そんなことあっちゃならねえ


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                                              人生を何の上に築きますか (上)
                                              ルカ22章24-30節


                              (序)
  先週は今日の24節まで致しまして、最後の晩餐に続いて、裏切りの犯人探しと誰が一番偉いかの議論が起こったことから学びました。そこで気づかされたことは、弟子たちはキリストの恵みに注目していないのです。恵みでなく、人間の比較に目を向け、そこで口角泡を飛ばして誰が上かと論争しているのです。

  私たちは彼らの姿から、人間の罪の頑固さがいかに私たちの中に染み込んでいるかを思わされました。それと共に、その様な論争をし、人を蹴落として一番になろうとする欲の世界に、神の御子がまことの光としておいで下さったことは、何と尊いことかとも思わされました。

  イエスガリラヤで始められたことは、当初はごく小さくからし種のようなものでしたが、2千年の間に、世界に希望を与える大きな木に育ちました。今では、人類に希望があるとすればここにしかないのでないかと思います。

  ただ、その木がどんなに巨大になっても、権力を振り回す木であっては困ります。イエスに真実に聞き従う木でなくてはなりません。

                              (1)
  弟子たちに議論が起こる中で、イエスは、「異邦人の間では、王が民を支配し、民の上に権力を振るう者が守護者と呼ばれている。しかし、あなたがたはそれではいけない。あなたがたの中でいちばん偉い人は、いちばん若い者のようになり、上に立つ人は、仕える者のようになりなさい。食事の席に着く人と 給仕する者とは、どちらが偉いか。食事の席に着く人ではないか。しかし、わたしはあなたがたの中で、いわば給仕する者である」と言われたのは、彼らが真実に従う木になるためであったと言えるでしょう。

  王と民衆、雇い主と使用人、食事する人と給仕する人。2千年前の社会ですから今と多少違いますが、上に立つ者と仕える者の関係は今もほぼ同じです。だがイエスは、「神の国の基準はこの世の基準とは異なる」と言われたのです。今日はこの事を中心に考えましょう。

  先ず、「異邦人の間では、王が民を支配し、民の上に権力を振るう者が守護者と呼ばれている」とありました。異邦人の間ではとあるのは、ローマ帝国内やパレスチナのローマ植民都市で起こっていたことを指したのでしょう。「守護者」とあるのは、恩人とか恩恵者、民衆の友と訳されるギリシャ語です。

  民衆を支配し、彼らの上に強い権力を奮っている者たちが、恩人、恩恵者と呼ばれていると、痛烈な皮肉を語られたのです。イエスは鋭い社会的感覚を持っておられたことの証拠です。社会と人間の本質を見抜いておられるのです。「恩人と呼ばれている。」だが、実際は彼らが権力をもってそう呼ばせているということです。

  日本で言えば、誰それが大臣の時に新幹線を持って来てくれた。原発を誘致してくれたと言って、地元経済の恩人と呼ばれます。しかし中央に影響力がある恩人ですから、何とか事業団に声掛けして便宜を払ったりして、選挙の票を取りつける。信頼感があり潔癖そうに見えましたが、結局大臣を降りました。

  悪名高いネロ皇帝でさえ、「恩人、民衆の友」と呼ばれました。いや、呼ばせたのです。それである英訳聖書は、「彼らは恩人と呼ばれることを要求した」と訳しています。イエスの思いをストレートに訳したのでしょう。

  そこでイエスは、「しかし、あなたがたはそれではいけない」と言われた。イエスが江戸っ子なら、「そんなことあっちゃならねえ」です。今なら、福島原発の手当てが十分出来ていないのに、原発などあっちゃならねえ。自爆テロなんてあっちゃならねえ、でしょう。若者の1/3が正社員でないなんて、不安定な政策を敷いちゃならねえ。年収1億円なんて、率直に言えばあっちゃならねえ。5千万円でも多い。膨大な税金を課すべしです。しかも今、大企業の税率を引き下げようとしている。あっちゃならねえ、です。日本人は穏健ですが、そのうち下克上が起こるでしょう。

  この世の権力は、しばしば守護者、恩人と呼ばせます。ただこれは権力者だけではありません。私たち個々人も関係します。次にこのことについて聖書から考えましょう。

        (つづく)

                                           2016年2月21日



                                           板橋大山教会 上垣 勝



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