会 上垣 勝
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