闇のまま生涯が終わらぬように


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                                                    ひかりの証人 (中)
                                                    ヨハネ1章1-9節


                              (2)
  さて次の4節は、「言の内に命があった。命は人間を照らす光であった。光は暗闇の中で輝いている。暗闇は光を理解しなかった」と語ります。

  ヨハネ福音書は西暦90年代に書かれました。ローマ皇帝ドミチアヌスの大迫害の旋風が吹き荒れた時代です。世は暗黒時代を迎えていました。キリスト者は、秀吉や家康によるキリシタン弾圧時代のような厳しい試練に遭いました。息を潜めて暮らしたのは容易に想像できます。

  だがどんなに劣悪な時代においても、「光は闇の中で輝いている」と語るのです。創世記1章の初めで、神は「光あれ」と言われた。すると、「光があった」とあります。神こそ光の創造者です。いかにドミチアヌスの迫害が酷くても、「光は闇の中で輝いている」のです。いや、ドミチアヌス時代に限りません。ヨハネ福音書は、いかなる暗黒時代やいかなる地域であっても、ロゴスの光、キリストの光、神の愛の光は何者にも屈せず、届いていると語るのです。

  「言の内に命があった」のです。この命は神の命です。神の命は地上に命を造り出します。言の内に命の源があったのです。この命こそ人間を照らすまことの光であった。そして、まことの光は闇の中でも掻き消されることなく輝いているのです。繰り返しますが、いかに闇が深まり、強まろうと、この光は万民の中で輝いているのです。

  「闇は光を理解しない」かも知れません。理解しないでしょう。いや、光を拒絶するでしょう。闇は光を受け入れる余地を持たないのです。闇は自分で事足りると考えているからです。だから、外に向かって心を開かず、固く心を閉ざすのです。

  だがイエスは全ての人に心を開かれました。特にすべての重荷を負う人、苦労する人に心を開かれました。だが闇は心を閉ざして自己完結し、異質なものを暴力的に排除するのです。闇は光を恐れているからでしょうか。

  今の聖書は5節を、「暗闇は光を理解しなかった」と訳していますが、前の口語訳は、「闇は光に勝たなかった」と訳していました。理解しないとも、勝たない、支配しないとも訳せるのですが、私は前の訳が良かったと思います。

  ただ今の訳も併せて考えると、闇は光を恐れ、光を理解しようとせず、光を拒絶し、排除しようとします。だが、いかに闇が猛(たけ)り狂っても光に勝つことはないのです。光を抹殺出来ない。まことの光は神の命に源を発し、万物の源である方から出て来るものだからです。いかなる闇の力も、この光の源を征服したり、支配することは不可能だからです。

  「光は暗闇の中で輝いている。」キリストの光が闇の世に輝いているのです。何ものにも屈せず、征服されないだけでありません。次の9節は語ります。「その光は、まことの光で、世に来てすべての人を照らすのである。」キリストは世に来て、全人類を例外なく照らすのです。気前良いのです。悪や闇にまことの光が負ける事はありませんから、悠々と落ち着いて、善人の上にも悪人の上にも、全ての人にあまねく善意を持って照らすのです。

  「世に来て」とあります。世とはこの世です。先程申しましたドミチアヌスが暴虐を奮っているこの世です。神に敵対し、人々に希望や愛を差し出すどころか憎しみや敵意を露わにするこの世です。小さい者を虐げる世です。イエスを十字架に付けたのと同じ世です。それにも拘らず、「その光は、まことの光で、世に来てすべての人を照らすのである。」

  一人ひとりが、まことの神の下に帰って来る日を待っておられるからです。いかに成功し人々にもてはやされても、あなたの一生が闇の一生に、闇の生涯に終わらぬように、闇のままで世を去ることがないように、光となって生きる日を待っているよと、呼びかけておられるのです。キリストの忍耐は限りなく長く、その忍耐は全人類に対してやむことがないのであります。



           (つづく)

                                             2015年11月29日



                                             板橋大山教会 上垣 勝



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