アナムネーシスとは想起すること


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                                              そんなことあっちゃならねえ (上)
                                              ルカ22章19-30節
       

                              (1)
  先週は途中で終わりましたので、今日はその続き、19節の半ばのイエスの最後の晩餐のお言葉から学びましょう。

  こうありました。「イエスはパンを取り、感謝の祈りを唱えて、それを裂き、使徒たちに与えて言われた。『これは、あなたがたのために与えられるわたしの体である。わたしの記念としてこのように行いなさい。』」

  イエスはパンを手渡し、これは私の体、私の記念だと言われたのです。記念とはアナムネーシスというギリシャ語です。記念となっていますが、これは想起という言葉で、「私の体を想起するために行ないなさい」と訳すべきです。聖餐式の起源は最後の晩餐にありますが、これは単なる記念の儀式でなく、キリストの磔の恵みの死を想起することです。十字架には色々な意味が重層的に集まっていますが、その恵みを想起するのです。幾ら盛大に儀式的に記念しても、キリストが私たちのために肉を裂き、血を流し、苦しんで下さった恵みの現実をしっかり想起しなければ何にもなりません。

  私たちは聖餐式でパンを頂き、「これはあなた方に与えられるわたしの体である」と心に刻みつけるのです。また知性でも味わうのです。更にパンを口にして、身体全体で、「主の苦しみは我がためなり」とその愛を味わうのです。こうして、イエスの愛を全身で受け止め、教会の一員として世に存在している恵みを味わうのです。

  次に20節は、「食事を終えてから、杯も同じようにして言われた。『この杯は、あなたがたのために流される、わたしの血による新しい契約である。…』」とありました。

  杯も、主が血を流して下さった真実な愛を想起するためです。だがここでは、「わたしの血による新しい契約である」と語られました。

  契約とはギリシャ語で、ディアセーケーと申します。ディアセーケーとは、2つの置かれた物の間を通る、あるいは2人が定めたものの間を通り抜けるという意味です。その意味は、アブラハムの時代にまで遡り、鳩や動物を2つに裂き、その真ん中を通って契約を結んだのです。契約を破れば、その者は2つに裂かれるべきだという厳粛な意味を含む言葉です。確かに日常生活でも約束を破る者は信義にもとります。そういう人間は信用できないとなるでしょう。本来約束は厳粛です。

  イエスはその様な、決して破られることがない厳粛な契約を、磔になって私たちと結んで下さる。それを想起するため杯が回されました。それを飲む者は、血を流して立てられた契約を味わいます。また、罪の赦しと自由、新しい人間へと解き放たれることの約束です。「新しい契約」と言われているのは、古き人、私たちの罪からの新しい出発、人生の新しい出エジプトであるからです。

  血によって立てられたのですから、これ以上に厳粛な契約はありません。これは必ず果たされる遺言だと言っていいでしょう。この遺言に込められたキリストの愛から、何も私たちを引き離すことは出来ません。これを想起する時、先週申しました私たちを励ます「唯一の源泉」となり、私たちに希望を与える秘密兵器となるのです。

  私たちは健忘症でなくても忘れやすく、時間の経過と共に忘れ、ペチャクチャおしゃべりしていると今聞いた説教もすぐ忘れます。だから聖餐において主の体を味わい想起することで、恵みを個人的なものにするのです。

  こういうわけで最後の晩餐や聖餐は、非常に喜ばしい恵み溢れるものです。だからイエスはこの過越の食事を心待ちにし、15節にあったように、弟子たちとすることを切に願っておられたのです。

        (つづく)

                                           2016年2月14日



                                           板橋大山教会 上垣 勝



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