学者たちの謙遜


                  2015年 イヴ・キャンドル・サーヴィス         右端クリックで拡大
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                                                   ひざまずく王たち (下)
                                                   マタイ2章1‐12節




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  以上振り返ってみると、イエス・キリストの誕生は実に密かです。ひっそり静まるベツレヘムの家畜小屋で、隣近所にも知られることなく生まれました。その誕生は実に控えめです。日本の女性は昔は控え目で、それが日本的な美徳とされました。今はどうでしょう。男性の方が控え目であったりしますか?

  それにしてもイエスの誕生は控え目です。何の騒ぎもなくひっそりとお生まれになったのです。

  神は、人類にキリストを押しつけられません。もし神が権力者や独裁者のようであるなら、私は信仰を持たなかったでしょう。神は、私たちが人格的に自由に応答することを待っておられるのです。この学者の姿からすれば、キリストは人間の方から探し出さなければ見出される事はないと言われるのは本当です。しかし、真理は光を放っています。だから人々は心に語りかけられる真理の光、真実の光に導かれて必ずややって来るのです。

  3人の学者たちが星に導かれて東の国からやって来たとあるのが、それを示しています。星は人間の頭上遥かに超えていて、沈黙を持って輝いています。一言も物言わずに輝いています。真理も物いいません。しかし人々を惹きつける程の輝きを持って私たちを導くのです。

  ですからキリスト教は真理、真実を大切にし、不真実を憎みます。憎んで、自分の不真実を砕いて下さいとさえ祈り求めるのです。

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  それにしても、神は救い主メシアを世に遣わされる時、この世の低い、素朴な人たちから両親を選ばれたのは何と賢明だったことでしょう。ナザレに出稼ぎに行っていたヨセフを選び、どこかの家で家政婦をしていた身分の低いマリアを選ばれたのです。金持ち、高官、法律家、医者、有名な芸術家、女優、その他、知名人や優れた人の中から両親を選ばれませんでした。

  また、メシアの誕生を先ずお知らせになったのは、有名人でなく、この町の近隣で野宿し、夜通し羊の番をしていた非常に単純な人たちです。

  彼らは、御子の誕生を知らされますが、何の準備もなく、突然全ての民に与えられる大きな喜びを知らされています。彼らがまっ先に拝みにやって来るのです。

  先ず羊飼いたちです。その後になって東方の学者たち。科学者か賢者かあるいは王たちであった、彼らが拝みにやって来るのです。才能のある者や地位ある者たちも神様に呼ばれましたが、彼らは長い道のりを通って苦労し、犠牲を払って来なければなりませんでした。

  彼らは宝の箱を開け、持ち来たった贈り物を差し出して、来訪を告げました。ただその時、彼らは先ず土間にひれ伏し、跪(ひざまず)いて拝まなければなりませんでした。彼らは黄金、乳香、没薬を献げましたが、それら高価なものですがほんの徴に過ぎません。彼らが献げたのは謙遜でした。謙遜こそ彼らがこのお方の所に持ち来たった真の宝物でした。主なるキリストの前での謙遜。これ以上に貴い献げ物はありません。それを献げたのです。

  その謙遜はただキリストに向かってのものです。人の目を気にした謙遜ではありません。単なるポーズでもありません。世渡り術として行なっているのではありません。

  学者たち、また「王たちは牧者の後から来て、ひざまずく。クリスマスとはそういうもの。それは世の終わりまで変わることがない。」(ジルベール・セブロン

  クリスマスの貴い香りの一つは、謙遜ではないでしょうか。神の子が低くなられたのです。神の子の謙遜。飼葉桶に寝かされる乳飲み子になられたのです。ここにクリスマスの最も偉大な香りが漂っています。

  そしてこのお方のゆえに、謙遜の香りが地上に生まれるのです。Christmassy scentクリスマの香り。それが、普段の私たちの生活の中に、そして教会の中に溢れるものでありたいと思います。


     (完)

                                    2015年12月24日 クリスマス・イヴ



                                    板橋大山教会 上垣 勝



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