キリストの誕生は密かだった


                      板橋大山教会のキャンドル・サーヴィス       右端クリックで拡大
                               ・


                                                   ひざまずく王たち (上)
                                                   マタイ2章1‐12節



                              (1)
  クリスマスおめでとうございます。20日にこの会堂に溢れる方々とクリスマス礼拝を致しましたが、それから4日でその余韻が胸に残っています。今夜はその続きで申し上げます。

  街にはクリスマスの彩(いろど)り、赤、緑、ゴールドなどのクリスマス・カラーが溢れています。近年は発光ダイオードの、温かさや血の気のないオレンジ色などの細かいランプもクリスマス・カラーの仲間になって無数に灯っています。でも何か冷ややかで、愛の冷めた感じになっています。

  そんな中、街ゆく人々はクリスマスの赤はキリストの苦難と血を意味する事、また緑は、永遠の真実、誠実、平和を意味する事などをご存知でしょうか。

  20日に申しましたChristmassy scent クリスマスの香りが大事だと思います。愛、平和、信頼というクリスマスの香りが社会に漂う事。人々の胸に愛、平和、信頼が生まれる事がクリスマスにふさわしい事です。

                              (2)
  今夜は明かりを消して、美しい光の中でキャンドル・サーヴィスをしていますが、これは一つの象徴、この世の暗さの中にまことの光が輝いている事の徴です。まことの光は決して闇の力に負けないことの徴です。闇とはこの世の闇、人々の闇ですが、自分自身の中に巣食ってもいる闇です。闇の力は強大ですが、決してまことの光であるキリストに打ち勝つことはないという事です。いかに闇の力が私たちを打ち倒そうとしても、苦しめても、キリストの恵みの光は闇の中で輝くのです。また私たちは闇の業に加わってはならないのです。

  先程講壇に灯されている火から皆さんに火をお分けしましたが、この大きな火はキリストの火です。キリストの救いの火が、皆さんの心に灯されるように子供が運んでくれました。今日は、キリストの希望の火を、持ち帰って頂きたいと思います。

                              (3)
  さて、「イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤベツレヘムでお生まれになった。そのとき」とありました。イエスがお生まれになって、何日かの出来事です。

  「占星術の学者たち」とありましたが、占星術というのは星占いですから、何かいかがわしい、まゆつば物を連想します。口語訳聖書では博士たちとなっていました。彼らは古代の天文学者、即ち科学者です。元はマゴスという言葉ですが、賢者と訳されたりもします。3人の王たちであったという説もあります。

  彼らがエルサレムに着いて、「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです」と尋ねたのです。すると、「 これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた。エルサレムの人々も皆、同様であった」とありました。

  不安とありますが、動揺しうろたえる事です。すっかりこころ掻き乱される事です。王がそうだったが、住民たちもそうだったのです。新しい王の誕生と聞いて、内乱が起こる、戦争が勃発すると動揺したのでしょう。現代なら、証券取引所が大混乱し、先行き不安で株価が暴落するでしょう。

  ヘロデ王は、各界の大御所を集めて御前会議を開きました。そして色々の資料を調べさせ、ベツレヘムで生まれるという結論に達したので、王は密かに学者たちを呼び寄せ、「見つかったら知らしてくれ。私も行って拝もう」と、見せかけの言葉で安心させたのです。

  「彼らが王の言葉を聞いて出掛けると、東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった」とあります。彼らがキリストに辿(たど)り着くために、神は王をも用いられたのです。この王はやがてユダヤ地方の2歳以下の男児を皆殺しせよと、幼児のホロコースト命令を出す悪名高い王ですが、神はそんな者も逆手を取って歴史の中でお用いになるのです。

  神は、悪をなす者をも一時お用いになり、最後は罰せられるという事は肝に銘じなければならない事です。

  そこで、彼らが「聞いて出掛けると」、東方で見た星が再び現れ、彼らを幼子へと導きました。彼らは、「その星を見て喜びにあふれた」とありました。思わず私たちも嬉しくなる、素晴らしい感動的な場面です。彼らの心臓の高鳴りが伝わって来る気がします。自ずと彼らの足は早まり、幼子のもとに惹きつけられるように駆け寄ったでしょう。

  家に入ると、「幼子は母マリアと共におられた。」家とあるのは貧しい家です。冷たい風が吹き抜ける家畜小屋です。土間は湿っていて、明かりもなく薄暗く陰気な場所です。

  ところが彼らは顔を輝かして、喜びをもって近づき、「ひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた」のです。学者たちの澄んだ、混じり気のない喜ぶ姿が手に取るように目に浮かびます。

  宝物は東の国から遥々持ち来たった高価な品物です。追いはぎに襲われる可能性もあるのに、大胆にも持って来たその勇気に驚きます。その勇気はメシアへの彼らの信頼と信仰に根ざすものだったでしょう。

                              (4)
  以上振り返ってみると、イエス・キリストの誕生は実に密かです。

     (つづく)

                                             2015年12月24日 クリスマス・イヴ



                                             板橋大山教会 上垣 勝



  ホームページは、 http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/

  教会への道順は http://www.geocities.jp/itabashioyama_ch/img/ItabashiOyamaChurchMap.gif



                               ・